2025/07/20 -愛知・刈谷あいおいホール- 第4試合~セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【バンタム級6回戦】
小川 昂輝(駿河男児) vs 中村 列亜(畑中)
ジャブが得意な中村の左に刺し負けずに小川が立て続けにジャブをヒットさせると
中村のジャブの引きに合わせて小川が強烈に右を叩きつける。
そのままコーナーに詰めた小川、距離を潰してボディ一閃。
膝をついて悶絶する中村、なんとかテンカウント中に立ち上がる者の、
レフリーは続行を認めず、そのままテンカウントが数え上げられた。
KOタイムは1R 50秒
中村の方が頭一つ分大きく、距離に差のある展開。
ジャバー中村の左を寄せ付けず、一気に追い込み、距離を潰しての即決。
前回の戦いでは中日本新人王決勝でドローの優勢点で中村が制したカード。
小川がこれ以上ない勝ち方でリベンジを叶えたように見えた。
試合開始直後いきなり距離を潰してボディで仕留めた展開からは
小川が奇襲を仕掛けたようにも見えるが、
ジャブで刺し負けなかった点、中村のジャブの引きに右を突き刺した点からは
たった50秒の中で、小川が中村をしっかりと凌駕したと言っていいように思えた。
相手のストロングポイントを潰したうえでのこの結果だ。
これでこの日、バンタム級6回戦で戦った4選手が全員A級リーチ状態となった。
大混戦の中日本バンタム級B級戦線。
中村にもリベンジのチャンスはまだある。
「いいとこ」を見せれなかった敗戦。
やられたままで終わってほしくないと思っている。
小川 昂輝 7戦5勝(3KO)2分
中村 列亜 8戦5勝(2KO)2敗1分
【56Kg契約6回戦】
山本 愛翔(カシミ) vs 木附 大己(LUSH緑)
山本の踏み込み際に力強く木附が左を撃ち込んだのがオープニングヒット。
タイミングを測り合う展開の中で、踏み込んで上下に打ち込む山本の右ストレートが
見栄え良くヒット。
接触の少ない立ち上がり、山本がその右ストレートではっきりとラウンドをとる。
2R、お互いの拳の届かないところから出入りを繰り返す山本。
強烈にヒットさせては安全圏へ退避し、木附に攻めどころを与えない。
見合う展開の中、木附のヒットはほとんどない。
3R、居合斬りのような展開の中、山本が駆け引きを制していく。
右のカウンターがさく裂すると、木附がフリーズ。
攻め込む山本に対して、手を返すたびにカウンターを撃たれる木附。
なんとかクリンチで逃れ、耐えきった木附。
4R、距離が詰まったように見えた矢先、木附が飛び上がるようにして
撃ち込んだ右で山本が膝を着く。
ダウンを確信する木附だったが、絡み合うような膝の付き方だったこともあり、裁定はスリップ。
しかし、ダメージは明らか。
攻め込む木附に今度はなんとか山本がサバイブしてラウンド終了。
5R、足を使って強烈に木附をえぐっていく山本。
後ろへサイドへと飛び回りながら、強烈に拳を浴びせていく。
窮地を脱して山本が完全にペースを握ったか…。
6R、このまま逃げ切るかと思えた場面。
木附を翻弄していた山本がファイトに出るが、至近距離でのファイトは木附が勝る。
木附の強打に大ダメージを浴びた山本はクリンチへ逃れる。
これまでの展開を考えればポイントアウトが安全な展開。
しかし、効かされてクリンチに逃れることはあれど、山本はファイトを渇望するように前に出る。
一瞬でひっくりかえるリスクを負いながらも前へ。
その姿には、この試合の勝利だけを求めるのではなく、
その先にある戦いを見越しているようにも見える。
大歓声に包まれる中、木附の拳を耐えきった山本。
試合は終了のゴングを迎えた。
マイジャッジ 58-56 山本
公式ジャッジ
58-56×3
3-0 山本
「強さは巧さを凌駕する」
ボクシングの格言の一つ。
巧さなら山本、強さなら木附…ならば木附が。
僕の戦前予想は当たらなかった。
山本は巧いだけの選手ではなかった。
木附と言う強打者と撃ち合える強さ、ダウン寸前まで追い込める強さがあった。
前半、圧倒的に制した山本だったが、4Rには起死回生の木附の一撃。
これで試合が分からなくなったようにも思う。
他の選手であれば、「奇跡の一撃」くらいに珍しく感じるだろうが、
木附であれば、そういったことも当たり前に起こしてしまえるように思える。
はっきり、ボクシングで完敗した木附。
ランキング戦線に突入していくにはまだまだ磨いていく必要があるというのが今日の結果。
ただし、「自分よりボクシングが強い相手」に対し、
何かを起こしえる可能性を証明した試合でもあると感じた。
いずれまたやって来る勝負どころの試合。
どんなに不利予想が立とうと、木附であれば覆す可能性を信じていい。
ファンの夢を背負える拳を証明したという意味では、この負けは無駄じゃない。
山本 愛翔 8戦7勝(1KO)1敗
木附 大己 9戦6勝(4KO)2敗2分
【49.5kg契約6回戦】
赤塚 翔(名古屋大橋) vs 東 健史(ARITOMI)
忙しく足を動かしながらフェイントを重ねる赤塚に
東はゆったりと構えてワンツーを突き刺していく。
細かく手を出すのは赤塚だが、隙間にワンツー、下からのコンビネーションを撃ち込んでいく。
2R、頭を振って潜ろうとする赤塚をジャブで遠ざける東。
詰めた赤塚が下から上へと叩く場面も出始める。
入って来る赤塚を東も回転よくとらえ、攻防は一進一退の展開。
3R、入ろうとする赤塚の入る前をしっかり叩く東。
攻めさせる時間を極力減らして、赤塚の手がほとんど出ない状態を創り上げる。
ラウンド終了間際には東が踏み込んで撃ち合いとなるが、ここは互角か。
4R、入ろうとする赤塚を遠ざけるようにワンツーを出していた東。
右ストレートがヒットすると、手ごたえがあったか一気に攻め込む。
ラウンド終盤に入ると、赤塚が踏み込んで右をヒットさせる場面が増えるものの
前半の印象的な場面が覆るほどではないか。
5R、東が前に出始める。
撃ち合う場面でも回転が東の方が上か…
東が優位に進めている中、赤塚が慣れてきそうなタイミングで東の方から変える…。
経験値の豊富さを感じる展開。
ただ、撃ち合いの中では赤塚の拳もスリリングなタイミングでヒット。
可能性はまだまだある。
6R、今度は足を使いながらボディを叩く東。
戦い方を変幻自在に変えながら、赤塚に慣れる時間を与えない。
完全なアウトボクシングへと舵を切り、時折踏み込んではボディ、
入ってくればカウンター…東が赤塚を翻弄して試合終了のゴング。
マイジャッジ 60-54
60-54×2
59-55
相手はA級戦線で戦いながらも勝ち星の遠かった東。
完封された赤塚にとって、A級の凄みを叩きつけられたような試合だったように思う。
ただ、東がどれだけの完敗を喫してきたか…。
東西飛び回り、強い相手と拳を交えてきたからこそ、強い東がいる。
負けながら蓄積した経験値を試合運びに反映し、主導権を一切渡さなかった。
主催側の選手、A級昇格まであと1勝、あてがわれた大幅負け越し選手。
東は明らかにBサイドの選手だったはずだが、拳で覆した。
思えば東の勝ち星はたった7勝だが、そのほとんどは不利予想を覆した星。
赤塚もまた、今後登っていくのであれば、そういった星を重ねる必要がある。
大ベテラン東が、これから登ろうとする若者に筋金を入れた。
そんな試合だったように思えた。
赤塚 翔 11戦5勝(1KO)5敗1分
東 健史 22戦7勝(1KO)15敗
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