磨かれた原石 ソット・チタラダ(タイ)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/04/29

磨かれた原石 ソット・チタラダ(タイ)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/04/29
 
 

本日はソット・チタラダ(タイ)の二日目。
 

世界初挑戦でチャン・ジョング(韓)に敗れるも
一階級上げて世界王座を獲得したところまで。
 
 
 

薄氷の勝利でわずか8戦目の王座載冠となったソット。
初防衛戦は英国へ乗り込んでのチャーリー・マグリ(英)戦。
 
 

チュニジア産まれながら英国を拠点にするマグリのホームへ乗り込んだ一戦。
相手のマグリはランカーの頃から期待の選手として
アルフォンソ・ロペス(パナマ)サントス・ラシアル(亜)なんていう強豪を撃破。
アマ経験も豊富ですが、実はグラスジョーとしても有名。

英国の超人気ボクサーでしたが、顎を狙われ続け、
一度は王座を獲得するも、一度も防衛できずに手放してしまったマグリ。

再起戦ではEBU欧州フライ級王座を獲得し、サバイバルに成功。
ソットへの挑戦へコマを進めて来ます。
 
 

1R,2R、ジャブで捌こうとするソットに対して距離を詰めるマグリ。
特に怖さを感じなかったか、前進の止まらないマグリにいくつかソットは被弾します。

しかし、距離がつかめたか、3Rに入るともらったクリーンヒットはなし。
ひらりひらりと躱しながら、自らのパンチのみ放り込んでいきます。

特筆すべきはいきなり出るアッパー。
一旦腕を下げて撃ち込むアッパーは、コンビネーションの中で使うもの。
インファイトでもない局面で、アッパーから入るのは、相手が手を出さない確信がある時か…
よっぽどもらわない自信がある時か…。
 

ラウンド中盤には低く入ってきた相手を軽く上から押さえ込みながらアッパーを聞かせ、
左右のストレートで追撃。
レフリーが割って入り、スタンディングダウンかと思いきやプッシングの注意。
その後、右ストレートでマグリがキャンバスに手をつくも、スリップの判定。

敵地の難しさを体感するシーン。
しかしこの3Rからの展開は変わることなく、5Rにはマグリを沈めます。
 
 

 
 
 

さて、初防衛に成功したソット。
世界獲得時にかなり拮抗した結果となったガブリエル・ベルナル(メキシコ)との再戦に挑みます。

この試合、前戦以上に拮抗した内容となってしまい…。
結果は1-0の引分防衛。
この試合でも専門誌には地元判定の文字が…。

日本国内でのガブリエル・ベルナル(メキシコ)の知名度…
日本人世界王者だった小林 光二(角海老宝石)を一気に飲み込んだ2RKO勝利…。
これが大きいとは思いますが、ソット・チタラダという名王者に対して、
地元判定説が沸き上がるほどの試合を展開した。
…この凄さに目を向けてほしい。

そして、小林 光二…昨今、日本人世界王者としてそれほど語られることの少ない彼が、
とてつもない相手に散って行ったことも併せて…。
 
 

さて、このあたりで、ひとつ…ソットの転機が訪れます。
それがトレーナー チャールズ・アトキンソン。
彼の指導を受けるようになったのがこの頃と言われています。
 

3度目の防衛戦。
タイから大応援団を引き連れ第三国のクウェートに乗り込みます。
フレディ・カスティーヨ(メキシコ)戦。

このフレディ・カスティーリョ。
既に2階級制覇を達成していたキャリア後期ではありますが、
その戦歴には歴戦の強者達がずらずら並ぶ…。
現役を終えるまで壮絶なサバイバルを繰り広げた本格派。

活火山の異名の通り、突然起こる大噴火のごときラッシュは見ものです。

身長では5cm程下回ろうかというカスティーリョ。
懐に潜ろうとするものの、ソットの華麗なアウトボクシングに入り際を徹底的に叩かれる。

2Rにはソットの右ストレートを浴びて、たたらを踏んで尻もち。
しかしカウントをとらずに試合を再開するレフリー…。

第三国開催なのでどちらの地元でも無く…
また、観衆はソットのパンチが入るたびに「うぉい!」と声をあげる。
これはタイ特有の応援です…。

レフリー…たまたまパンチが入ったのを見逃してしまったのか…。
信じられないほど解りやすく入ってはいるはずなんですが。
 

アッパーで体を起し、起き上がるタイミングでサイドに周り込むソット。
そのままワンツーを叩き込むなんていうハイスピードの芸当。

全く状況を打開できないカスティーリョ。
稀に、詰めての強打が当たっても、単発で終わる…というより終わらされる。
ソットの即座の反撃に追撃はできず…。
 

チャールズ・アトキンソンに煮詰められたソットのボクシング。
後半に入るとスイッチのステップを繰り返しながら綺麗に捌ききります。

結局ほぼフルマークに近い大差判定での勝利を飾ったソット。
 

強豪のマグリとカスティーリョを圧倒的に破ったあとは、ノンタイトルの調整試合を2試合。
これをいずれもKOでクリアし…
 
 

ガブリエル・ベルナル(メキシコ)とのラバーマッチを迎えます。

この試合…結論から。
これまでのベルナルとの2試合が嘘のように、ただただソットがベルナルを圧倒し続けた展開。

スイッチのステップを完全に使いこなし、左右どちらの構えからも
同じように素晴らしいリードを撃ち込み、同じ場所にとどまる時間は皆無。
紙一重のスウェーでパンチを交わすと、体を戻すのと同時に反撃。
一切ベルナルを近づけない。

撃たれずに撃つ…その究極系のボクシングは、まるでリングの上を舞うよう。
 
 
 

これまでのソット…ジョングに善戦し、世界を獲得後、ベルナル以外の相手には圧倒的に勝利。
もちろんこの時点でも充分強かった分けですが、その姿はただの原石だった…。
そんな現実を突きつけるボクシング。

アトキンソンという名伯楽が磨き上げてしまうわけです。
…超伝説級の選手になってしまった。

このソットにいったい誰が勝てると言うのか…。
その後、試合期間が9ヶ月空くこととなるソット。
この当時は3ヶ月に1度ほどのペースが世界戦の平均的な試合間隔。
あまりに強すぎたソットをこの空白が示しているのかもしれません。

実は、この3度目の防衛戦がソットのピーク。
アトキンソンが磨き上げたソットは自身のあまりの強さに酔ってしまう。
夜遊びを繰り返す悪い噂は遠く離れた日本にまで聞こえてくるほど…。
 
 
 

4度目の防衛戦となったアン・リーキィ(韓)戦。
練習と言う練習も行わず、体重を落とすだけだったと言われたこの試合。
そんな状態でもソットの強さは圧倒的。

1R、カウンターで入ったジャブでリーキィがたたらを踏んで後退。
追いかけての追撃で最初のダウンを奪います。

入ったのはただのジャブ…その威力を見せつけます。

3Rには狙いすぎたかビッグヒットを2つほどもらいますが、
狙いどおりのアッパーを叩き込んでこの試合2度目のダウンを奪取。

4Rにはかすったような左のロングフック…後ろに倒れ込んだリーキィはこれでテンカウント。
 
 

さて…次の防衛戦は…初来日の神代 英明(グリーンツダ)戦。

日本のファンが伝説を初めて目の当たりにします。
そしてこのあたりから…ソットを語るときに外せない…彼の凋落が始まります。
 
 

そんなところでまた次回。
 
 

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