福原の大偉業はどこまで知られているのか(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/06/29

福原の大偉業はどこまで知られているのか(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/06/29
 
 

 

福原 辰弥(本田フィットネス)の大偉業はどこまで知られているのだろうか?

2月末に世界を獲って以降、もっともっと盛り上がると思っていたのだが…。
福原の偉業はもっともっと発信されていいハズなのに…。
 

WBO暫定王座であること。
選手数の少ないミニマム級であること…。

そんなことで福原の偉業を腐すような言葉を見たりもした。
 

なんてつまらない奴らなんだろう。
 

メディアの情報発信力は強いが、少し深入りし始めると、
誰しもがインターネットで”ググる”時代。

マニアたちの発信も、ファンの情報源としてはかなりの力を持っている。
 

僕を含めた”馬の骨”が発信する情報の信憑性には注意が必要だし、
自分の意見や視点、角度を「確定事実」として語ってしまうのも素人ファンの怖いところ。

読む側はその辺りを充分に留意する必要があると思う。
こんな風に読者に警鐘を鳴らさなければならないほど、
いまやネットでの情報発信には力がある。
 

地方ボクシングを見ているマニアは知っているはずだ。
地方のボクサーがランク一つ勝ちとるのにどれだけ苦労するのか。

後楽園を見ているマニアは知っているはずだ。
地方から呼ばれた選手が後楽園で勝つ確率の低さを。
 

金が足りない、選手が足りない…
地方でボクシングをすることは難題が多くある。
ランカーが集中する関東圏。

そこに呼ばれる選手は、この選手になら勝てるだろうとの目測で呼ばれた選手が多い。
新人王などのおいしい実績がない強い相手は、
リスクの高い無名選手として、チャンスに恵まれづらい。
 

「強い奴と戦え」
ファンの言葉は繰り返し叫ばれるが、本当に強い奴をファンは知っているのか?
名前や実績で強い弱いを判断され、現地で試合を見るファンしか知らない強豪もいる。

無名の強者に勝ったところで評価されず…
無名の強者に負けてしまった瞬間に「弱い」と認定される…。
相手選手が強かったことに気付くのはごく少数だったりすることもある。
 

4回戦でデビュー以来、勝ち星なし…でも、強い。
そんな選手、いくらでもいる。

豊島 竜樹(伊豆)なんていい例だ。
これから巻き返してくれると信じているが、彼の強さが知れ渡るまでは…
戦績だけで判断されることも出てきてしまうだろう。
 

ちょっと話が脱線したが、地方と中央(東京)には高い壁がある。
アマエリートたちはこぞって東京の有力ジムに集まってしまう。
事実、チャンピオンになる確率は関東圏が圧倒的に高い。

ボクシングでは地方と言うと東京以外を指す。
大阪まではいいとして、名古屋や福岡でも格差が出る。

東京、大阪、名古屋…このあたり以外からは世界王者はほとんど出ていない。
それが…である。

地方都市でもないド地方の熊本から世界王者が出たのである。
 

井上 拓真(大橋)のデビュー戦、いきなり日本ランカー戦ということで
相手になったのが当時日本ランカーだった福原。
 

この試合では負けてしまうものの…
その後、タイ遠征を重ねて実力を磨くと…
大平 剛(花形)が日本王座を返上した為に設けられた日本王座決定戦に勝利。

凄いのはここからで、初防衛戦ではWBO1位にまで駆け上がっていた榮 拓海(折尾)の挑戦を受ける。
 

彗星のごとく現れたスーパーホープが日本王座を踏み台に…って構図。
これを空気読まずにベテラン福原が勝利。

そして、2度目の防衛戦は高山 勝成(仲里)に善戦した小野 心(ワタナベ)との対戦。
これは残念ながら負傷引分での防衛…

そして3戦目、東農大で主将を務めたアマエリートの華井 玄樹(岐阜ヨコゼキ)との対戦。
東農大って言ったら大学1部の名門。

アマボクは社会人になると活躍の場が限られることもあって
大学一部リーグと言えばある意味、国内アマチュア最高峰とも言える。

そこで主将を務めた華井は、岐阜からデビューするものの…。
キャリア序盤は名前が大きすぎて対戦相手がうまく用意できず
外国人ボクサーを呼んでの戦いが積み重なった…なんていう伝説の持ち主。
 

そんな華井さえも討ち破って、WBO2位にまでランクを上昇。
高山の怪我によって設けられたWBO世界暫定王座決定戦に辿り着く。

人材も金も、東京に比べて大きく格差が出るのが地方ボクシング。
かつて福岡から越本 隆志(FUKUOKA)が世界を獲ったときも驚きは大きなものだったが…
地方都市にもあたらないド地方熊本から…
 

そのハンデを覆すように、きらびやかなホープを食い散らかして、世界挑戦に辿り着いた。
そして、与えられた千載一遇のチャンスをものにした。
 
 

地方ボクシングを見ている人間から言わせてもらえれば、日本ボクシング史に残る超大快挙。
日本王者でありながら、不利予想が立つ試合を、いくつも勝ち上がって辿り着いた。

相手のモイセス・カジェロス(メキシコ)が前戦で破ったマリオ・ロドリゲス(メキシコ)は元IBF王者。

当時、ミニマム級最強と言われたヌコシナティ・ジョイ(南ア)からベルトを奪った選手であり、
JBCに引退届を出してIBFに挑んできた高山にベルトを奪われた選手。
(当時、IBFはJBCに世界王座と認定されておらず、IBFに挑戦するにはJBCから離れる他なかった)
 

まっとうな二人が争ったWBO暫定のベルト。
本当はこの後に行われるはずだった高山vs福原を見たかったが…
高山が五輪を目指してプロボクシングを引退したことにより、福原は正規王者に認定。
そして…次に待っているのは指名試合。

面白すぎやしないか…。
 

福原の前に地方から王座を獲得した平仲 明信(沖縄)
対戦交渉でさえ自分で行った…彼はちょっと特別とも思えるが…
生半可じゃないことは、平仲の逸話を知れば理解できると思う。
 

ファンはボクシングが盛り上がってほしいと心底願っているはずである。
福原が達成した偉業をファンが褒め称えなくてどうする。

地方のファンが、彼が見せた、”地方から世界を獲るカッコよさ”をしっかりと発信してやらなきゃ…。
選手はみんな中央に行ってしまう。
わざわざハンデのある地方で戦う意味がなくなってしまう。

地元を愛するボクサー、地元から離れられない事情を持つボクサーだけが地方で戦うのか…
「地方から獲る」というカッコよさを理由に、地方で戦うボクサーがいてもいいのではないか。
そんな美学はファンの発信から形成されるはずである。
 
 

「いまや世界王者になることより、誰とどんな試合をしたかが重要」
…なんて言いながら、しっかり”暫定”の文字や肩書にこだわってしまうなんて。
あんまりじゃないか。
 
 

福原が獲得したWBO暫定王座…これには大きな価値がある。
地方から世界を獲れることを証明した。
選手だけじゃなく、ジム関係者の励みにもなるはずだと思う。

「世界戦やるのにいくらかかると思う?
 常識的に考えて世界戦なんかやらせてやれない。
 それでもどうしてもと言うんなら、可能性を、夢を見せてくれ」

この言葉に地方ボクシングの魅力がたっぷり詰まっている。
ボクシングも人生も、世界中のすべてが不平等。
そんなすべてを、拳で切り開いていくボクサーに、僕らは胸を熱くする。
 

福原に、号泣した2月。
僕はこんな男が見たくてボクシングを見ている。
 
 

【カテゴリ別】
2017年コラム一覧に戻る

コラム一覧に戻る

カテゴリ別記事一覧に戻る
 
 

【日付別】
【記事一覧】2017年6月に戻る

【記事一覧】2017年に戻る

【記事一覧】に戻る
 
 

 
 

各選手の戦績はこちら。
ボクシング選手名鑑
 
 

 
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました