決着戦、宿敵、世界記録 張正九(韓)⑤ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/19
さぁ、本日は5日目となったチャン・ジョング(韓)。
このシリーズ…まだまだ終わりそうにありません!
前回は8度目の防衛戦まで。
大関 トーレス(協栄)、センダイ・モンティエル(新日本仙台)と苦戦が続いたジョング。
両者との決着戦となる9度目の防衛戦からですね。
9度目の防衛戦で迎えたのは三度目の大関 トーレス。
この試合、実はトーレスがジムに無断で出場を決めた試合。
目の前にぶら下がった世界に挑むチャンスに食らいついての挑戦。
これまでの2戦と全く違うのは、試合を通じてトーレスがインファイトを展開したこと。
足を使う場面は1Rの前半、様子見の時間帯のみで、以降は後ろに下がる場面はほとんどなし。
もう2度と世界挑戦のチャンスはないかもしれない…鬼気迫るトーレス。
しかし無情にも、そんなトーレスに序盤から撃ち勝っていくジョング。
それでもトーレスは前に歩みを進め…。
中盤になると小休止か、ジョングが足を使います。
この場面でもトーレスは前に出て捕まえようとしますが、
本来、インファイターではないトーレスの追い足では捕まらず、逆に強打を放り込まれます。
後半に差しかかろうかというタイミングで、KOを狙ったジョングもインファイトに切り替え…。
お互いの殴り合いが始まります。
ジョング有利に進む中、トーレスは一切ボクシングを切り替えず、愚直に撃ち合いを挑み…
なんとか12Rを耐え抜き判定へ。
結果は明確なジョングの判定勝ち。
トーレス、自らのボクシングを捨ててがむしゃらに前に出ましたが…
ついにジョングに勝つことは叶いませんでした。
10度目の防衛戦はセンダイ・モンティエルとの再戦。
前回はモンティエルの底なしのスタミナに苦戦したジョング。
トーレスに続いて、再戦ではっきりカタをつけようということでしょうか。
前回の戦いを踏まえて、モンティエルはサークリングしながら
拳に力を込めてボディを狙います。
単発ながら強打を重ねるモンティエルに
一旦捕まえると3発4発と強打を叩き込むジョング。
時折発生する撃ち合いでは互角の展開。
しかしアウトボクサーを追い詰めることに長けたジョング。
中盤にはモンティエルを完全に捕まえます。
捕まえては連打の嵐。
そんな中、時折モンティエルの強打がジョングのボディを襲って反撃。
後半に入ると流石に疲労の色を見せるジョングですが、前回とは雲泥の差。
まだまだ元気なジョングに、意図した展開通りとは行かなかったモンティエル。
中盤奪われたポイントの挽回は不可能と見て撃ち合いに挑みます。
撃ち合いでもタフさでもジョングに引けを取らないモンティエル。
互角の殴り合いが続き…そのまま12R終了のゴング。
しかし、前回よりポイント差を広げて、今回は明確なジョングの勝利。
11度目の防衛戦。
ここで…迎えるは、日本が誇る150年に1度の天才、大橋 秀行(ヨネクラ)。
この頃のライトフライ級の防衛数世界記録は具志堅 用高(協栄)の13回。
世界記録更新への期待も高まり、韓国の国民的英雄になっていたジョング。
ついたあだ名はコリアンホーク。「韓国の鷹」です。
これはアーロン・プライヤー(米)に倣ったもの。
盛成を誇ったこの頃の韓国ボクシング界の大エース。
韓国スポーツ界での最高年収を稼ぎだし、試合観衆は毎試合1万人以上。
その熱の高まりはこの大橋戦で更に加熱します。
1Rから完全に足を止めてジョングに向かい合う大橋。
破格のハードパンチャー大橋に対して、なんとジョングも足を止めて迎え撃つ。
比較的静かに始まった両者のインファイトは次第に熱を帯び始め…。
4Rのゴングが鳴るとそれは激しい殴り合いに。
圧力に負けて下がり始める大橋。
これまでであれば一気に詰めているはずのジョング。
それを防いだのは大橋の強烈な左フック。
…二人の熱戦は次のラウンド、さらに熱くなります。
前回のラウンド同様多彩な強打を叩き込むジョング。
強烈な左フックで応戦する大橋ですが、ダメージを蓄積させてしまい
タイミングのいいジョングの右フックでダウン。
再開後、ジョングが一気に攻め込もうとすると、応戦する大橋の強打がいくつかヒット。
ジョングの首が吹き飛びそうな程の威力。
しかし幾戦もの激戦を制してきたジョングの撃たれ強さは驚異的。
ジョングが連打をまとめたところで、レフリーストップ。
駆け引きも、手数も、強さも、全てで大橋を上回ったジョング。
傍目には圧勝に見えるこの試合ですが、ジョングは大橋を強烈に意識します。
ここまで完全に足を止めてジョングに向かってきた相手は初めてであり、
それがわずか7戦目のヒヨっ子であれば当然か…
12度目の防衛戦は伊達 ピント(新日本仙台)。
ジョングが圧倒的に6RTKOで制した試合。
ピントは直近の試合で日本ランカーに敗れた上で、挑戦を強行。
本来ならば世界挑戦できるような立場ではなかったと猛烈な批判にさらされ、
日本ではしばらくの間、世界挑戦は日本王座が東洋太平洋王座獲得が必要…との
不文律が出来上がるきっかけとなりました。
続いての試合、ライトフライ級の防衛数世界タイ記録を賭けて、
13度目の防衛戦にアグスティン・ガルシア(コロンビア)を挑戦者に迎えます。
手も足も、圧倒的なスピードを誇るガルシア。
ジョングを前にしてもそのスピード差は圧倒的。
スリリングな角度のパンチを撃ち込む場面も。
この相手をプレシャーで自らロープに下がらせるジョング。
世界王座を獲得してから5年、身体的には若干衰えの見えて来たジョングですが、
その身体的能力差を塗りつぶしてしまう訳です。
ガルシアがクリンチに逃げようとしてもそこは地獄。
両手をホールドしない限り、ジョングの強引なパンチが襲ってきます。
ロープに詰められるまでは、身体能力の差で分があるガルシアも、
詰まってしまえば打つ手が無くなる。
フェイントとプレッシャーで追い込まれ、最終的にはどうしてもロープに詰められてしまうガルシア。
かつての対戦相手、大橋が「錆びたノコギリ」と形容したジョングのパンチ。
体の芯に残り続けるダメージを重ね、ラウンドが進むごとに疲弊してしまいます。
7Rにはガルシアへのローブローの注意、この再開直後に衝突事故のようなカウンターでガルシアがダウン。
立ち上がってこのラウンドを乗り切るも、8Rには左ボディで2度目のダウン。
9Rに追い詰められたガルシアは肘で応戦するも、レフリーがしっかり見ており減点。
成す術を使い果たしたガルシア、10Rにロープ際で滅多撃ちにされると、
しゃがみこんだところで試合がストップ。
具志堅 用高(協栄)が打ち立てたライトフライ級の防衛数、世界記録に並びます。
記録更新のかかった14度目の防衛戦で迎えたのはメキシコのイシドロ・ペレス。
しかし、この頃、ジョングはリング外の騒動でボクシングどころではなかった。
夫人の母親がジョングのファイトマネーを懐に入れ続け
エスカレートすると、ジョングの名義で事業に手を出し失敗。
マスコミにそれが露見し追い立てられる日々…。
このペレス戦、調整もままならない状況で迎えてしまいます。
1R様子見のように旋回するジョング。
いくつかパンチの交換をした後、突然の出来事。
足が揃ったところに強烈なペレスの左フック。
確実に意識が飛んだジョングは尻もちをつくようにダウン。
無類の撃たれ強さを誇ったジョングからは信じられないシーン。
かなり効かされたようで、試合が再開されるとしがみつくようなクリンチを繰り返して乗り切ります。
なんとかジョングに記録を更新してほしい客席からはリングに異物が放り込まれるようなシーンも…
このラウンドをなんとか乗り切ったジョング。
スピードではペレスに分がある状態を打開しようと、コリアンファイトを展開。
強引に距離を詰めて撃ち合いを挑みます。
応戦したペレス、12Rを通して両者は撃ち合いを続けます。
時折、ジョングのボディを効かされるペレス。
熱のこもった撃ち合いに観衆は熱狂。
10Rには終了のゴングが聞こえず、二人の撃ち合いを止めようと、双方のセコンドがリングに飛び込みます。
試合はボディを効かされて失速したペレスが、ジョングの猛烈な追い上げを許した形で、すれすれの3-0判定。
ジョングが世界記録を更新します。
実はこの14度目の防衛後、引退の噂も出たようです。
世界記録を塗り替え、毎年韓国のスポーツ選手最高年俸を叩き出し、
傍目には、手に入れるべきものは全て手に入れたと言ったところか…。
しかしながら、彼はもう1試合だけ戦うことを決めます。
騒動で資産を手放してしまったところに、舞い込んできた好条件のオファー。
この金があれば…全てを精算できる。
そしてその相手は自分を相手に一切下がることの無かった強打者…大橋 秀行。
韓国開催が本筋だったこの試合、ペレス戦の苦戦や騒動のイメージダウンから
国内防衛しかしない王者と書きたてられたジョング。
ならば…と日本開催を受け入れ、初の海外防衛に挑みます。
あの小僧をぶちのめし…騒動で負ったマイナスを精算する…。
日本で名勝負とされているチャン・ジョングvs大橋 秀行。
15度も防衛しているジョングにとって、防衛戦の1試合にすぎないかと思いきや…。
この試合はジョング目線で見ても名勝負の一つ。
てなわけで、ジョングの最も熱い試合はまた明後日…。
では!
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