昔のボクシング vs 現代のボクシング(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/03/06

昔のボクシング vs 現代のボクシング(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/03/06
 
 

かつて、日本には世界王者が存在しない期間があった。
日本ボクシングの暗黒時代と言われ、数多くのホープたちが世界の壁に跳ね返され続けた。
 

現在、数多くの世界王者を輩出している日本。
…理由は世界のボクシングのレベルが下がったから、世界王者の価値が下がったから
なんて言われることもある。
 

そう言ってしまう気持ちもわかるし、そう言える根拠もある。
 

かつて1つしかなかった王座のベルトは4つに分裂。
直近まではWBAの王座乱立もあった。

WBAの王座乱立は、方針転換により終息に向かいつつあるも、
世界王座が4つに分裂していることには変わりなく、希少価値としては1/4。
さらに、ヘビー級王座しかなかった時代から比べれば、17つの階級に分裂した今。
68もの王座が存在する今とは比較にならないほど、王座の価値は高かったのだろう。
 
 

数式で簡単に弾き出せる希少価値では確かに下がったのは間違いない。
しかし…である。
 

たとえば10年前と比較したとき…

世界的にはメジャー4団体。
しかし日本で認められているのは2団体。

IBF王座に、階級最強の選手がいた場合…
日本人には挑戦するチャンスさえなかった。

そんな状況の中、高山 勝成(仲里)は引退届まで提出し、
海外まで飛び出してIBF王座を敵地から奪った。
 

王座の価値低下は過去から階級が増えるたび、新たな団体が台頭するたび
マニアックなファンの中で叫ばれてきたが、これが一般層に波及したタイミングは…
日本がメジャー4団体を認可したタイミングからである。

これ…とってもおかしい。
世界的にはもうその話は済んだはず。
誰も認めていなかったはずのIBFやWBOをスーパースターがメジャー団体に押し上げた。
それはオスカー・デラホーヤ(米)ナジーム・ハメド(英)の栄光とともに…。

そのドラマの中で認められていったメジャー4団体を、今更蒸し返して…感がたまらない。
 

メジャー4団体認可は、日本のボクシングが世界中の強豪と戦うロマンを手に入れた瞬間である。
これまでは、スーパースターがIBFやWBOにいれば、そんな選手と日本人が
拳を交えるなんて想像さえもできなかった。

それができるようになった…瞬間なのだ。
4年前から、日本のボクシングは濃厚な魅力を増したとさえ思える。
 

団体の分裂からの王座低下を叫ぶなら、それは時期が違うと思ってしまう。
また、IBOという新興団体…これが世界的に第5の団体として認められ始めている。
「4つになった…4つになった…」と嘆くのなら、この5つ目にしっかりフォーカスすべきではないかと思う。

僕自身は…5つ目ウェルカム!
 
 

IBOの王者一覧を見てみると、アフリカや東南アジア、欧州のマイナー国など
ボクシングの土壌が希薄、もしくは経済的不利を抱える地域の選手が多い。

WBAが王座を乱立させるとき、唱えたお題目が「経済的格差のある地域への救済措置」。
それが本当になされるなら、僕は賛成だった。

ラスベガスで戦う人気選手、派手な人気選手ばかりがチャンスに恵まれる…
なぜならそういった選手と戦ったほうが金になるから…。
その反面、金のない選手はランキングに取り残される。

結局WBA暫定は、いにしえから続く南米優遇に見えてしまったものだから、
がっかりしてしまったのだけれども…。

ビッグファイト思考が強過ぎるボクシングに、リアリティを追求するなら
一番強い男がチャンピオンという原則を貫く為に、
IBOのような王座の存在も認めていいと思うのである。
 
 

話を元に戻す。

かつてボクシングは身体能力の高いアメリカ黒人選手たちがこぞって選択するスポーツだった。
今や、アメリカ4大スポーツの中心を黒人選手たちが占める。
才能はそちらへ流出しており、アメリカ人ボクサーの数も減っている。

しかし、世界の広さは圧倒的に広がっている。
旧共産圏からアマのトップ選手たちが多数プロの世界にやってくる。
かつてはプロになるルートがなかった国から強豪がやってきているのである。

ボクシングの中心は下火傾向かもしれないが、
枠は大きく広がり、分散した…と言えてしまうかもしれない。
イギリスの熱狂、そしてロシアの台等…
ビッグプロモーターは英、独、露…様々な地域に表れている。

ドン・キングとボブ・アラムの二人だけ…みたいな時代ではなくなった。
 
 

そしてそしてさらに、この比較を行うとき、いつも見落とされがちな重要なハンデ。
昔と現代の比較はいつも、過去のうん十年と現代という一瞬の比較になってしまう。

そんなもん、10年も20年も…ましてや100年もさかのぼれば、希有な才能が登場するのは当然。
それを現在の1瞬と比較するって…。
 

ただし、かつて奇跡のような時期があったのは事実。
黄金のミドルと言われた80年代。
長い長い歴史上、初めてヘビー級が脇役になった時代。

歴史的実力者たちが、まるで運命かのように同じ時代に産まれ落ちた。
しかし、それは当然ではなく、奇跡である。
 
 

僕はボクサーの平均値は間違いなく上がっていると思う。
とくに日本人ボクサーの実力は右肩上がりだと…。
 

では何故、過去のボクシングが凄い!と固執する人々がいるのか。
行きすぎた懐古主義もあるだろうし、ボクシングの熱気が落ちてしまった現代
現在の熱気を失ったボクシングが、過去の熱気の中見たボクシングと比較して乏しく見えることもあると思う。
 

しかしそのもっとも根幹って…
ボクシング愛なのではないかと思う。
青春期に見たボクサーがやっぱり一番なんだよ…。

だから、僕も冷静ぶってワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)は最強かもしれないなんて言うけど…
心の中では、フェリックス・トリニダード(プエルトリコ)が一番だよ!…なんて思ってしまう。
 

この話題はいつも論争を呼ぶ。
しかし…その答えは永久に出ない。
ボクサー同士の時代が違うって…そういうこと。
 

そして、心の底からロマチェンコ!と叫ぶファンを見ていつも思う。
「この人は現在進行形で青春期なんだろうな…」と。

そんなファンのボクシング愛には嫉妬心を抱いてしまうほど。
 

僕はボクシングを愛していると自分では思っている。
でも…世の中、上には上がいることも知っている。
未だにモハメド・アリ(米)を追いかけているファンとの論争も…

お互い酒が入って殴り合いになりかけるような熱のこもった舌戦も…。
なんでもあり。

理屈をここまでこねくり回してきて、最終的な着地点は…

「んなこたぁどうだっていい」
 

現在も過去も、ボクサーが命と人生を賭けて殴り合うリングの上。
それが面白いことには何ら変わりはない。

だから…
 

「今のボクシングが面白くない」という言葉には断固反論するけれども…

誰が一番強いのか…その論戦から学ぶことも多く、
そんなやりとりは大好きだったりする。

まぁ…いつも負けるんだけどね。
ほんとに知ってる人はほんっとに知ってるから…。
 
 

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