宿敵達との再戦 張正九(韓)⑥ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/21

宿敵達との再戦 張正九(韓)⑥ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/21
 
 
 

もう…6日目になりました。
チャン・ジョング(韓)のシリーズ…。
過去ピックアップした選手の中で最高記録です。
 

めちゃくちゃ好きだから!って訳でも無くて…。
好きなボクサーではあるんですが、とにかく彼は内容が濃いですよね。
まさかこんな大変だとは…。
 

それはさて置き、前回はライトフライ級14度防衛の世界記録を打ち立て…。
最後に自身が猛烈に意識する大橋 秀行(ヨネクラ)との試合の為に来日するところから。
 
 

長いキャリアを積み重ねたジョング。
37戦目で初めて海外での試合に挑みます。
敵地日本に乗り込んでの大橋戦。

前回の戦いで、既に伝説ともなりつつあった自分に、真っ向から挑んできた若い小僧。
日本の最後の切り札とも言われた大橋 秀行を殴り倒すべく…。
 
 
 

比較的静かな立ち上がり…ジョングのアッパーがヒットするのに少し遅れて大橋の左フックが着弾。
お互いのファーストヒットが終わると…この時を待っていたかのような二人の乱打戦が始まります。

いくつもいくつも強打を重ねるジョング。
たった一撃でジョングの首ごと吹っ飛びそうな強打を見舞う大橋。
 

駆け引きを超越し、ボクシングの原点でもある殴り合いを展開する二人。
3R、強烈なボディからコンビネーションを叩き込むジョング。
フィニッシュは左フック。
最初のダウンを奪います。

試合が再開されると、左アッパー。
完全に腰が落ちた大橋にレフリーはスタンディングダウンを宣告。

大橋はカウントが進む間、ジョングの目を鬼気迫る形相で睨みつけます。
再開後ブチ切れた大橋は休むこともせず、撃ち合いに飛び込み…。
ジョングの右ストレートで3度目のダウン。
 

3ノックダウン制を敷いていないWBCの試合、この時点では試合は終わらず…。
このルールがここからの名勝負を産み出すこととなります。

試合が再開されると、またもや大橋はジョングとの撃ち合いに飛び込んでくる。
お互いの右が交錯した刹那…。

伝説のドラマが幕を空けます。
カウンターで大橋の強打を喰らったジョングが、たたらを踏んで後退。
完全に意識が飛んでしった状態。
なんとか踏みとどまり、大橋にしがみつくようにダウンを拒否。

残り時間は少なく、その後大橋のラッシュに襲われるも、このラウンドをなんとか乗り越えます。
歴戦のジョング…次のラウンドは休むと思いきや…。
大橋がそうしたように…ジョングも撃ち合いに飛び込みます。

4Rでは一瞬ジョングの意識が飛んだだろうと思われるシーンが少なくとも2度ほど。
それでも下がることなく撃ち合いに…。
戦略、戦術、経験、駆け引き…そんな言葉が陳腐に思えるほどの、純粋な殴り合い。

今でこそボクシングはスポーツではありますが、元々はただの殴り合いです。
そんな現実を見せつけるような二人の戦い。

勝敗を決定着けたのはこれまで14度の防衛を支えたジョングの撃たれ強さ。
徐々に回復を見せるジョングに対し、ダメージを蓄積させた大橋。
7Rと8Rで合計4度のダウンを喫し、レフリーストップ。

インターバルの1分間、両者が視線を外さず睨み合う姿も印象的な一戦。
 

これで本当に全てをやり尽くしたジョング。
15度防衛は当時の東洋太平洋圏全階級通じての世界記録。

年齢25歳、現役生活8年間。
泥沼化した私生活とは裏腹に、リングの上では有終の美を飾って、グローブを壁に吊るします。
 
 
 

しかし、1年2カ月後、ジョングの姿はリングの中にありました。

引退後、疲れ切っていたジョングは、全ての資産を手放し離婚。
慰謝料総額は1億2千万、所有していたマンションも取られてしまい…
 

そんな中で新たな女性と出会い再婚。
資産0からの新しいスタート。
当然ジョングにとって最も稼げる場所はリングの上です。
 

金を稼ぎたい。
 

生気を取り戻したジョングは、再度リングに上がり、自らの居場所でもあった王座を目指します。
 

フライ級のメキシコ王者 アルマンド・ベラスコに貫録の判定勝利を飾ると、
自身の巻いていたベルトを保有するWBC世界ライトフライ級王者へと挑みます。
 

のちにマイケル・カルバハル(米)と共に、
軽量級初のミリオンファイターとなる、ウンベルト・ゴンサレス(メキシコ)
少年(チキータ)の愛称を持つ、軽量級史に残るファイター。
ジョングの次の時代を支えたレジェンドです。
 

レジェンド新旧対決となったこの試合。
この頃のゴンサレスはまだ初めてのベルトを巻いたばかり。
世界王者としてはまだ初々しかったころ。

1R、猛牛ともあだ名されるゴンサレスの周りを旋回しながら様子を見るジョング。
しかしミドルレンジではゴンサレスに分があるか…いいパンチをいくつかもらいます。

距離が詰まった時、ゴンサレスがクリンチに逃れようとしますが…
クリンチワークはジョングの十八番。
強打を連続でヒットさせます。

2Rが終わったあたりで判断したか…。
ジョングはコリアンファイトを選択。

頭から突っ込み、3Rにはゴンサレスに連打の嵐を見舞います。
はっきり優勢を示したこのラウンド…あきらかにゴンサレスは手を焼きます。

しかしゴンサレスのセコンドには名参謀イグナシオ・ベリスタイン(メキシコ)
すぐに立て直し、距離を詰めてくるジョングに逆に連打を撃ち込み始めます。

ミドルレンジも、インファイトでも上回り始めるゴンサレス。
1年以上のブランクが効いたか、ジョングの詰めるスピードにはそれほど勢いが感じられず。

ジョングは選択肢を無くしてしまい…最終ラウンドまでコリアンファイトを継続。
そのまま試合終了のゴングを聞きます。

この試合ではっきりポイントを取れたのは3Rのみ。
大差判定で敗北してしまいます。
ジョングにとっては世界初挑戦でサパタに敗れて以来、実に20戦、7年ぶりの黒星となりました。
 
 

過去のレジェンドを完ぺきに葬った勝者ウンベルト・ゴンサレス。
この試合をきっかけにメキシコ国内での名声を高めていきます。

かたや敗北者ジョング…ここで引退したいところですが、とにかく稼がなければならない。
9ヶ月後に再起すると、その2カ月後には1階級上のWBC世界フライ級王座に挑みます。
君臨する王者は、ジャブの名手「タイの若き天才」ソット・チタラダ(タイ)

かつてライトフライ級の王座を賭けて戦った二人が、
王者と挑戦者の立場を入れ替え、フライ級のリングで6年半の歳月を経てぶつかります。
 

序盤こそ、お互いに距離を取って様子見していましたが、
サークリングを描くジャブの名手ソットに対し、
強引に距離を詰め始めるジョング。

足で捌ききれなくなると、ソットはクリンチ、プッシング、ホールディング…
あらゆる手段でジョングを抑え込もうと試み、ボディを中心に反撃。

ブランクの影響か、ゴンサレス戦から下肢に衰えを見せていたジョング、
防衛を続けていた時期に比べると、クリンチを強引に振りほどくことができず…。
頭から飛び込んでガチャガチャ…しか選択肢が無く。

両者の意地と熱とこれまでのキャリアが絡み合ったグチャグチャの撃ち合い。
レスリング行為も頻発し、泥試合とも言えてしまう一戦。

お互いにスピードに陰りが見えていることは否定しづらいですが、
その中身は、レジェンド同士の、技術や経験を越えた気持ちのぶつかり合い。
そんな熱戦でした。

判定がどう転んでもおかしくないクロスゲーム。
結果は2-0の判定でソットが勝利。
 

またも再冠ならなかったジョング。
限界説も噂され、再度の引退がクローズアップされます。
 

しかし、この試合があまりのクロスゲームだった為にWBCから再戦が命じられ…。
ジョングは最後の挑戦に歩みを進めていきます…。
 

次回はそんなジョングのラスト。
 

それでは、また明後日…。
 
 

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