メイウェザーはメイウェザー?(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/05/05
“ポストメイウェザー”
フロイド・メイウェザーJr(米)引退後からこの言葉がいたるところに踊っている。
エロール・スペンス(米)、フェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)…
上がる選手の名前は多数。
果たして、時代は本当にメイウェザーの代わりを求めているのだろうか?
また、ポストマニー・パッキアオ(比)に関しても同じことが言える。
ペイパービュー方式での売上で選手たちのファイトマネーは上昇。
しかし…実はファンの数は減っている。
アメリカ人選手のランカーが減っていることから見ても、
最も金になるはずのアメリカで、ボクシングを志す人間が減っているのはあきらか。
もし、ドナルド・トランプが米大統領になった場合…。
彼は「不法移民を追い出す」、「メキシコとの国境を強化する」と発言している。
米南部のボクシング市場を、一番の底辺で支えているのはヒスパニックだ。
彼らがみなメキシコからの不法移民ではないにせよ、一定数は
国境を命からがら乗り越えてきた民がそこに混じっている。
ボクシング市場に与える影響は小さくない。
もしかするとメイウェザーのようなファイトマネーを手に入れる選手は今後皆無に…
そしてより、ボクシングの人気は下がっていってしまうかもしれない。
アル・ヘイモンがボクシングを地上波に持ち込んだ。
数々の投資家を巻き込み、枠を丸々買い取ってのことである。
PPVとは違う新たな方式だ。
望みをかけるなら、ここなのかもしれない。
わざわざ購入しなければならないPPV方式は、マニアを引きつけはすれど、一般層へのアピールは薄い。
日本でもWOWOWに登場する“世界の”大スターより地上波で中継される
“日本の”大スターの方が知名度が高い。
しかし、そこに望みがあるとは言え、今の高騰してしまったファイトマネーが一旦下がり始めれば…
もうメイウェザーのようなファイトマネーを手にする選手は、よっぽどのことがない限り
物理的に不可能になってしまうのでは?というマニアもいる。
僕自身もそう思う。
メイウェザーのファイトマネーは…PPV方式が産んだバブルだった。
ファイトマネーが下がる…というより、適正価格に落ち着く…と言った方が正しそう。
かたや、パッキアオ。
階級の壁をぶち壊し、世界8階級制覇を達成。
パッキアオを模倣し、複数階級制覇を狙ったノニト・ドネア(比)。
しかし、彼は5階級目のフェザーで跳ね返され、6階級目へ挑むことなくスーパーバンタムへと戻った。
僕の記憶にはフェリックス・トリニダード(プエルトリコ)が最強の称号を狙って、ミドル級に挑み…
ナチュラルミドルの強者達に歯が立たなかった姿が頭を過る。
パッキアオの達成した記録も、メイウェザーのファイトマネーと同じく
アンタッチャブルなものであるのは容易に想像がつく。
メイウェザーのファイトマネー、パッキアオの複数階級…。
彼ら二人はボクサーたちの目指すところとして、新たな価値観をもたらした。
彼らを目指すボクサーはこれから何人も現れるだろうし、ファンもまた、期待するのだと思う。
しかし…僕はポスト○○という言葉にどことなく違和感を感じる。
彼らは新たな価値観を持ち込んだからこそ、英雄になったのではないだろうか?
果たして彼らに倣った選手が出てきたとして、その選手が正当に評価されるだろうか?
ただのメイウェザーのコピー…パッキアオの方が凄かった…。
そんな風に言われてしまうのではないかと感じてしまう。
そこで思い浮かぶのが…ラリー・ホームズ(米)である。
世界ヘビー級タイトルマッチで20連勝を飾った…歴史に名を残すにふさわしい選手である。
しかし、彼はモハメド・アリ(米)のコピーと呼ばれ、人気面ではイマイチだった。
そして彼がヘビー級の王座を去って30年。
マニア以外で彼の存在を知っている人はどれくらいいるだろう…。
100年後、150年後、彼の知名度はいったいどれほどだろうか。
ホームズはアリとの直接対決にも勝利している…。
それでも…である。
ホームズが残した教訓を思えばこそ…、ポスト○○という言葉への疑念はさらに深まっていく…。
マイク・タイソン(米)が残した実績は…さして大したものではないが、
彼が見せたスタイルは史上稀に見る確信的なものだった。
タイソンはきっとホームズ以上に語り継がれていく存在である。
時代はいつも、新しい物好きだったりする。
…というわけで。
次回からは、ポストアリ…ホームズをピックアップ。
乞うご期待!
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