本当は怖かったパレナスの話(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/09

本当は怖かったパレナスの話(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/09
 
 

1ヶ月以上前の話をする。
このブログでは現役日本人世界王者の話題はなるべく避けて来た。
 
 

理由は、自分よりも有能で知識の深いボクシングヲタクは沢山いて
井上 尚也(大橋)内山 高志(ワタナベ)、その他現役世界王者の話は
彼らが提供する話題で充分だと考えていたからだ。
 

ただし、あまりにも井上が圧倒的に勝ちすぎてしまった為に、少しほころびが出て来た。
対戦相手のワルリト・パレナス(比)…彼の実力が全く見えなかったからだ。
他の方々が出している情報に少しだけ捕捉をさせてほしい。
 
 

日本に輸入ボクサーとして登場したころはウォーズ・カツマタ名義。
スパーリングで拳を交えた国内のトップボクサー達は口をそろえた。
「パンチ力が半端ない」

思い切りの良さの反面、世界のトップレベルから見れば撃ち終わりの荒さ、
足が揃ってしまう欠点などはあったが、そんな弱点の霞む強打を兼ね備えていた。
彼の長所を一回り大きくし、欠点を削ったのがノニト・ドネア(比)
ドネアほどのスケールはないにせよ、強い比国人ボクサーの伝統を
体に浸み込ませた強者であることは間違いなかった。

そもそも比国に馴染みの深い、勝又ジムが金を積んで呼び寄せたボクサーである。
いくつかの負けを重ねていたものの、その時点で彼が弱いはずはない。
少なくとも素材は相当なものだった。

しかし、メキシコから呼んだ世界ランカーのオスカル・ブランケット(メキシコ)
出会い頭の一撃をもらい、彼は日本から姿を消す。
もし、この試合を落としていなければ、八重樫 東(大橋)に挑戦したのはブランケットではなく、
パレナスだった可能性もある。
 
 

その後、彼の名前は海外の情報からも消え去り、既に終焉を迎えたかのように見えた。
しかし1年強の歳月を経て、彼は母国で復帰を飾る。
日本で戦ったころより一回り強くなって…。

WBOオリエンタル王座を獲得した彼は、わずか1年の間に6試合を戦い急激にランキングを上げる。
そこで朗報が舞い込むのである。

正規王者 井上 尚也の拳の手術の為に設けられた、WBO世界スーパーフライ級暫定王座決定戦のオファー。
相手はダビド・カルモナ(メキシコ)

カルモナも立派な世界ランカーである。
一度世界挑戦に失敗しているが、相手はアルゼンチンのスーパースター オマール・ナルバエス(亜)

ナルバエスも井上の圧倒的強さの前に実力を過小評価されてしまった選手の一人ではあるが、
北中米の知名度で言えば、未だ井上を上回っているであろう強豪である。

そのような強豪に喫した黒星、いたしかたないとも言える黒星である。
そんなカルモナを相手に敵地で奮闘したパレナス。
結果は分のいい引分。

あと1Rポイントを獲っていれば、井上の前には暫定王者の肩書を携えていた。
それに限りなく等しい実績を持っていたと言って過言ではないだろう。
 
 

故障で1年の期間が空いた井上にはWBOからは対戦指令が課せられる。
いわゆる指名試合である。
本来は暫定王者と戦うはずだったこの試合。
引分で暫定王者は産まれておらず、WBOはカルモナかパレナス、
どちらかを選択して試合をこなすよう井上に指令する。

「強者と戦う」
ハイリスクな方針を掲げる井上陣営が選んだのはパレナス。
実際に映像を見て判断したのだろう。

ナルバエスと比較すれば実績に劣るパレナス。
マスコミがパレナスを弱いと見るような発言をすると井上は語気を強めた。
「パレナスは強い!」
 
 

例えば中途半端な駆け引きやテクニックでランキングを上げて来たような相手であれば、
技術的にも優れている井上。

判定であれ、KOであれ、井上が負ける姿は微塵も想像できなかった。

パレナスのような、一撃KOを持った選手でなければ、アップセットの匂いさえしない。
それほど圧倒的な井上である。
パレナスは数少ない可能性を持ったランカーの1人だったはずだ。
 
 

しかしである…井上は圧倒的に強かった。
パレナスはその強さを発揮する前にガードごと潰された。
一応言っておくが、パレナスのガードは固いと評判のものである。

固めたガードを緩めなければ、パンチは出せない。
そのガードからパンチに移行する、一瞬ガードが緩む瞬間…
井上のフックがパレナスを強襲。

反応できずにダメージを負ったパレナスはガードを顔にピタリとくっつけてしまう。
ダメージを吸収する空間を失ったガードめがけて再度叩き込まれたフック。
この強打でガードごと粉砕するのである。

タイミング、威力、スピード…とてつもない一撃。
 
 

この試合を見た、あまりボクシングに馴染みのないファンは一体何を感じただろうか?
少なくともパレナスに強さを感じなかったはずである。

その前に破ったナルバエスがロートルという意見も散見する。
もっと強い相手を…と。
 

ナルバエスより強い相手…これはかなり限られた数になってくる。
ポール・バトラー(英)か、それを破ったゾラニ・テテ(南ア)
WBC王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)も資格はあるか…。

巷で話題のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)は階級が一つ下の選手。
“ロマゴン”が階級を一つ上げる増量が果たしてうまくいくか…。
元はミニマムのゴンサレスが増量し、スーパーフライの水に馴染むまでは、
相応の時間を考えたほうがいい。
時期が早いと思われる彼との試合は、とりあえずは候補から外しておく。
 

同じ階級でこれだけ対戦相手が絞られるとなると、これはただごとではない。
ナルバエスがどれだけ強かったかを示すことにもなると思うのだが…。
井上戦しか見ていない方にはなかなか理解してもらえない部分だろう。
 

井上は強い、凄い。
確かにそうだが、どれだけ凄いか…の指標を持っているだろうか?
ボクシングは相手あっての者である。

井上の圧倒的な勝ち方はそれだけでも凄い。
ただし、それをナルバエスやパレナスほどの強豪に
それをやってのけたことで彼の凄さはさらに際立つのである。
ナルバエスやパレナスを弱い選手にしてしまえば、井上の本当の凄さは霞んでしまう。
せっかくリスクを背負った井上のレコードを踏みにじる形になってしまうのだ。

そもそもナルバエスやパレナスを弱い選手と言い切るのは無理がある。
一度井上戦以外の映像を見てもらいたい。

彼らを弱いとするプロパガンダにどんな目的があるのか…理解しかねる部分が多い。
 
 

年齢では測れない強さを持っていたナルバエス…彼には決してロートルという言葉は似合わないのである。

彼と井上の再戦の話が上がっている。
新たにWBOが指名挑戦者としたダビド・カルモナ戦後の話となるのが濃厚なようだが、
オプション(再戦契約)によりナルバエスは井上に挑む権利を所持している。

前回の圧倒的な試合から、井上圧勝予想が大多数を占めるだろう。
 

あれだけの敗北を喫しながら、井上に挑むナルバエス。
オプションを握っていたとして、避ける選択もあったはずである。

実績がありすぎて他の王座に挑めず仕方なく…か。
競技人生の最後に、強者と戦い散るつもり…か。
何かしらの井上対策を持っているのか…。
 

再戦というのは難しいものである。
はたから見るより、向かい合った二人の情報量は圧倒的に多い。
どんな文章も映像も、生で観戦する試合も…リングの上で戦った二人が感じた物に比べたら、
とてつもなく陳腐な物である。

もしナルバエスに何か対策があってのことなら、ナルバエスほどの選手。
作戦を遂行するには充分な器である。
選手同士の実力比べ以外に、陣営の知恵比べの要素も組み込まれる。
 

スーパーフライ級でのこれまでの2戦もそうだが、次戦のカルモナも…その次も…。
井上はしっかりとリスクを背負っている。
 

井上の凄さを語りたいのであれば、彼ら対戦相手を深く考察することも必要である。
できるなら、井上が凄い勝ち方をした…という話に「凄い相手に」という言葉を付け加えてもらいたい。

井上を応援するファンには、彼が容易く実現させているように見える結果は、世間が考えるより、
はるかに高い難易度のものであることを認知させてもらいたい。
 

他の世界王者の奮闘ももちろんだが、井上の激進は日本ボクシング史上に残る大事である。
ボクシングファンだけしかこの凄さがわからないとなれば、これほどもったいない話はないのだから。
 
 

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