強くなりすぎた宿敵 ドワイト・ムハマド・カウイ(米)⑮ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/08/13
ドワイト・ムハマド・カウイ(米)、15日目。
前回はオジー・オカシオ(プエルトリコ)に議論を呼ぶ判定負けを喫し、リー・ロイ・マーフィー(米)に圧勝。
元世界王者対決を2度こなし、世界再挑戦のチャンスを手に入れたところまで。
相手は自身からベルトを奪いそれを3度防衛、さらにリッキー・パーキー(米)からIBFのベルトまで奪い、
2団体統一クルーザー級王者となっていたイベンダー・ホリフィールド(米)。
リベンジマッチとなります。
1Rのゴングが鳴ると…完璧に距離を支配するホリフィールド。
カウイのパンチが届かない距離からロングレンジのパンチを撃ち込んでいく。
カウイの入り際にアッパーを合わせ、ストレートにカウンターを合わせる。
ほとんどのボクサーがカウイに対して試みようとしたアウトボクシング。
…その完璧な形をかつてカウイにアウトボクシングで勝利したマイケル・スピンクス(米)以上に体現する。
前回戦った頃、まだホリフィールドはわずか12戦目。
しかし世界の舞台で磨かれたホリフィールドは、17戦目となるこの試合…。
格段に強くなっていました。
2Rが始まると…カウイが積み重ねた技術で対抗し始めます。
カウイが強くなりすぎたホリフィールドに対抗できるとすれば経験のみ。
ホリフィールドが撃とうと踏み込んだ瞬間を狙って伸びるジャブを上下に差し込む。
次第に距離は詰まり始め…カウイが撃ち合える展開に…
しかし…のちにヘビー級を牽引することになるホリフィールド。
パンチ力も破格…撃ち合いで捕まったのは…カウイの方。
ラウンド終盤、ラッシュを浴びて頭に来たか、カウイはパンチが大ぶりになり、
さらに2R終了のゴング後も攻撃を辞めず、レフリーが必死に割って入る。
3R、ロングレンジで右のクロスとジャブで対抗し、素早く懐に入って連打を叩きこんだカウイ。
しかし、ホリフィールドはその全てをガードとボディーワークでいなす。
そのままインファイトを辞さずに、真っ向からカウイと撃ち合う。
次第に体格差で押し込まれてしまうカウイ。
まさに完璧なボクサーとしてカウイに対峙するホリフィールド。
カウイの右ストレートが時折カウンターで突き刺さってもびくともしない。
逆にカウイの出すパンチ一つ一つにカウンターを合わせ始めたホリフィールド。
4Rにはカウイの右フックに右フックを合わせて甚大なダメージを与えると。
今度はカウイの右ストレートに左フック、追撃の右ストレートでカウイは尻もちをつくダウン。
なんとか立ちあがったカウイ…
しかし、右フックのタイミングは完璧につかまれており…
再開後、カウイが右フックを振るとホリフィールドの右フックが突き刺さる。
大砲に合わせた大砲…2度の強烈なヒットでカウイが崩れ落ちる。
レフリーはカウントを途中で辞めて両手をクロス。
カウイ…初めてとも言える完璧なまでの敗北。
クルーザー級のホリフィールド…その強さは驚異的。
ここからまた再起してクルーザー級を狙うか…引退か…と思われたカウイ…。
ここでなんとヘビー級のリングで再起します。
しかも相手は超ビッグネーム。
ジョージ・フォアマン(米)。
モハメド・アリ(米)のライバルとして一時代のスターとなったフォアマン。
10年振りにカムバックし、ここまで7連続KO勝利。
年齢39歳、当時のボクシング界では超ロートル。
しかしながら、さらに歳を重ねたこの6年半後には奇跡の世界ヘビー級王座返り咲きを見せる選手。
カウイはライトヘビー級とクルーザー級を制したとは言え、そのクラスは不人気階級。
この二階級の価値を高めたと言われるカウイでも、アリのライバル、フォアマンと比べれば、その名前の差は圧倒的。
当時、フォアマンは「気まぐれで復帰した昔の名ボクサー」と見られており…
カウイにとっては「さらに名を挙げるチャンス」と見られます。
一回り体の大きくなったカウイ。
1Rから一気に攻めて出て、数々の強打をヒットしていく…。
しかしその強打にビクともしないフォアマン。
既に衰え、コンビネーションが陰りきってしまったフォアマンに対し、
スピードと技術ではではカウイの方が上…ヒット数で圧倒的に上回る。
2Rに入ると、打撃音の全く違うフォアマンのパンチがカウイに襲いかかる。
撃っても撃っても下がらないフォアマンが強烈なパンチを効かせる。
一撃で展開を変えられてしまい、一気に劣勢に陥るカウイ。
特にこのラウンド中盤に右ストレートに右フックを合わせられたのはかなり効いたよう。
フォアマンの返しの左フックもモロに被弾してしまい…ここから手が出ず…。
ただでさえリーチの短いカウイが自ら下がってしまう。
ここでカウイはロープの上段と2段目から体を出して狡猾にエスケープ。
逆に残り30秒、強烈な左のロングフックを撃ち込むと、初めてフォアマンが揺れる。
左右フックの連打で攻め立てて攻勢を印象付けるも、フォアマンのボディ一撃でカウイは下がり始める。
そんなところでこのラウンドは終了。
3R、またも左右フックで攻め立てたカウイ…
しかし、長い弧を描いたフォアマン撃ち降ろしが、カウイの左わき腹を捉える。
一瞬間を置いて崩れ落ちるカウイ…しかしこのとき、後頭部を抑えながら…
まるでラビットパンチをもらったかのような格好…。
レフリーはダウンを獲らず…。
勝ちに執着するカウイを感じるシーン。
試合再開後、コーナーに追いつめられるカウイ。
しかしカウイは反撃の左右フックを振るいだす。
このフックをいくつも被弾するフォアマン、全く対応できておらず。
4Rに入ると、フォアマンが丁寧にカウイのパンチをブロックしていく。
守勢に意識を置いたフォアマンに対して攻めていくカウイ。
このラウンド後半に入ってくるとまたもカウイが左右のフックでフォアマンを捉えていく。
フォアマンは休みにかかったのか…手数が一気に減ってしまう。
5R以降はフォアマンがジャブを突きながら攻めて出る。
ウィービングするカウイに、ワンツーや下から顎をえぐりだすようなスマッシュを突き刺す。
カウイは飛び込みながらの左フックに手ごたえを感じたか、その手の強打をいくつも叩き込む。
6R、強打の差は大きく、カウイは次第にダメージを溜め込んでいく。
すれ違いざまに放ったフォアマンの左アッパーで前のめりに崩れ落ちるカウイ。
カウイを仕留めたことを確信し、追撃の拳を止めて背を向けるフォアマン…。
しかし強靭な精神力で、寸でのところで踏みとどまると、背中を向けたフォアマンを急襲。
イベンダー・ホリフィールド(米)戦で見せた効いたふりか?
しかし同じラウンド、右の撃ち降ろしから左アッパーをもらって後ろ向きに崩れる。
ここはロープにバウンドし、なんとかダウンを拒否。
溜めこんだダメージが本物であることが証明される…。
撃っても撃っても効かないタフネスの差。
一撃で試合をひっくり返される強打の差…。
溜め込みすぎたダメージ…。
7R、突然カウイの心が折れる。
試合の最中、背中を見せてコーナーへ向かって歩き始めるカウイ。
戦意を喪失したカウイにレフリーが試合をストップ。
鳴り響くブーイング…完膚無き敗北。
まだまだ可能性のありそうにも見えた試合、
実際に向かい合っていたカウイは、成す術なしと感じていたのか…。
向かい合った二人の情報量は、見ているものより圧倒的に多い。
この試合を勝ち取ったフォアマンは連勝街道を走り続け、
45歳にして奇跡の世界ヘビー級を再獲得を果たすこととなります。
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