アマチュア最強 ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)① ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/01/03
アマチュア最強ボクサー ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
何年かに一度、こういった触れ込みのボクサーが登場します。
よくある売り出し文句というか、プロモーション用のキャッチコピーというか…
ただしロマチェンコの場合…アマチュア戦績:396勝1敗
これほどまでの数字を残した選手は過去誰一人としていません。
過大広告でも、大袈裟な表現でも無く、アマチュア最強と言われて「そうですね」と言わざる得ないボクサー。
それがワシル・ロマチェンコ。
ロンドン五輪の金メダリストの中でいち早く世界王座を手に入れ、大暴れしています。
そもそも、アマチュアボクシングとプロボクシング、どっちが強いの?…となると、
やってみなきゃ分かりません!…がほんとのところ。
実際オリンピックで金メダル獲っても世界に届かないボクサーっているし、
かと言えばこのロマチェンコのように、デビューした瞬間から世界を獲れるレベルっていう選手もいる。
何が違うのかと言えばそれはスタイル。
同じボクシングでもプロとアマチュアではラウンド数や採点の仕方が違うので、
戦略や戦い方が全く異なります。
だから、基本的なことは同じでも、別競技に近いと考えた方がいいのかもしれません。
極端に言えば、ムエタイとボクシング…みたいな。
アマエリートとムエタイ王者…プロ転向後のルートは凄くよく似てます。
違うのは…アマチュアとプロのリングは並行して上がること長らくできなかった。
一回プロに行ったらもうアマチュアのリングには戻れませんよ…と。
ムエタイとボクシングは、両方を並行する選手が何人もいる。
それくらいでしょうか…日本では規定で不可になってるけど…。
その辺はカオサイギャラクシーの回で説明してますので…そちらを参照ください。
昔ね、アトランタ、シドニーでオリンピックに出た辻本 和正ってアマチュアの選手がいて、
全日本選手権10連覇っていう、それこそ当時の日本最強アマチュアボクサーなんですけどね。
それでもオリンピックではメダルに絡めなかった選手。
言ってしまえば、村田 諒太(帝拳)よりは格下なはずなんです。
それが、現役世界王者だった徳山 昌守(金沢)、辰吉 丈一郎(大阪帝拳)なんかをスパーリングで
ボッコボコにしちゃうんですね。
挙句の果てには矢尾板 貞雄(中村)と並んで日本ボクシング史上屈指のテクニシャンとされる
“アンタッチャブル”川島 郭志(ヨネクラ)まで餌食に…。
ラウンド数の違い等、多少プロにアジャストする時間はいるでしょうが、
彼ならデビュー即世界戦でも通用しかねないと思うんです。
逆にプロでは米国で日本人対決を演じた河野 公平(ワタナベ)と亀田 興毅(亀田)。
彼らがアマチュアでやってたら面白いだろうな…なんて思ったりします。
河野はアマチュア経験はありませんが、亀田は15歳で全日本実業団ボクシング選手権大会で優勝。
同級生がインターハイだ、国体少年の部だ…ってやってるところで、
社会人の大会で優勝しちゃってるんです。
しかも16歳では全日本実業団選手権を制覇。
ただし、この2大会は国内の最有力選手が集まる大会ではないので…そこは注意が必要ですが。
二人の世界戦は、日本では亀田の減点やなんかがフォーカスされちゃってますが、
客数は少なかったものの、現地の観客は「どれだけ手数が出るんだ!!」と驚きを持って見ていたようで…。
元々軽量級の人気がない米国で、あれだけ盛り上がるのは珍しい!なんて現地取材された方が言ってました。
あの手数と馬力が4Rに濃縮されたとすると、もしかしたらアマチュアのトップでも通用するんじゃ…
なんて思ってしまいます。
アマチュアボクシングってラウンド数が少ない分、しょっぱなからスロットル全開なんですね。
ヘッドギアつけて大きなグローブで…力入れずに触ったらポイントで…
みたいなイメージ持ってる人も多いと思うんですが
実際トップレベルの試合はそんなマイナスイメージが吹っ飛ぶほど。
世界王者は1階級に何人もいますが、アマチュアで金メダルを獲得できるのは1人だけ。
プロは17階級ありますが、アマチュアは13階級。
プロボクシングを見て「強い奴とやれ!」なんて野次ってる方は是非アマチュアボクシングを見てほしい。
こんな話を長々として何が言いたいかっていうと、プロとアマ…
どちらが優れているか?という問いに答えはないと。
ボクシングにはプロとアマの2本の確立されたジャンルがあって、
どちらも崇高な頂点があり、魅力満載だということ。
世界王者のベルトと、金メダル…どちらも凄いことで、なかなか比較は難しい。
甲子園優勝と花園優勝、どっちが凄い?って聞かれても、
いやいや野球とラグビーだし…ってなっちゃいますよね。
競技人口やら視聴率やらワケのわかんない外側のデータ持ち出して比較することはできても、
ちょっと冷静に考えたら、どっちも凄いよってことになる。
亀田のように最終的にプロの世界王者になる為に、アマチュアボクシングを始める選手もいれば、
金メダルにこだわって、アマチュアで競技人生を終える選手もいる。
キューバのテオフィロ・ステベンソンは、ロサンゼルス五輪の政治的ボイコットさえなければ
五輪4連覇が確実視されてた選手。
当時、なんとか亡命させてモハメド・アリ(米)と戦わせようと100万ドル単位のファイトマネーを準備して
様々な人間がプロ転向を画策しますが「キューバ国民を裏切れない」と、金メダルを目指し続けました。
他にも同じくキューバのマリオ・キンデランだとか…。
アマチュアの伝説的選手はたくさんいます。
アマチュアだからってナメることなかれ。
アマはアマでとんでもない連中がゴロゴロいるんです。
さて、そろそろ長くなってきたのでロマチェンコの話に行きましょう。
ウクライナの最高傑作と謳われたロマチェンコ。
父親がボクシングのトレーナーをしていたこともあり、自然とボクシングをするようになったと言います。
ただし、当人はアイスホッケーが好きだったようで…。
父親がトレーナーじゃなかったらアイスホッケー選手になりたかったと言っています。
アマチュアの最初の試合から連戦連勝のロマチェンコ。
ボクシングにおいてオリンピックと並ぶ世界大会でもある
世界ボクシング選手権に初めて出場したのは19歳の時。
あれよあれよと勝ち進み、負け知らずのまま決勝に進みます。
対するはロシアのアルバート・セリモフ。
アマチュアボクシングでは世界のトップ戦線で活躍する超一流選手。
この試合でロマチェンコは、約400戦に及ぶアマチュアボクシングでの戦歴、唯一の敗北を喫します。
それでもまだ19歳。
力が付き始めるのはこれから。
翌年の北京五輪ではセリモフに雪辱して金メダルを獲得。
20歳でアマチュアの頂点に立ちます。
2009年、2011年と世界選手権を連覇し、ロンドン五輪でも金メダルを獲得。
世界大会4連覇を達成します。
その後、プロ転向しボブ・アラムのトップランク社と契約。
史上二人目のデビュー戦での世界挑戦をブチ上げます。
しかし…世界ランキングに入ってないと世界戦できませんよ…ということで。
手っ取り早く世界ランクを手に入れましょう…と準備されたのが地域王座のタイトルマッチ。
地域王座って便利なもので、モノによっては獲るとほぼ確実に世界ランクがもらえるものがあるんですね。
そのうちの一つWBOインターナショナル王座。
ちなみに王者はWBO世界6位のホセ・ラミレス(メキシコ)。
別にタイトルかかってなくても、ランカー倒せば世界ランクは手に入るのに…と、まぁその辺は置いといて。
いきなり地域王者とのデビュー戦。
ウクライナの最高傑作がプロのリング最初の3分で見せたのは強烈なボディブロー。
世界ランカー…リングに這います。
なんとか立ち上がったものの、2R、3Rと圧倒され、4Rにはまたもボディブロー。
悶絶するラミレスにレフリーは試合をストップ。
肩書にふさわしいデビュー戦を飾ります。
…と言う訳で難なく世界ランクを手に入れたロマチェンコ。
当初の予定通り、次戦で世界王者に挑みます。
相手は第19代WBO世界フェザー級王者のオルランド・サリド(メキシコ)。
ちなみにこの時点での世界タイトル獲得の最短記録は、セーンサック・ムアンスリン(タイ)の3戦。
ムエタイのスーパースターが、アマチュアボクシングの世界選手権で金メダルを獲り、プロボクシングに転向。
一気に世界タイトルを獲得した伝説的王者です。
(ガッツ 石松(ヨネクラ)を殴り倒した直後にソープランドを巡るなどの
ハチャメチャさが伝説となった部分もありますが…それはまた追々…。)
そんなところで今日は一旦区切り!
明後日はロマチェンコの世界戦から!
【カテゴリ別】
2016年選手紹介一覧に戻る
選手紹介一覧に戻る
カテゴリ別記事一覧に戻る
【日付別】
【記事一覧】2016年1月に戻る
【記事一覧】2015年~2016年に戻る
【記事一覧】に戻る
各選手の戦績はこちら。
ボクシング選手名鑑
コメント