タイの若き天才 ソット・チタラダ(タイ)① ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/04/27

タイの若き天才 ソット・チタラダ(タイ)① ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/04/27
 
 

まだ少年の面影が消えないのちの名王者がデビューを飾ったのは21歳の誕生日。
この頃、既に元ムエタイ王者の肩書を持つその美少年は、
既に7戦のキャリアを消費していた元国内王者、スリタンヤ・シスサナエ(タイ)を4RKOに沈める。

ライトフライ級、フライ級で伝説となる王者が派遣を争っていた時代、
この選手も伝説として語られる1人の王者となる。
 

今回のピックアップはタイの若き天才 ソット・チタラダ(タイ)
 
 

ジョー小泉氏に「曲芸のようなボクシング」と言わしめた程に美しいボクシング。
それでも同時代にはカオサイ・ギャラクシー(タイ)や、サーマート・パヤカルーン(タイ)…。
タイの人気ボクサーと時期が重なってしまったソットは、
タイ国内での知名度は日本人が思っているほど高くないようで…。
 
 
 

しかしながら、リングの上を華麗に舞い、芸術のようなスウェー、ヘッドスリップ…。
数センチ単位でかわし、即座に返す反撃はカウンターで突き刺さる…。
さらに華麗なフットワークに乗せてそんな技巧を繰り出すものだから…誰もソットを捕まえられない。
彼のピークは凄まじいの一言。

そしてまた、彼ほど目に見えて衰えていったボクサーも…。
 

カッコいいアウトボクサー…その代名詞のようなソット。
彼の戦歴を追って行きます。
 
 

ムエタイからの転向組としてよくあるパターン。
デビューから一気に世界を狙わせ、もしダメなようならすぐムエタイに戻る。
 

彼も初めはそんな意図で国際式(ボクシング)に転向します。
ムエタイ時代もパンチ型の選手として王座を獲得していたソット。
実はムエタイでフットワークを駆使する選手…パンチ型しかいないようで。

ムエタイは専門外ではあるんですが、
どうやら国際式転向前からボクシングへの適正を如何なく発揮していたよう。
ソットのスタイルはかなり珍しいスタイルだったようです。
 

そんなソットは前述の通り、デビュー戦で国内王者を葬り…。
わずか5戦で世界タイトルマッチへ辿り着きます。
 
 

相手はレジェンド チャン・ジョング(韓)
イラリオ・サパタ(パナマ)から王座を奪って以降、圧倒的な内容で3度の防衛を重ね、これが4度目の防衛戦。

1年前までボクシングとは別の競技で戦っていたソットが、超のつく強豪に挑んだ試合。
世界に向けたソットの初お披露目といったところ。

この試合、オープニングで驚かされるのは、ソットのスナッピーなジャブ。
ジョングをハンドスピードで圧倒的に上回っています。
…が、相手のジョングはこれが25戦目…ソットの5倍のキャリアを誇る強者。

基本に忠実に頭を振ってジャブを外し、トリッキーに飛び込み鈍器のような強打を合わせて来ます。
意識を刈り取るような種類のパンチではないものの真に残るダメージから
「錆びたノコギリ」とも形容されたジョングの強打。

これを各ラウンドに1度はもらってしまうソット。
細かいフェイントに振り回され、パンチの出所がなかなか見えない…。
ジョングが圧倒的に押し切りそうに見える序盤の展開です。

これが徐々に慣れてきた4Rあたりになると、ソットのジャブがジョングとの距離をコントロールし始めます。
強打をもらっても、強打で撃ち返し、試合は徐々に拮抗していく気配を見せます。

6R、バッティングによってジョングがカット。
視界に影響があったか、中間距離がはっきりソットの距離となります。
するとそこは歴戦のジョング、得意のコリアンファイトで
ゴリゴリとインファイトに持ち込み、ボディを効かせます。
しかしソットも撃ち返し、7Rは猛烈なボディの撃ち合いに。
撃ち疲れを見せたジョングはプッシングで膝をつき、休息を得るなど経験に勝る駆け引きを見せます。

9R…ボディを狙い続けるジョングに、ソットが上から押さえる形が続いた結果、
ソットへの減点が課せられます。
ポイントを獲られたと思われる前半に、拮抗した中盤…。
不利を悟ったソットは、撃ち合いに挑みます。

驚くべきことに、ジョングの土俵であるインファイトで撃ち勝ったのはなんとソットの方。
技術の高い二人の撃ち合いはお互いに高速でパンチをかわし合うような展開。
時折お互いを捉えるパンチはソットの方が上回ります。
恐るべき…天才の片鱗を見せつけます。

前半とは立場が逆転し、距離を取ろうとするジョングに追いかけるソット。
リングを所狭しと動き回る二人に、10Rにはレフリーの足が吊るハプニングも…。

11R、ジョングの流血が激しくなると、残り6分を乗り切ろうとクリンチに逃げるジョング。
片腕をホールドして撃とうとするソット。
脇の下に頭を潜り込ませてプッシングに見せかけた上で膝をつくジョング…
膝をついたジョングの後頭部にパンチを浴びせるソット。

お互いが、何が何でも…といった様相を見せた終盤。
一旦泥々になってしまった試合はそのまま最終のゴング。
2P~5Pの差をつけられてソットが敗北。

経験の差がそのままポイントに反映されてしまったような形で世界初挑戦に失敗。
しかしながら、世界王座獲得以降は無類の強さを誇っていたジョングに、初めて善戦した選手となります。
 
 

ちなみに…日本でも有望なアマエリートを数戦で世界挑戦させる…なんてよくあることなんですが、
それが可能になったのは、このソットのおかげ。

実はこの頃のWBCには戦歴に規制があり、一定数の試合をこなさないと世界挑戦ができない決まりがあった。
これをなんと…戦歴詐称で乗り切る訳です。
この頃はまだムエタイに戻るプランが生きており、さっさと世界戦して獲れたらラッキー、負けたら出戻り。

それがわずか5戦目の世界挑戦で、ソットが最強王者のジョングに善戦するものだから…。
戦歴の規制が撤廃されるわけです。
WBCのルールさえ変えてしまった…。
彼の天才ぶりを指し示すエピソード。
 

この一戦で軽量級の注目選手となったソット。
階級を一つ上げて再起を飾ると、続けざまに連勝し、わずか半年で世界再挑戦のチャンスを手に入れます。
 

相手は…ソットを語るとき、絶対に外せない選手。
強打者のガブリエル・ベルナル(メキシコ)です。

小林 光二(角海老宝石)から痛烈な2RKOで王座を奪っていたベルナル。
ソットの母国タイに乗り込んでの2度目の防衛戦です。
 

名伯楽のクーヨ・エルナンデス(イグナシオ・ベリスタイン(メキシコ)の師匠)を傍らに、
バンコクに乗り込んだベルナル。
この試合、タフな強打者のベルナルをソットのジャブが追い込んでいく…。

専門誌には地元判定とも書かれた試合。
際どい試合をソットが奪取。
ベルナル自身が全く負けたと思っていなかった…。
それも理解できるほどの拮抗した試合。

クリティカル、ダメージではベルナル優勢ともとれる試合、
何よりも凄いのはソットのジャブ。
スナッピーに相手を捉えていく。
ジャブの名手と呼ばれるのも納得のいく内容です。

この際どい試合が、ソットの後々のキャリアまで効いてきます。
 

…とまぁ、ここまででも充分凄いソット・チタラダ。
しかしこの姿が、まだまだ原石であることを思い知らされる。
 

そんなソットの全盛期はまた次回。
 
 

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