日本王座 小林 タカヤス(川島)③ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/03/27
さて、本日は小林 タカヤス(川島)のピックアップ3日目。
6回戦初勝利以降怒涛の11連勝を飾り、
チャンピオンカーニバル前に世界ランカーを討ち破り、日本ランキング1位を手に入れた小林。
さて、この当時、日本フライ級王座にいたのは、のちの世界王者 清水 智信(金子)。
小林と同じく福井県出身。
挑戦が実現すれば同郷対決となる二人は、福井のメディアで特集されるように…。
チャンピオンカーニバルのカード発表間近だったこともあり、
当然ランキング1位を射止めた小林も候補として名前が挙がります。
徐々に期待値の高まった二人の対戦は、実際にこのチャンピオンカーニバルで実現。
相手の清水は、この試合の1年半前に内藤 大助(宮田)の持つWBC世界フライ級王座に挑戦しての善戦を経験。
ポイントでリードしながら、終盤10Rに逆転のKO負けを許してしまった試合から見ても、
この時点で充分世界王者クラスと言える相手。
見る限り、この試合の清水はその時よりもレベルアップしているように感じます。
軽量級の日本王座はいつだってハイクオリティ。
前戦で世界ランクを手に入れていた小林にとってもその壁は高く、
世界ランカー対決ともなったこの試合では清水有利予想が多かったと記憶しています。
川島ジム初の王座獲得に挑む小林。
…しかし、そんな一大決戦の1カ月前、小林をアクシデントが襲います。
スパーリングの最中、負傷を負ってしまいます。
早めの減量が祟り、もろくなってしまっていたことで負ってしまった負傷。
パンチをもらえばどうなるか?
負傷の影響はどれだけあるか?
試合をキャンセルしようと考えましたが、川島ジムはまだ日本王者の出ていない小さなジム。
「もうチャンスは巡って来ないかも知れない」
傷の癒えぬまま試合に挑むことを決意。
プロデビュー前の小林を語った文章をもう一度。
———
彼は固めた決意を拳に刻みます。
「OATH」
何事にも中途半端だった自分への”誓い”の意味。
———
彼の固めた決意は、その頃と何も変わっていない。
誓いを果たすためのリングへと向かいます。
試合開始のゴングが鳴ると…いきなりのアクシデント。
しょっぱなから両者の頭が強烈に衝突。
小林の傷からは大量の出血。
清水はしゃがみ込むダメージ。
「あっ」と声が出てしまう状況。
レフリーも何が起こったかその瞬間をはっきり把握しきれず、清水に対してカウントをとろうとするも訂正。
幸い試合は再開されますが…止められてしまえば、清水の負傷引分防衛となるこの試合、
序盤から一気に情勢は小林不利に。
目のトラブルを抱え、距離を完全に支配される展開に。
小林は升田戦で見せたように…ただ前へ前へ…。
2Rには右に右を合わせらた強烈なカウンターを決められ、小林がダウン。
失神していておかしくなかった程のタイミングと角度でもらったパンチ。
しかし、これほど綺麗に決められたうえで立ち上がった小林は、確信を深めます。
相手のパンチは怖くない。
この後、試合を一方的に支配されてジャブを何度も何度も撃ち込まれますが、止まらない小林。
効いていない…怖くない…。
虎視眈々と逆転の一撃を撃ち込むための歩みを進める小林。
そんな展開に突然、レフリーが割って入ります。
7R…突然のレフリーストップ。
レフリーにつかまり、必死に叫ぶ小林。
「全く効かないしバッティングで血が出ているだけだ!なんで止めるんだ!」
このとき、客席にいた僕は…試合を止めてほしいと思っていました。
試合前の怪我も、効いていないことも知らない自分。
傍目には大量の出血を抱えながら、清水の左を被弾し続ける小林…と見えており…。
レフリーのストップは妥当なものに思えたのです。
しかし、ストップの瞬間叫び散らし、その後コーナーで大きなタオルをかぶせられた小林を見て
なんとも言えない無情さを感じ…。
試合後に煙草を吸いながら、同じような顔をしたファンと、
「今日の小林は忘れられないね…」なんて話をしたのを思い出します。
同時に、こんなに感情を揺さぶられる場所を、僕は後楽園以外に知らないな…とも感じていました。
この試合…一方的に清水選手が勝ったと語られることが多く。
あまりにも被弾の多かった小林を、効かされていた…と見ている試合評も多くあります。
当然ほとんどのファンは小林の怪我をしらないわけで…。
同時に、清水に対して「パンチが効いていない」と手ごたえを得ていた小林を知る術もなく…。
この事実を知って、自分を含むファンの見立てなんて、本当にアテにならないな…と。
ただし、僕たちに見えていないドラマも多分にある。
それは、いつものことだったりもします。
さて、日本王座挑戦に失敗した小林。
再度日本王座を目指し、次戦では優勝すれば王座挑戦権が獲得できる…
最強後楽園へ出場します。
日本ランカーたちがトーナメントで戦い、優勝者は日本王座に挑戦できる。
古くからあるA級トーナメントが名称や形を変えてこの大会へとなった形です。
いつ王座を獲得してもおかしくない強者たちがつぶし合う…。
サバイバルマッチの要素が極まったようなトーナメント。
準決勝では当時無敗を誇っていたホープ林 徹磨(セレス)と激突。
前半距離を取って戦うも3Rからは距離を詰めてボディを攻めて出る小林。
林のハンドスピードが勝るが、お互いに前へ進む押し合いの中で展開された激戦。
小林のボディが有効に作用し、全て1P差の2-1で際どく勝利したこの試合。
あまりにも拮抗した試合内容、判定を聞いた林はコーナーで崩れ落ちるように悔しさをあらわにします。
ホープをなんとか退け決勝進出。
決勝には前日本フライ級王者、世界ランクも3位まで登りつめたことのある吉田 拳畤(ワタナベ)。
この吉田は後楽園の名物男。
何が名物って…
後楽園きってのラフファイター。
彼の名誉の為にも言いますが、僕は好きですよ。
ここまでやれる選手もなかなかいないですし…。
バッティング、ラビットパンチ、オープンブローに引き倒し、ヨシケンワールドなんて言われるほどで…。
しかしですね、こういった選手を排除してしまえば…そんな選手は世界にヤマといるはずなわけで。
彼の乱戦にどう対応するかって言うのは、その選手が世界へ飛び出していく上で非常に参考になるわけで…。
この試合でも…やはりヨシケンワールドは全開。
3Rには偶然のバッティングにより、両者がカット。
このあたりから、小林は吉田の土俵にズルズルと引き込まれ始めます。
クリンチとバッティングが頻発し…4Rには小林が大量出血。
採点もなかなか難しい試合ですが、試合は5Rにストップされ…。
判定は…1-1(47-49、49-48、48-48)。
ドローとなりますが、試合は最強後楽園決勝。
優勢点で優勝者が決められることに。
この優勢点を勝ち取ったのは小林。
これにより最強後楽園フライ級の優勝者として清水への再挑戦の権利を手に入れます。
ここから先まで進むとなかなか長くなりそうなので、今日は一旦ここでキリ。
次回、小林が2度目の日本王座へ挑むところから。
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