スーパーフライ級世界王座連続防衛回数ランキング(記録関連) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/01/09

スーパーフライ級世界王座連続防衛回数ランキング(記録関連) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/01/09

 

さてさて、本日は現在軽量級で最も強豪がひしめく…
なんて言ってしまっていいだろうスーパーフライ級。

これまで積み上げた防衛記録を眺めてみると…
日本に馴染みのある強豪がずらり…

それではいってましょう。 

※WBA以前、NBA時代は除く。 

スーパーフライ級世界王座連続防衛回数トップ10

112-115ポンド(50.802-52.163kg)
かつてはジュニアバンタム級と呼ばれる
新設階級としてかつてはジュニア階級論争が産まれたものの、既に積み重なった歴史は約35年。
その中で様々な名王者が産まれた。

軽量級の名王者を量産しまくったこの階級。
日本人王者も複数ランクインしており、フライ級に引き続き日本に馴染みの深い階級となっている。

 

第1位 19度防衛 第4代WBA世界スーパーフライ級王者

カオサイ・ギャラクシー(タイ) 

フライ級に引き続き、この階級の最多防衛もタイの猛者。
松村 謙二(JA加古川)との2度の対戦で来日。
あわやのシーンを演出した松村、ファンの記憶に残る選手になったのは、
カオサイの強さがあってこそと感じます。

渡辺 二郎(大阪帝拳)の指名挑戦者として名が挙がるも、渡辺はタイの計量疑惑(タイ秤)を警戒して、
タイ開催の試合を拒否。
その結果、対戦交渉は決裂。

渡辺が事実上の世界王座統一戦に勝利し、WBCのベルトへ鞍替えしたのを期に、
エウセビオ・エスピナル(ドミニカ共和国)との王座決定戦で王座獲得。
その後、双子の兄であるカオコー・ギャラクシー(タイ)もWBA世界バンタム級王座を2度獲得。
次々と挑戦者を打倒し、連続防衛記録を積み上げる。

本当はもっと早く王座を返上して引退するつもりだったとはカオサイの弁。
しかし、カオコーを助手席に乗せて交通事故を起こし、カオコーの選手生命は断たれてしまう。

カオコーの分も…と戦い続け、積み上げた防衛記録は19。
タイで縁起がいいとされる数字を残し、王座を返上して引退した。
現在はタイで芸人のような活躍をしているそう。

日本で言う、具志堅 用高(協栄)ルートか…
何にせよ、元気でされているようで何より…。

8歳のころから喫煙を続けていたのは有名な逸話。
レフリーの死角で放たれる鋭利な肘は、ファンの記憶にも残る。
名王者なだけあって様々な逸話が残る。

 

第2位 13度防衛 第4代WBO世界スーパーフライ級王者

ジョニー・タピア(米) 

両親ともに殺され、壮絶な少年期を送る。
世界王座獲得前にはコカインの使用で3年間のサスペンドを送るも、それを乗り越え王座を獲得。
対戦相手のことを、常に「自分の母親を殺した相手」だと思って戦っていた…とはタピアの自伝より。

WBOの王座で11度の防衛を積み上げると、”アルバカーキ・ダービー”と冠された試合で、
同郷のIBF世界スーパーフライ級王者 ダニー・ロメロ(米)を破ってIBF王座を吸収。
この試合は名勝負としてかなり有名な試合…動画が見つかるようならお勧めです。

13度の防衛を達成すると、減量苦からバンタムへ階級を上げ、
ガーナの超特急ナナ・コナドゥ(ガーナ)を破って二階級制覇。

コナドゥから奪ったWBA世界バンタム級王座は初防衛戦でポーリー・アヤラ(米)を相手に陥落。
これはかなりのショックだったようで、薬物過剰摂取による自殺を図ったほど。
それでも、ホルヘ・エリセール・フリオ(コロンビア)からWBO世界バンタム級王座のベルトを奪い去り、
アヤラとのリマッチが期待される…

しかし、ウェイトが増えすぎてしまったことから、タピアは王座を返上し、
アヤラとはキャッチウェイトでのノンタイトルで再戦。
これにまたしても敗北すると、バンタムから2階級上の王者だった
マヌエル・メディナ(メキシコ)からIBF世界フェザー級王座を強奪。
この王座は命じられたメディナとの再戦を拒否したことで剥奪。

メディナを袖にして戦った相手は、当時軽量級最強と目された、マルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)
しかし、既にベテランの域に達していたタピアは全盛期の輝きを放てず、バレラに敗北。

その後、世界戦線に顔を出すことはなくなり、引退試合を開催。
その翌月にはまたも、薬物過剰摂取で昏倒する。

3年後に復帰し、IBCアメリカライト級王座を獲得するも、活躍はここまで。
最終戦の約1年後、自宅で遺体で発見されることとなる。
全身に無数の刺青を彫り、「狂気の人生」と呼ばれた男は、異名そのままの人生に幕を閉じた。

 

第3位 11度防衛 第16代WBO世界スーパーフライ級王者

オマール・ナルバエス(亜) 

フライ級で連続防衛数2位にランクインしているナルバエスが、スーパーフライ級でも3位にランク。
アマエリートとしてプロデビュー後、颯爽と当時フライ級王座のWBO世界フライ級の
歴代最高記録となる16度防衛を積み上げる。
その王座を返上すると、さらなる強敵を求めてスーパーフライ級へ。
テストマッチを挟んだあと、ホルヘ・アルセ(メキシコ)の王座返上に伴って
エベルト・ブリセノ(ニカラグア)との王座決定戦を制し2階級制覇。

3度防衛後は、王座を保持したまま3階級制覇に挑み…この試合ではノニト・ドネア(比)の前に屈している。
スーパーフライ級に舞い戻り、さらに防衛を続けたナルバエス。
その中には久高 寛之(仲里)をアルゼンチンに迎えて行った試合も…。

フライ級に引き続き、二桁防衛となる11度の防衛を積み上げたナルバエス。
生ける伝説となっていた最中、ライトフライ級王座を返上し、
階級を上げての2階級制覇を目指していた井上 尚弥(大橋)と対戦する。
直前まで現役世界王者だった選手とはいえ、二階級も下の相手…。
そんな相手に、世界中が驚く敗北を喫する。

何度も何度もマットを這うナルバエス。
「世界王者が咬ませ犬に見えた…」とはその試合の衝撃を物語る台詞。

試合後に「イノウエはドネアより強かった…」とその実力を絶賛したナルバエス。
ナルバエスはその功績を、井上 尚弥という若きビッグスターに引き渡した。
しかし…まだまだ、現役のナルバエス…今後復活があるのか否か…

不気味にその名は世界ランクに残り続けている。 

さて…4位以降はこんな感じ。

 

第4位 9度防衛 第11代WBC世界スーパーフライ級王者 ムン・ソンギル(韓)
第5位 8度防衛 第暫定代WBC世界スーパーフライ級王者 クリスチャン・ミハレス(メキシコ)
第5位 8度防衛 第16代WBC世界スーパーフライ級王者 徳山 昌守(金沢)
第7位 7度防衛 第12代WBO世界スーパーフライ級王者 フェルナンド・モンティエル(メキシコ)(2期目)
第8位 6度防衛 第3代WBA世界スーパーフライ級王者 渡辺 二郎(大阪帝拳)
第8位 6度防衛 第6代WBC世界スーパーフライ級王者 ヒルベルト・ローマン(メキシコ)
第8位 6度防衛 第13代WBC世界スーパーフライ級王者 川島 郭志(ヨネクラ)
第8位 6度防衛 第25代WBC世界スーパーフライ級王者 カルロス・クアドラス(メキシコ)

4位には9度防衛のムン・ソンギル(文 成吉)。

「韓国の石の拳」の異名を持ったハードパンチャー。
触れれば切れるマブタも特徴的で、”ムン・スグキレル”なんて揶揄されたことも。

アマチュアで世界選手権を制覇。
ロス五輪ではメダルまであと一歩のベスト8まで駆け上がったトップアマ。
プロ転向後はわずか7戦でカオコー・ギャラクシー(タイ)からWBA世界バンタム級王座を獲得。
この王座は3度目の防衛戦で、カオコーにリベンジを許し陥落。

1階級下げるとまたも負傷判定でナナ・コナドゥ(ガーナ)からWBC世界スーパーフライ級王座を奪取。
二階級制覇に達成するとともにこの王座を9度防衛した。
その間に倒した相手はヒルベルト・ローマン(メキシコ)イラリオ・サパタ(パナマ)
グレグ・リチャードソン(米)など…
コナドゥとの再戦を含めて強豪たちが並ぶ。
日本からはバンタム級時代に小林 智昭(角海老宝石)が、
スーパーフライ級時代に松村 謙二(JA加古川)が…
ソンギルの前に王座獲得を阻まれている。 

5位には2名がランクイン。

まずは、メキシコのダイヤモンド、クリスチャン・ミハレス(メキシコ)
暫定王座決定戦で川嶋 勝重(大橋)にダウンを奪われながらも競り勝ち、
WBC世界スーパーフライ級暫定王座を獲得。
1度防衛後に正規王者だった徳山 昌守(金沢)が王座を返上して引退。
正規王者となる。

その後は戦前不利が予想されたホルヘ・アルセに勝利、菊井 徹平(花形)を圧倒、
ホセ・ナバーロ(メキシコ)に競り勝つなど6度の防衛を重ねる。
7度目の防衛戦ではWBA王者だったアレクサンデル・ムニョス(ベネズエラ)との王座統一戦。
これに勝ってWBA王座を吸収。

しかし、WBC9度目の防衛戦となった、WBA/WBC/IBFの3団体王座統一戦で
ビック・ダルチニアン(豪)に失神KOで王座陥落。
以降、二階級制覇に4度挑むもいずれも叶わず、途中には出戻りでIBF世界スーパーフライ級王座を獲得。
しかしこれは1度防衛して返上、二階級制覇に再度アタックしている。

王座陥落から8年以上の歳月が流れ、現在ウェイトはフェザー級。
それでもWBCフェザー級シルバー王者として、未だに世界ランクに名を連ねる。
果たして…念願の二階級制覇が達成されるか否か…
まだまだ終わっていないと言いたくなる古豪だったりする。 

そして、同じく5位に日本のジムから世界を獲得した徳山 昌守(金沢)
在日朝鮮人として、北朝鮮国籍を有していた(現在は韓国籍に変更したらしい)

グリーンツダジムからデビューし、全日本新人王を獲得すると金沢ジムに移籍。
日本王座では輸入ボクサーとして数多の日本人ホープの壁となったフィリピン人、
スズキ カバト(新日本大阪)に2度の敗北。
しかし、元世界二階級制覇王者の井岡 弘樹(グリーンツダ)に勝って世界ランクを奪取。
その後、東洋太平洋を足掛かりに世界挑戦を叶える。

5度の防衛を重ねていたチョ・インジュ(韓)を判定で下してWBC世界スーパーフライ級王座を
獲得すると、日本期待の名護 明彦(白井・具志堅S)に初防衛。
2度目の防衛戦ではチョ・インジュとの再戦で敵地韓国に乗り込む。

北朝鮮国籍の徳山と、韓国のインジュ。
試合会場では統一旗が振られる異様な光景の中、5RKOで前王者を沈める。
朝鮮半島統一のメッセージを投げかけた徳山。
当時のボクシングマガジンの記事にスポーツの枠を超える異様な興奮を覚えた。

その後防衛を重ねる中には、超絶の技巧派、ジェリー・ペニャロサ(比)や、
最強の世界ランカーと言われたディミトリー・キリロフ(ロシア)など。
ペニャロサの強さは、徳山を持ってして「もう二度と戦いたくない」と言わしめたほど。

9度目の防衛戦で、1度下している川嶋 勝重(大橋)にまさかの1RKOで王座を奪われる。
しかし、ラバーマッチで王座を奪回、1度防衛すると、
当時ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)を下してWBC世界バンタム級王座を獲得していた
長谷川 穂積(真正)に挑戦状を届ける。
この試合が叶わず、世界王座を返上して引退した。

日本のジム所属の世界王者が存命のまま、世界王座を返上して引退したのはこの時が初めてとなる。 

7位にはフェルナンド・モンティエル(メキシコ)
WBO世界フライ級王座を3度防衛後、この階級で二階級制覇を達成。
2度目の防衛戦でマーク・ジョンソン(米)に敗北するも、一年半かけて王座を奪回。
2度防衛後、王座を保持したまま三階級制覇を賭けて、WBO世界バンタム級王座に挑むも
この試合では強豪、ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)に惜敗。

スーパーフライ級に戻って防衛戦を積み重ね、7度防衛後にWBO世界スーパーフライ級王座を返上。
バンタム級王座に本格参戦し、WBO世界バンタム級王座を獲得。
念願の三階級制覇を達すると、当時バンタム級最強と目されていた長谷川 穂積(真正)を破って
WBC世界バンタム級王座のベルトも吸収。

しかし、その後は新星のノニト・ドネア(比)に2Rでリングに沈められて陥落。
5年近くの時を経て、IBF世界フェザー級王座に挑戦するも叶わず、再起戦でも敗北している。

昨年、長谷川 穂積(真正)が奇跡とも思える復活を見せ、世界王座を獲得したことから
二人の再戦を期待する声もあがりましたが…
衝撃的な長谷川の引退表明で叶わず…果たしてモンティエルの返り咲きはあるのか…。 

8位には6名。
ここに日本人二人がランクイン。

渡辺 二郎(大阪帝拳)はWBA世界スーパーフライ級王座を6度防衛後、
WBC世界スーパーフライ級王座に鞍替え。
当時、WBCとWBAでは試合のラウンド数が違い(12Rと15R)、王座統一戦の壁は高く…
WBAのベルトはWBCを獲得すると同時に剥奪となりました。
その後、渡辺はWBCの王座を4度防衛。
WBC王座を獲得した試合を含めて、11度防衛に匹敵する数字を残しています。

さらに、その渡辺から王座を奪ったヒルベルト・ローマン(メキシコ)も同数の6度防衛。
WBA王座を返上して挑んできたサントス・ラシアル(亜)に一度は勝利するものの、
7度目の防衛戦でのラシアルとの再戦で陥落。
その後、返り咲き5度の防衛を重ねるものの…ムン・ソンギル(韓)に屈する。
通算ではこちらも11度防衛。

“アンタッチャブル”川島 郭志(ヨネクラ)もこの位置。
日本で歴代No.1とも言われる防御技術を駆使し、6度の防衛に成功。
最後は極度の視力低下を発症し、ジェリー・ペニャロサ(比)の前に2-1の判定で王座を失った。

そして、日本の帝拳プロモーションと契約しているカルロス・クアドラス(メキシコ)
技巧と手数で6度防衛を達成。
7度目の防衛戦で現代のPFP候補とも言われるローマン・ゴンサレス(ベネズエラ)を受けて立つ。
ロマゴンが圧倒する…なんて声も多かった中、軽量級最強のロマゴンを大いに苦しめたクアドラス。
ロマゴンに4階級制覇を許してしまったものの、まだまだ商品価値は失っておらず
今後も世界王座に絡んでくると思われる。

やはりまだ、アジアと南米が中心となる構成。
タイの名王者の強さもありありと見て取れます。

欧州では第3代WBO世界スーパーフライ級王者のジョニー・ブレダル(デンマーク)の2度が最高。
オセアニアではオーストラリアのビック・ダルチニアン(豪)がWBAとIBFをそれぞれ2度。
アフリカでは第20代IBF世界スーパーフライ級王者のシンピウェ・ノンクアイ(南ア)と
第26代IBF世界スーパーフライ級王者のゾラニ・テテ(南ア)がともに1度防衛。

世界王者の数としても、欧州からは2名、アフリカからは3名しか産まれていません。

以上がトップ10。
さて、今後ここに食い込んでくるのは…

昨年陥落が相次いだこの階級。
現役世界王者では井上 尚弥の4度が最高。
今年中にはトップ10入りを決めてしまいそうですが…

ビッグマッチを求めるほど交渉は難航しますので、もしかするとロマゴンが階級を上げてきたことで
年間の試合数が減少するかも…なんて勘ぐりをしちゃったりしています。
また、試合のたびに痛めている拳も不安要素。

飛びぬけた逸材であっても、連続防衛はなかなか難しい。
また、ウェイトも徐々に苦しくなっているようです。

連続防衛には価値がある…と僕は思います。
が、複数階級制覇にも、ビッグマッチにも価値があることは事実。
日本が産んだ破格の才能がどうなっていくか…。 

一つ余談ですが…もしかすると現在アマで活躍している堤くん。
同時期の井上を超えているかもしれません。
もしかすると、井上は何年か先、堤くんにバトンを譲ることになるやも…。

その時には、高く高くそびえる壁であってもらいたい…なんて感じてしまいます。

「井上以上なんて…何を馬鹿なことを言ってんだ」
なんて思われそうですが…

期待してもいいでしょう?
簡単に選手に期待をかけれてしまうのは…ニワカの特権ですから。 

なんてところでスーパーフライ級はおしまい。
次回は…バンタム級。

現在、日本人最多防衛数を誇る”神の左”がいったい何位に入ってくるか…。
こうご期待!

 

※記録は2017/1/9時点

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