蛇 ドニー・ニエテス(比)① ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/01/09
フィリピン、セブ島の郊外、タランバン地区にある洋服メーカー。
外見からはボクシングとは何の関係もなさそうなこの企業。
中に入っていくと、突然大きなスペースにサンドバッグやリング…
様々な設備が並ぶまさにボクシングジムが現れます。
このボクシングジムこそアジアNo.1とも言われる超名門ジム、フィリピンのALAジム。
かつてIBF世界王座がJBCに公認されていない時代、その世界王座に挑戦する為に海外に飛び出した
高山 勝成(仲里)が汗を流したことでも知られるこのジム。
今回の主役はこのボクシングジムでアシスタントとして働く、裏方の少年。
彼の仕事はこのジムでペットとして飼われている巨大なニシキヘビと、その住処を綺麗に清掃すること。
彼自身も何度か噛まれて傷を負うほどの凶暴なヘビ。
この仕事をできるのはこのジムで唯一彼しかいなかった。
ある時その巨大ヘビが11個の卵を産みます。
唯一1個だけが孵化し、産まれたヘビを愛情を持って育てた少年。
いつしかジムの選手からは彼自身が「AHAS(蛇)」と呼ばれるようになっていました。
ある日、毎日巨大蛇の相手をしている少年の度胸を試したくなった誰かが、気まぐれか…
それとも実力を知ってか…リングに上げます。
そこで彼は類稀なる才能を見せつけます。
アジアNo.1の名門ジムの面々が呆然とするほどに…。
翌日から彼はアシスタントではなく選手として、このジムに所属することとなりました。
彼の名は、ドニー・ニエテス(比)
WBO世界ライトフライ級王者、現在のライトフライ級で最強と目される選手です。
彼のデビューは20歳の時。
幼少からボクシングに触れて来た選手も多いフィリピン。
ボクサーとしてのスタートは少し遅い方です。
しかし、そこは名門ALAジム。
デビュー戦から6回戦を組み、順調に勝ち星を重ねます。
1年のうちに8戦7勝(4KO)1分を記録。
この中で特筆すべきは7戦目のジュリウス・アルコス(比)への勝利。
この頃のアルコスはキャリア初期ではありますが、のちに第14代WBC世界ミニマム級王者となる
ション・チャオツォン(中)から勝利を奪って
WBCアジア(ABCO)コンチネンタルライトフライ級のベルトを巻く選手です。
2-1の際どい判定にはなりましたが、アルコスにきっちり勝利し、連勝を継続します。
そして9戦目…デビュー1年と1ヶ月で挑むのはPBF比国ライトフライ級王座決定戦。
相手は特に目立った実績のないジョセフ・ビラシズ(比)。
この試合、ビラシズを1Rで3度、リングに転がし1RTKO勝利で国内王座を獲得。
この王座はすぐに返上し、即座に次のステップへと歩みを進めます。
1勝を挟んでインドネシアへ遠征を決行。2ヶ月で現地の強敵相手に3試合をこなします。
インドネシアミニマム級王者のマルティ・ポリー(インドネシア)を7RTKOで退け、
第3代IBF世界ミニマム級王者のニコ・トーマス(インドネシア)に黒星をつけたこともある
アブリン・マッタ(インドネシア)を4RTKOで攻略。
3戦目では3階級上で、のちに2度の世界挑戦を果たすアンキー・アンコッタ(インドネシア)…
アンコッタ、なんとこの試合で6ポンドの計量オーバー…実に2階級差近くの試合となります。
そんなハンデ戦を1-2のサスペンデッドまで持ち込みますが判定で敗北。
一度帰国し再起を図りますが、まだ国内タイトルへの挑戦さえないカルロ・ベセーレズ(比)によもやの引分。
順調に進めていたボクサーズロードを若干遠回りさせることとなってしまいます。
その後は国内選手を相手に安全運転のキャリアを2年ほど積み、1度の負傷引分を挟んで7連勝。
ここでようやくチャンスが訪れます。
相手は元インドネシア国内王者のヘリ・アモル(インドネシア)。
井岡 一翔(井岡)からダウンを奪った選手として覚えているファンも多いんじゃないでしょうか?
空位になっていたWBOアジア太平洋ミニマム級の王座決定戦です。
この試合で経験豊富なベテランを2RでKOし世界ランクを奪取。
初防衛戦では、のちに八重樫 東(大橋)や井岡 一翔と拳を交える、
トンタイレック・ポーウォラシン(タイ)を相手に2RKO勝利。
2度目の防衛戦では20戦全勝のレコードを持つサエングペッチ・ソー・サカルファン(タイ)に3-0の判定勝利。
順調にランキングを上げると、WBO世界ミニマム級王座を11度防衛していた
イバン・カルデロン(プエルトリコ)が2階級制覇を目指して王座を返上。
ニエテスに王座決定戦のチャンスが舞い込みます。
ALAジムが興行権を落札し、地元フィリピンで開催されたWBO世界ミニマム級王座決定戦。
相手はのちにWBA世界ミニマム級王者となり八重樫 東に敗れることになるポンサワン・ポープラムック(タイ)。
4Rには綺麗な右ストレートでダウンを奪い、10Rにはポンサワンにローブローの減点が課されるなど、
明白な3-0の判定で勝利。
後半はスタミナ切れを見せながらも、見事に栄冠を勝ち取ります。
しかしこの後、セッティングされた世界タイトルマッチが3度に渡る中止。
1年以内の防衛戦を行わない場合、WBO世界王座は剥奪という決まり。
不運からベルトをリスクにさらしますが、世界王座獲得から11カ月後にようやく初防衛戦が決まります。
ニカラグアのホープ、エディ・カストロ(ニカラグア)を迎えての試合。
序盤からプレッシャーをかけて圧倒し、2RKOで初防衛に成功します。
2度目の防衛戦にはエリック・ラミレス(メキシコ)を迎えます。
直近2試合でWBC中央アメリカミニマム王座とWBOラテンアメリカライトフライ級王座を獲得した
昇り調子の選手。
当時のランキングでは4位にランクインしていました。
この相手を1R、5R、9R、12Rと合計4度のダウンを奪う判定勝ち。
3度目の防衛戦には暫定王者のマヌエル・バルガス(メキシコ)と対戦。
ここで…あれ?となった方、いますよね?
ニエテスが王者になってから2年。
別に怪我をしたわけでもなくピンピンしてるのに、暫定王者がいる…?
昨今暫定王座乱立が叫ばれているのはWBA…。
まさか…WBOも??
これ…ちょっと調べてみましょう。
色々大変そうなのでここで切ります。
次回はこのWBO世界ミニマム級世界王座統一戦から。
…というわけで、今日はここまで!
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