事実上の決勝戦 茗荷 新緑(川島)③ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/07

事実上の決勝戦 茗荷 新緑(川島)③ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/07
 
 

さて、今日は茗荷 新緑(川島)のピックアップ第3回。
 

東日本新人王戦準決勝からですね。
 

ここでぶつかったのが優勝候補。
医大生ボクサーとして話題にもなっていた月花 正幸(八王子中屋)。
 

新人王戦って面白いのが、戦前からの優勝候補と、
トーナメントが進んでいくうちにこいつ凄ぇぞ!ってなる優勝候補がいて、
この試合はまさにそんな二人がぶつかる試合。

このあたりになると、後楽園ホールに通いまくる歴戦のボクヲタ達は
なんか凄いうまい選手がいる…って気付いてるわけです。
 

事実上の決勝戦と目された月花との試合。

月花は茗荷のフットワークを潰そうとボディを中心に組み立てます。
対する茗荷も左ストレートで月花の顔面を跳ね上げる場面も作りますが、
試合は月花ペースで進み、レコード唯一の黒星を喫します。

さぞ悔しかったろうと思いきや、茗荷選手が語る自身のベストバウトがこの試合。
自分の力を想像以上に引き出してくれた試合、今まで生きていて一番楽しかった瞬間…と語っています。

「強過ぎるとだめだし、弱いと出し切れない。
 月花選手が程よく自分より強くて自分の力を120%出させてもらえた。」
 
 

 

この後、月花は立山 信生(船橋ドラゴン)との決勝で1RKO負け…。

強いのは月花、勝ったのは立山と言われたこの試合。
ゴング後の加撃に対してインターバルが取られなかった等、月花ファンからすればモヤモヤが残る試合。
この試合で月花は引退してしまいます。

ちなみにこの年の新人王は大庭 健司(FUKUOKA)。
のちに第23代WBC世界スーパーフライ級王者となる佐藤 洋太(協栄)が持っていた
日本王座に挑んだ選手です。

月花との試合、何か起こって勝ちでもしてたら…なんてやっぱり空想してしまいますね。
 
 

残念ながら、東日本新人王は敗退してしまった茗荷。
しかしここまで5勝を積み上げており、晴れてB級ボクサーへと昇格します。
 

次の相手はA級昇格にリーチを賭けた田畑 光輝(花形)。
この試合、田畑に優勢に試合を進められた茗荷。
4R、5Rにダウンを奪い逆転のTKO勝ち。

レコードに初めてKOを刻んだ試合なんですが…。
まさに斬って落とすようなカウンター。
フックだったと思います。

前半“実験的”にインファイトを仕掛けた茗荷。
後半は捌こうとしていたところに、突っ込んできた田畑にカウンターでズドン。
 

そもそもパンチが無い選手ではなかったんですよね。
相手をグラつかせる場面ってのは何度もあったし。

憧れの徳山 昌守(金沢)は一撃で切って落とすタイプ。
そもそも連打で押し切る練習をやっておらず、そのあたりがKO率が低い原因。
ミットを持たされた人は、「何でこのパンチでこのKO率?」なんて驚いていたそうです。
 
 

次戦は京都から遠征してきた森島 隆司(SFマキ)に6R負傷判定勝利。
これでA級ボクサーへ昇格。
日本ランキングに入る権利を手に入れます。
 
 

A級昇格初戦では、相手もA級初戦となる佐々木 康裕(横浜光)。
お互いに初の8回戦。

この試合、茗荷をアクシデントが襲います。
練習中に肉離れを起こしていた茗荷。
完治してこの試合に挑んでいたはずが…5Rに肉離れが再発します。

前半の貯金でなんとか耐え抜き、2-1…薄氷の勝利。
ただし、実力で言えば大差をつけて勝っていただろうという試合。

ランカーと戦いさえすれば、きっと日本ランキングは手に入る。
この当時の日本王者は、現在のWBA世界スーパーフライ級世界王者 河野 公平(ワタナベ)

まだまだその頃の河野は現在ほど強さを発揮していなかったのもあって、
うまくいけば日本タイトルも獲っちゃうんじゃないか…なんて。
ちょっと贔屓気味な期待もしちゃってました。
 

しかしそこから…
待てども暮らせども次戦の情報がない。

冒頭で書いたように1年経ち…2年経ち…。
 
 

彼はふっと消え去るようにリングを後にしてしまっていました。
 
 

彼が引退した理由を知るのはそれからだいぶ後のこと。

最後の試合の少し前から、原因不明の発熱や痛みを発症。
怪我が増えたことも重なり、引退後の人生を真剣に考えてのこと…だったそうです。

残念…であることは間違いないですが、仕方のないところだと思います。
 
 

病院に行ってもどうにもならなかった発熱や痛み。
絶望するほど苦しんだ末に辿り着いたのが、東洋医学だったそうで…。

症状が改善した後の茗荷選手は、壁に吊るしたグローブをもう一度手に取ることなく、
第2の人生…治療家への道を歩み始めます。
 

「原因不明の体調不良などで仕事やスポーツを辞めざるえない、かつての自分のような人を助けたい。」
 

現在の彼は東京メトロ丸ノ内線の茗荷谷駅近くで鍼灸院を営んでいます。
その名も「みょうが鍼灸院」。
 
 

茗荷谷駅近くのみょうが鍼灸院で働く茗荷院長…
 

だからどうしたって話なんですけど…一応、ね。
 
 

みょうが鍼灸院
東京都文京区小石川5-3-2 1階
03-3868-2004
www.myoga-shinkyu.com
 
 
 

ボクシングを見るようになって15年以上。
引退後、受けたダメージの後遺症で悩む選手を知った時、やりきれない思いになることもしばしば。
僕らファンの一喜一憂の為に人生を犠牲にした選手がいると思うと…。

だからこそ、茗荷選手が今も元気でいること。
新しい職に、プロとして熱を持って取り組んでいること。
それが嬉しくてたまらない。
 
 

彼のボクシングは才能とかそういったものではないと思うんです。
基本に忠実な撃たれずに撃つボクシング。
そういったボクシングでA級まで勝ち上がった…

もし、彼を病魔が襲わなかったとしたら、きっとまだまだ強く(巧く)なっただろうし…
その先がどこまで続いていたか…これはもう言い出したらキリが無くなることだと思います。
 
 

ベルトもランクも手に入らなかった彼が、リングの上で証明したこと。
それは努力で何かを成し得られる人間だということ。
彼が試合のたびに、彼のそのスタイルで勝利をつかみ獲っていたことが、証明になると思うんです。
 
 
 

「もっと早くに、今の自分と出会っていたらランカーにはなっていた自信はあります。
 下位ランカーで勝てるなと思っていた選手はいたので。」

ボクサーとしての彼の勝利へ対する熱。
グローブの中に握り込んでいたそれを、今は治療化として患者さんに向けられていることでしょう。
リングを降りた後も…いつまでも応援したい人であったりします。
 
 

 
 

 

世界戦に顔を出すような強い選手のその下では、世界へ挑む生き残りマッチが繰り広げられています。
その下には日本王座や地域王座のタイトル争いがあり、
さらにその下に日本ランクなどナショナルランクの奪い合い、
さらにその下にはA級ライセンスやB級ライセンスへの昇格を賭けた試合があり…。
 

本当に強いのは世界に挑む選手たちだけなのか?
後楽園に何度も行くとね、強くても何かのトラブルでこけたり、
ボクシングを続けられなくなった選手を知る。

さらに日本王座を必死に目指す選手を目の当たりにして、日本王座の凄さを知る。
A級ライセンスの凄さ、B級昇格の凄さ、プロテストに受かる凄さ…。

いろんな凄さが見えてきて、ボクシング雑誌の片隅に追いやられるような試合に手に汗握ることになる。
ボクシングは麻薬…これはどうやら戦う選手だけでなく、見る側のファンにも当てはまるようで…。

魅力的な無名選手が繰り広げる試合、それもまた…後々の語り草。
 
 

そんなこんなで、茗荷選手のピックアップはここまで。
 
 

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