忍び寄る陰り… ラリー・ホームズ(米)⑭ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/06/13

忍び寄る陰り… ラリー・ホームズ(米)⑭ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/06/13
 
 

 
 

本日はラリー・ホームズ(米)のIBF世界ヘビー級2度目の防衛戦から。
通算18度目の世界ヘビー級王座防衛戦ですね。

前回の内容は、WBCと指名試合を巡ってモメにモメ、WBC世界ヘビー級王座を放棄。
マービス・フレイジャー(米)とのノンタイトルを1試合挟み、
IBF世界ヘビー級王座の防衛に切り替え、初防衛に成功した形。
↑…あんなに長々書いたのに3行で終わってしまった。
 

さて、IBF2度目の防衛戦。
相手は、14戦全勝のUSBA全米ヘビー級王者、デビッド・ベイ(米)。
前戦では世界挑戦直後のグレッグ・ページ(米)との激戦を制し、この世界挑戦を射止めました。
 

1R、オープニングヒットはなんとベイの左フック。
クロスアームに構えるベイ。
これまで戦ったクロスアームの選手で思い浮かぶのがケン・ノートン(米)とティム・ウィザースプーン(米)
いずれもホームズを苦しめた選手。
この試合も、ベイの左を扱いづらそうにするホームズ。
 

2R、この日最初のホームズのビッグヒットは右ストレートのカウンター。
ラウンド中盤にもこのパンチをヒットさせ、ベイはクリンチに逃れます。
ホームズが圧倒的に支配していくかと思われた展開ですが、
ベイはその直後に強烈な左フックをヒットさせる。
ぐらつくホームズ…その数秒後にも同じパンチをヒットさせる…。
 

3R、足を使いはじめたホームズ。
しかし、ホームズはベイの右フックが見きれない。
強烈なフックをいくつも被弾してしまうホームズ。

ホームズをアリのコピーとまで呼ばせたフットワークや
左ストレートに近い強烈なジャブは消え失せ、まるで待ちのカウンターパンチャーのようなホームズ。
このとき36歳、どうしても衰えを感じてしまう展開。
 

4R、距離を詰めて放たれるベイの左フックに手を焼くホームズ。
そこに続くパンチも合わせてもらってしまう。
ベイの右がヒットしたタイミングでリングに尻持ちをつくシーンも…。
ここは幸運なスリップの判定も、これを皮切りにホームズの膝が揺れるシーンが何度も訪れる。
しかしラウンド終盤、強烈なストレートでダメージを与える。
 

5R、ジャブの本数を増やしてリズムを作り直すホームズ。
先ほどのラウンドで撃ち疲れたか、手数の減るベイ。
展開がホームズに傾き始める…。
 

6R、これまでいいようにもらっていた左フックに右フックを合わせ、相撃ちに持っていくホームズ。
タイミングが見えてきたか、ベイの右フックを綺麗に外して右フックを撃ち込むシーンも。
47戦目となったこの試合、経験の差で主導権を握っていく。
 

7R、疲弊し始めたベイ。
手の出ないベイにホームズが左を突き刺していく。
しかし強烈な右フックをホームズに浴びせるシーンも…
まだまだスリリングな展開。
 

8R、休もうとしきりに飛び込んではクリンチを繰り返すベイ。
ホームズはその飛び込み際に右フックを合わせ、追撃の左フック。
ベイがリングに崩れ落ちます。

カウント8で立ち上がるものの足元の定まらないベイ。
強打を浴び続けながら、ホームズにしがみついてダウンを拒否するベイ。
しかし強引に振りほどいて強打を撃ち込むホームズにたまらず膝をついて2度目のダウン。
ここはゴングに救われます。
 

9R、まだ足元の定まらないベイ。
距離を取り、クリンチに逃れ、なんとか回復を得ようと抵抗。
しかし手数が減ってしまったベイにホームズは強打をいくつもヒット。
それでも、なんとかこのラウンドを耐えきったベイ。
 

10R、先に撃って出たのはベイの方。
左右のフックがホームズを捉えます。
ここから盛り返せば15R制のIBF世界タイトルマッチ、まだ逆転の目はあります。
その後も、ベイのフックに対応できないホームズを何度かベイのフックが捉える。

しかし、カウンターで入った右のショートがベイの動きを止めてしまう。
棒立ちになったベイにホームズが一気に襲いかかり、滅多撃ちに。
次々に強打を放り込まれながら、ベイがコーナーに追い込まれたところで試合がストップ。

綻びを感じさせながらも、10RTKOでホームズが王座を防衛します。
 
 

初防衛戦、2度目の防衛戦と無名のホープとの試合が続いたホームズ。
次の試合もやはり、相手は当時無名だったホープ。
この時点16戦全勝だったカール・ウィリアムズ(米)
 
 

1R開始直後から左を刺していくホームズ。
ウィリアムズは身長もリーチもホームズより一回り上。
遠い顔面へは無理に刺さず、ボディへの左を重ね、
相手の顔面が下がったところへ右ストレートを撃ち込む。
老獪さを漂わせる攻めで、主導権を握ります。

26歳と若いウィリアムズはスピードではホームズと互角に張り合い、
体格ではホームズを上回るものの、駆け引きではホームズが一枚上。
 

2R、ジャブの刺し合いでホームズに勝ったウィリアムズ。
しかし頭を下げたところに強烈な右をもらう展開は変わらず…ホームズが展開を握るかと思いきや…
ラウンド中盤以降、長いリーチを生かした射程の長い左右のフックが何度もホームズを捉える。
ホームズがぐらつくシーンも2度ほど…。
ウィリアムズがこのラウンドをはっきりと獲ります。
 

3R、射程の長いウィリアムズのジャブがホームズを捉えていく。
これまでホームズが挑戦者を制してきた展開をそのまま再現するようなウィリアムズ。
しかしこのラウンドでウィリアムズが左まぶたをカット。
この傷がのちの流れを左右します。
 

4R、相変わらず射程の長さでホームズをコントロールするウィリアムズですが…。
ラウンド終盤に入ると、撃ち終わりにホームズが強打をヒットさせる。
すると傷が開いたか、ウィリアムズが出血を気にし始める。
その隙を逃さず、ホームズはコンビネーションをいくつもヒットさせラウンドが終了。
 

5R、ウィリアムズはフックでホームズを捉え、ロープ際に追い込みいくつも強打をヒットさせる。
しかしホームズもやり返し、ウィリアムズの半数ほどのヒットでウィリアムズの動きを止める。
撃たれ強さではホームズに軍配があがるか…。
同じようなシーンが2度繰り返され、ヒット数でウィリアムズが優勢に見えるラウンド。
 

6R、ウィリアムズの射程は相変わらず有利に作用。
ホームズの届かない場所からジャブのヒットを重ねる。
しかし、ウィリアムズが大きなフックのヒットから距離を詰めると…ホームズも強烈な反撃を見せて盛り返す。
 

7R、これまで自分が勝ってきたのと同じような展開で主導権を握られるホームズ。
ここでホームズに流れを獲り戻させたのが、飛び込みザマの右フック。
これをヒットさせて連打で攻める…過去にダウンするなど、ホームズが苦戦した試合では
必ずこの類のパンチがホームズのボクシングを崩しています。

立場を入れ替えて、自分が苦手としたパンチで攻める…
このあたりにもベテランの蓄積を垣間見せます。
 

8R、ロングレンジでジャブを撃たれながら、強烈な右で反撃を食らわせる。
展開は一進一退に…ウィリアムズが右フックを大きく空振りしたところに
ホームズの右フックがヒットし、ウィリアムズが一回転するシーンも。
 

9R、前半優位に進めたウィリアムズですが、徐々にダメージが蓄積していたか
このラウンド後半、ホームズの強打をまとめてもらってしまいグロッギー寸前に…。
特にコツコツと積み重ねられたボディへのダメージは深刻そうで、
ウィリアムズから距離を奪い去ってしまいます。
 

10R、ウィリアムズはダメージを、ホームズは撃ち疲れを抱え、静かな展開に。
終盤には強烈なボディアッパーを入れたウィリアムズに対し、
ホームズは強烈なワンツーを返す。
 

ラウンドマストで互角にも思える両者の戦い。
勝負は後半へと流れ込みます。
 

11R、ワンツーから強打を入れたホームズに
左右フックの連打を叩きつけるウィリアムズ。
わずか10秒に満たないこの攻防以外にはほとんど手が出ない二人。
お互いに疲労から、見合う時間が長くなっていきます。
 

12R、お互い手数少なく見合う中、先に手を出すのはホームズ。
これがヒット数に大きな差を生み、このラウンドはホームズのラウンド。
ウィリアムズはカットの傷が開き、目に入ってしまうようで、視界を気にする素振りを見せます。
 

13R、しばらく休んで回復したか、ウィリアムズは足を使ってホームズを捌き始めます。
いつもと全く逆の展開、ホームズはウィリアムズのジャブに試合を支配されてしまう。
 

14R、このラウンドの序盤もウィリアムズの左に翻弄されるホームズ。
しかし後半、飛び込んでの右フックをヒットさせると、
一気に試合の流れはホームズへ…手が出なくなったウィリアムズに次々に強打をヒット。
 

15R、一気に攻めて出たホームズに、膝を揺らされるウィリアムズ。
窮地を逃れるとポイントでは勝っていると判断したか、距離をとって時間を稼ぐ。
最後には強烈なアッパーを入れたところで試合終了のゴング。
 
 

判定が読み上げられる…
(143-142、146-139、146-139)

勝者は…IBF世界ヘビー級チャンピオン、ラリー・ホームズ。
大歓声と大ブーイングが入り混じる…それほどまでに拮抗した試合。
僕のマイジャッジは143-142のホームズ。
 

新しい世代の強さと、ホームズの衰えが入り混じるような試合。

もし…カットがなければ、はっきりとした判定で新王者になっていた可能性もあったウィリアムズ。
この後、もう1度世界挑戦のチャンスに恵まれるものの…
マイク・タイソン(米)の前に1Rで敗れ去り、世界王者として名を残すことはできませんでした。

ちなみに80年代、NBCがプライムタイムでボクシングを放送したのはこの試合が最後。
視聴率は18.5%ながら、収益性の高いPPV方式が主流となり、
その後謎の大物マネージャー、アル・ヘイモンが出現するまで30年…
プライムタイムの放送がなかったわけです。

そう考えると、ヘイモン…なかなかやるな!って感じです。
 

それはさておき、ギリギリの防衛で王座を守ったホームズ。
戦績は48戦48勝。

次戦、ロッキー・マルシアノ(米)の記録へ挑んでいきます。
 
 

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