戦うのび太くん! 嶋田 光高(緑) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/09/15
新人王トーナメントの優勝予想は難しい。
全日本となれば尚更…当てずっぽうで正解しそうな中日本だけでも毎年予想を覆される。
これまでの戦いぶりと、トーナメントの組み合わせや、選手同士の噛み合わせから予想するのだが…
必ず、全く前情報のない選手が何人か登場する。
新人王戦でデビューする選手たち…毎年、このうちの何人かがトーナメントをかき回す。
今年…その図式で中日本新人王を荒らしたのが嶋田 光高(緑)だった。
ボクシングを始める前には極真空手、ムエタイ、キックボクシングを経験。
こう書くと最初から強そうに見えるが、ボクシングを始めた当初はからっきしの選手だったと聞く。
今年の中日本フェザー級新人王トーナメント。
僕の優勝予想は中野 元気(トコナメ)
決勝は中野と佐々木 政城(天熊丸木)のリマッチになると予想していた。
6名がエントリーしたフェザー級。
僕が決勝での対戦を予想した二人はシードとして準決勝からの登場。
春先に準々決勝の2試合が行われた。
そのうちの一試合。
4月30の名古屋国際会議場。
リングに上がったのはデビュー戦の二人。
嶋田 光高とアシス・ジェイロイ(浜松堀内)。
銀縁メガネのいかにも弱そうな嶋田と、褐色のジェイロイ。
試合前の立ち姿は対照的だった。
ゴングが鳴るとジャブを突きながらワンツーを飛ばすジェイロイ。
ガンガン詰めていく嶋田…おとなしそうな少年に見える嶋田だったが…。
スタイルはバリバリのファイター。
ジェイロイを圧力でコーナーに押し込むと、右ストレートを炸裂させて試合を終わらせる。
1R 2分5秒で鮮烈な勝利を飾った。
そこから約1か月半後。
中日本フェザー級新人王準決勝として、嶋田 光高と佐々木 政城がぶつかる。
2015年にデビューし、2016年の中日本フェザー級新人王戦では決勝まで進出。
準決勝では今年のトーナメントの対抗ブロックにいる中野 元気をはっきりと破っている。
決勝では全日本新人王決定戦に出場することとなる今田 雄大(蟹江)に4RTKOで涙を飲むが
そこまで3連勝…勝ち抜いていける力を印象付けている。
翌年2017年の中日本新人王トーナメント。
初戦で、結果的に全日本新人王決定戦に出場することとなる高瀬 衆斗(蟹江)と対戦。
引分ながら、優勢点でトーナメント敗退となった。
間違いなく力はある佐々木。
デビュー2戦目の嶋田が簡単に勝てる相手ではないように思えた。
ゴングが鳴ると猛烈にフックを振るって突撃していった嶋田。
佐々木はいきなり巻き込まれるような形で嶋田の右フックを浴びて効かされる。
そのまま一気に嶋田が飲み込み、わずか56秒でのKO勝利。
おとなしそうな少年がリングに上がると
恐怖などどこかに置いてきたかのような突撃で相手をねじ伏せる。
見た目とファイトスタイルのギャップが凄まじい。
…そしてまさか佐々木にこの展開をやってのけるなんて。
唖然とするしかなかった。
この試合の直後、対抗ブロックの準決勝が行われ、
中野 元気が曲者佐藤 康平(薬師寺)を2RTKOで破って勝ち上がる。
ここまで高いポテンシャルを垣間見せながら、なかなかその力を開花させれずにいた中野。
僕は大化け期待!と事あるごとに言ってきたが…
ここに来て、中野がその匂いを醸し出し始める。
嶋田は鮮烈な2連勝を飾ったが…、ここまで勝ち負けを繰り返してきた中野がきっと躍進する…。
そんな思いで僕の中野優勝予想は変わらずにいた。
この日の興行後、お酒の席である戦いが勃発する。
フェザー級の決勝…勝つのは嶋田か、中野か…。
断固中野を推す僕に、嶋田を推す観戦仲間。
中日本新人王の決勝の行方で、こうだああだ…。
TVで中継される由もない…世間から見ればローカルな試合。
世間が大注目するサッカーワールドカップの試合映像が流れる居酒屋で
世界最高峰のサッカーをほったらかした二人は、最高に楽しい論争を繰り広げた。
決勝が好カードである証だった。
8月5日。
運命の中日本新人王決勝戦。
銀縁メガネをかけたままリングに入場した嶋田。
黄色いシャツが「のびたくん」っぽさを煽る。
強烈なキャラクターに、東日本から観戦に訪れたプロボクサーが隣で驚愕する。
「あれ、大丈夫?距離ズレない?」
大丈夫…嶋田に距離は関係ない。
ゴングが鳴るとともに突っ込んでいく嶋田。
そして…向かい合った中野は、嶋田との真っ向勝負を選択する。
いきなり頭を付けての撃ち合い。
中野のフックは何度も何度も嶋田のテンプルを襲う。
嶋田は左アッパーで中野の顔面を跳ね上げる。
2Rに入ると、嶋田のペースに慣れてきた中野が強烈なフックで嶋田を襲う。
しかし、かまわずどんどん押し込んでいく嶋田。
近い距離でのディフェンスも巧く、体躯の強さで押し負けない。
生粋のファイターはもらってももらってもゴリゴリと攻めていく。
結果…中野は一旦は優位に立ったものの、削りに削られ失速し始める。
タイミングのいい右を突き刺して対抗するものの、
変わらぬペースで押し込み続ける嶋田に一気にペースが流れていく。
ボロボロに疲弊した中野…最終ラウンドに入ると、顔を紅潮させ、
大きく口を開けて空気を吸っては撃ち合いに挑んで行く…。
中野に酸素が足りない…まるで古い世界戦の15Rのよう。
嶋田のガムシャラなファイトもまた、古いボクサーを思い起こさせる。
クラシックな色合いに染まったファイトは、最初から最後まで撃ち合いの中で試合終了のゴング。
マイジャッジはドロー。
優勢点では嶋田。
公式ジャッジは39-37×2、40-36の3-0で嶋田を支持。
この新人王でデビューした嶋田が、今年のフェザー級新人王戦の2強と見られた
佐々木、中野の両名を破っての栄冠。
まさに台風の目となる活躍だった。
2戦目の勝利者インタビュー。
デビュー戦で1枚もチケットが売れなかったことを告白し、会場には動揺が広がった。
面白過ぎるキャラクターだ。
今、僕が参加するファン同士の居酒屋の席で、嶋田の名前は必ずと言っていいほど出て来る。
今後愛されるボクサーになっていくはず。
一つでも多く勝ち進み、全国にその風貌とボクシングのギャップを魅せつけてきて欲しい。
一度見たら、忘れられないインパクト。
きっとジャイアンより強いであろう「戦うのびたくん」。
全国のボクシングファンよ、この男の中毒性を体感せよ!
ドハマり注意!
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