傍若無人 クレイジー・キム(ヨネクラ)③ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/01/29
本日のピックアップはクレイジー・キム(ヨネクラ)の三日目。
この頃は本名のまま戦っていた「金山 俊治」がスーパーウェルター級の
日本王座とOPBF王座を統一したところから。
続いては日本王座の防衛戦。
挑戦者はのちにOPBF東洋太平洋王座を2階級に渡って制覇する飛天 かずひこ(野口)
(この頃は日高 和彦(新日本木村))。
ディフェンスに弱点があり、強打に頼りすぎて攻撃が単発に終わりがちな、
ハードパンチャーによくあるタイプの日高。
3Rには自慢の強打で金山をぐらつかせますが…。
8Rにプレシャーに押しつぶされるようにラッシュに飲み込まれ…
スタンディングダウンを奪われそのままカウントアウト。
金山、2度目の防衛をKOで飾ります。
この試合後、金山 俊治はリングネームをクレイジー・キムに変更。
自分が在日韓国人であることを公表します。
「狂ったんだよ!。(世の中)みんなバカばっかりだから、オレの方が狂っちゃったの!」との名言と共に…。
試合のポスターはエロ本風に…、試合前のコメントでは対戦相手をバッキバキにけなし…。
金山…いったいどうした…と言いたくなるようなクレイジーっぷりを振りまきます。
3度目の防衛戦では5位の新屋敷 幸春(沖縄ワールドリング)が挑戦者。
チャンピオンカーニバルなので通常は1位か2位か…ですが、
対戦を避けられたのか、マッチメイクがうまくいかなかったのか…。
4Rと5Rに2度ずつダウンを奪い、5RTKO。
実力差を見せつけます。
この試合後、クレイジー・キムと化した金山が吠えます。
「大東に勝ったら、カスティジェホ(当時のWBC世界スーパーウェルター級王者)に勝って、
デラホーヤとやって引退する。」
後楽園…失笑。
デラホーヤとやれるわけがないよ…って。
確かにそうなんですが、この失笑が次第に盛り上がりになってくんです。
このコメントはクレイジーキムの序章。
4度目の防衛戦。
日本王座決定戦で勝利した石田 順裕(グリーンツダ)との再戦です。
この試合も前回と同じく、アウトボックスしようとする石田に対し、
しつこくボディを叩きに行くキム。
前回と違うのは、石田が失速しないこと。
しかし、キムももう経験豊富なベテラン。
罠を張ったんですね。
前回と同じ展開に持ち込んで勝とうとしているクレイジー・キムを演出し、
その実はボディに意識を集中させておいて、上で刈り取る。
6R終盤、そのシーンが訪れます。
ボディ撃ちのフェイントから、突如顔面に向けて右を振り抜くキム。
完璧にもらってしまった石田が大ダメージのダウン。
17分以上しつこくボディを叩いて伏線を張っておいて、狙い澄ましたパンチで決めてしまう。
キムの技術の高さを感じます。
しかしダメージは深いものの立ちあがってきた石田。
回復の為に距離を取る石田は巧くキムをいなし、フィニッシュを決めに来るキムをあしらいきってしまいます。
なんとかKOを免れた石田、最終ラウンドまでダメージを抱えながらも攻め手を休めることなくゴング。
結局判定は3-0(96-94 96-95 95-94)でキム。
ダウンを奪っていなければ、良くて引分の点差。
大接戦に勝利を収めます。
さぁ、ここでしばらく放置してました、OPBF東洋太平洋王座の防衛戦。
アデ・アルフォンス(インドネシア)を相手に1Rからダウンを奪い4RKO。
語るところがないくらいの圧勝。
傷一つない顔でリングを降りるクレイジー・キム、ちょっと物足りないくらいの相手でした。
さぁ、日本王座5度目の防衛戦です。
相手は国内3階級制覇を達成した前田 宏行(角海老宝石)。
「前田?雑魚じゃねぇか。そんなヤツ誰も知らねぇよ。」
「こんな島国で3階級制覇したからって、いったい何がどうなるんだ?」
…なんていつものコキおろし。
試合は1Rから仕掛けたキムに前田が応戦。
キムは右のロングフックを軸に連打を撃ち込み、完全に前田を後手に追い込みます。
右フックから左のフォローの流れで2度のダウンを奪取。
2Rも右フックから左のフォローでダウンを奪うと、
左でグラついた前田をレフリーが助け出しTKO勝利。
試合後のインタビューでは会長に向かって吠えます。
「どうせオレなんてよ、世界なんてやれやしねぇんだよ。こんなくだらねぇ試合、いつまでやらせんだよ。」
欧米中心の群雄割拠のスーパーウェルター級、アジアの島国が割って入るチャンスなんてなかなか無かった。
それどころか世界ランカーと対戦するのも難しい…。
ボクサーのピークは早い。
この時点でキムは29歳。
ジムの先輩に西澤 ヨシノリ(ヨネクラ)って選手がいまして…。
38歳でようやく世界初挑戦したミドル級の選手。
完全にピークを過ぎ去っての世界挑戦。
それでも世界王者からダウンを奪う健闘。
結局は5RTKOで敗れ、王座は手に入りませんでしたが…
そんな先輩の姿も見てきているわけです。
千載一遇のわずかなチャンスによっぽどの大金を積まない限り、
中量級の世界王者は日本になんて来てくれない。
向こうが興味を持って挑戦者として呼んでもらうか、指名挑戦者になれるまでランキングを上げていくか…
考えてみれば、突然のヒールキャラへの転身も、自身が人気を獲得すれば、
世界へのチャンスが拡がるから…なのかもしれません。
この階級で世界を獲るには金が要ります。
金を集めるには人気選手になって、TVの放映権料等の興行収入が一番手っ取り早い。
しかし振り切りすぎたそのキャラクターは、後楽園に足しげく通うボクシングファンを虜にしたものの、
メディアはなかなか扱ってくれず…。
のちには「世界チャンピオンになったら、今までずっと無視しやがったマスコミとか、世間の連中とか、
オレは絶対に許さねぇからな。」なんて言葉を吐き捨ててます。
そんなこんなでなかなか世界に繋がる道が見つからない。
そこで、キムは強硬手段に出ます。
JBCが認めている地域王座はOPBF東洋太平洋のみ。
それ以外の地域王座は不認可なんですね。
ちなみにOPBFはWBC傘下の団体。
獲得すればWBC15位のランキングがもらえます。
同じようにWBC傘下の団体がいくつかありまして…そのうちの一つ、
ABCO(WBCアジア)のベルトを奪いに行くわけです。
獲得できれば、傘下団体王座の獲得なので、確実にWBCのランキングを上げてもらえます。
相手はジャイペット・キャットムアンカーン(タイ)。
王座空位の為、王座決定戦としてこの試合に挑んだ両者。
JBC不認可タイトルの為、キムは敵地タイに乗り込み1RTKOで王座を獲得。
地元判定だとかになる余地もなく、KO勝利で圧勝します。
次の防衛戦には、ランキング1位、薬物中毒を乗り越え、元暴力団からプロボクサーに転身した
人気ボクサー、川崎 タツキ(草加有沢)を迎えます。
メディアへの露出も多かった川崎。
キム側は客が喜ぶカードを実現させて、少しでも早く世界へ…と。
この試合は川崎タツキを追ったドキュメントでも扱われ、対戦相手のキムにもTVカメラが向けられました。
完全にヒールに徹したクレイジー・キム…。
「何で俺がシャブ中とやんなきゃなんねんだよ!」
「あんなザコ、ボコボコにしてやる」
「明日、シャブ中、ぶち殺せばいいんでしょ?」
「こんな試合を見たいなんて、おまえら偽善者」
「血圧上がっから消えてくれ」
…罵詈雑言の嵐。
当日の後楽園は川崎側の応援団がピリピリ…。
これ以上ない殺伐とした空気の中、序盤を慎重に進めたキムが、4Rにダウンを奪うと、
優勢に試合を進めて8RKO。
試合後は「どうせまた次も次も防衛戦なんでしょ?もう辞めだよ!」と吐き捨てます。
次の試合は保持するABCOとOPBFの二つのベルトを賭けて、デー・バイラ(韓)を挑戦者に迎えます。
この選手、韓国を主戦場にするモンゴル人選手。
本来、オセアニアの強豪、ダニエル・ゲール(豪)を迎えて行われるはずだったんですが、
ゲール側が試合をキャンセル。
このダニエル・ゲール…のちにミドル級でWBAとIBFの統一世界王者になる選手。
OPBFなんかにかまっていられない…と、さっさと別の地域王座を獲りに行ってしまいます。
キム…千載一遇のチャンスをつかみ損ないます。
バイラとの試合は左を軸に距離をとり、ジワジワ追い詰めて9RTKO。
前戦の川崎戦から、世界を意識したのか堅実な試合運びになって来ました。
次の試合、ここまで来てようやく念願の世界ランカーの招聘に成功します。
相手はWBA世界スーパーウェルター級8位のハビエル・アルベルト・ママニ(亜)
シャープで鋭いコンビネーションを操るカウンター・パンチャー。
今日も長くなって来ちゃったのでここまで。
キムファンなら誰もが知るこの試合。
明後日に持ち越します。
ってなわけで…
ファッキュー!デラホーヤ!
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