悪魔の片鱗 ヒルベルト・ローマン(メキシコ)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2015/12/09

悪魔の片鱗 ヒルベルト・ローマン(メキシコ)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2015/12/09
 
 
 

さて、本日はヒルベルト・ローマン(メキシコ)の第2回。
 

2つのチャレンジマッチをいずれも反則負け。しかも再起戦でまさかの敗北。
…遠ざかる世界を生き残りマッチに勝ってつなぎ止めた。

そんなところですね。
 

その後4ヶ月のうちに5つの星を積み重ね、渡辺 二郎(大阪帝拳)の持つ
WBC世界スーパーフライ級王座へ挑戦します。

この頃、WBAのベルトは19度防衛後にベルトを返上して引退することになる最強王者、
カオサイ・ギャラクシー(タイ)が保持。
かたやWBCのベルトはWBA王者からWBC王者へと変わった実質的な2団体統一王者の渡辺が保持。

渡辺はWBAの防衛途中でWBA王座を返上し、WBC王者のパヤオ・プーンタラット(タイ)に勝利。
WBC王者に移ったような形になっているので、防衛数こそ4度ですが、世界戦12連勝中。

どちらのベルトもとんでもない王者が支配していたんですね。

さて、渡辺との世界戦で初来日したローマン。
日本のファンの前で、その実力を露わとします。
 

当時WBAを圧倒的な強さで支配したカオサイを強打や駆け引き、
時には肘まで駆使して相手をなぎ倒す“鬼”とするなら、
渡辺からベルトを奪いWBCを支配したヒルベルト・ローマンはまさに“悪魔”。

後々明らかにしていきますが、セコンドには稀代の戦略家、イグナシオ・ベリスタイン(メキシコ)を置き、
いつでも倒せるパンチを持っておきながら徹底的にリスクを排除し、狡猾に勝ち星を拾う。

渡辺戦でその名を日本のファンに浸透させたローマンですが、
まだまだこの時点で彼の本領に気付いたファンは少なかったと思われます。
 
 

さて、渡辺戦…詳しく見ていきましょう。

ハイクオリティの駆け引き合戦になったこの試合…
顔面への明確なパンチがない1R、2R。
3Rに初めて渡辺のパンチが顔面へクリティカルヒット…がその直後に2発返すローマン。
明確なラウンドになりかけますが、完全に流れを渡すことはありません。

ここまではどっちにポイントが転んだか微妙ですが、
ラウンドマストシステムで無ければ、ここで点差は開いていないように感じます。
 

ちなみにこの前半の駆け引き…
2Rにローマンの頭が当たります、ローブローか際どいパンチもありました。
3Rにはまた頭が当たります。
 

僕みたいな素人にはわざとなのかどうなのかは判別がつかないんですが…
4R開始早々、渡辺はボディアッパーを入れながら、ローマンの顎を肩でカチ上げるんですね。
やり返すわけです。

僕ら外から見てる人間より、向き合っている二人の方が圧倒的に情報量が多い。
ローマンと向き合ってる渡辺、故意か偶然かを最も判断しやすい人間は、故意と判断したようです。

3R終了後、ベリスタインからローマンに「体制を低くしろ…」という指示。
暗に「レフリーはバッティングに気付いてない」ことを示唆したのでは…と。

4R、レフリーからローマンへローブローの注意がありますが、頭に関しては特に何もありません。
これをきっかけにローマンが本領を発揮し始めます。

直後に、渡辺の右腕をホールドしながら右アッパーを連打。
また、ボディを撃つ時はセットで頭ごと飛び込むように撃ち込みます。
そして、時折放たれるローブロー。

これね…ローブローは囮だと思うんです。
レフリーに頭が見えてないと、ローブローばかり見てると。
じゃあ、下に注意を向けさせときましょう…と。

このラウンドからめっきり手数の減る渡辺。
ジャブを出すと抱えられてアッパーをもらってしまいます。

この流れが7Rまで続き、ここの3-7Rで3P~4P、ローマンに持っていかれている形。

7Rを終了した時点で「ずるいボクシングをしろ」と渡辺陣営から指示が出ます。
渡辺陣営も、レフリー反則取らないぞ…と。

8Rはローマンに疲れが見えて互角の展開になりますが、
9R、右のビッグヒットでローマンが流れを取り戻します。

10R、ベリスタインからローマンに「倒せるようなら倒せ」と指示が飛びます。
ここから危険な距離でのスリリングなパンチの交換が最終ラウンドのゴングまで。
ジャブやボディの数を優先するならではローマン、クリティカルヒット、ダメージを優先するなら渡辺。
どちらにポイントが降られてもおかしくない最終3R。

この試合は、ラウンドマストシステムが浸透し始めて来たころ。
ジャッジ3名のうち2名はこの試合をラウンドマストで採点しています。
転換期だったことが影響したか、ポイント計算を見誤った渡辺陣営は、最終ラウンドを流すように指示。
 

しかし、明確にローマンにポイントが振られた4R~7Rが決め手となり、
2P差から4P差の判定でローマンが世界王座を獲得します。
 
 

ダーディーではありますが、レフリーが反則を取らないと早い段階で判断したことで、
クリンチ際の攻防を支配したローマン。
ベリスタインしてやったりの一戦です。
 
 

渡辺にとっては最終ラウンド攻めてKOを狙っていれば…と後悔が残る一戦。
これが渡辺の最後の試合となってしまいます。
 
 

ここからローマン、合計防衛数11度。彼の凄さを世界が目の当たりにしていきます。
 

そんなところはまた次回。
僕が何故彼を悪魔と呼ぶか…そのあたりをはっきりさせていきます。
 
 

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