憧れ 北川 仁暉(唯心)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2020/04/01

憧れ 北川 仁暉(唯心)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2020/04/01
 
 

 

2019年、北川 仁暉(唯心)はウェルター級の新人王トーナメントにエントリー。
準決勝からの登場となり、村田 望(岐阜ヨコゼキ)と対峙することとなった。

村田は2戦2敗だが、威力ある左ボディが魅力的、
そして独特のタイミングでやって来る右がやっかいな選手でもある。
 

4月28日
試合開始から静かに駆け引きが始まった試合。
ワンテンポ遅れて飛んでくる村田の右が、クロスカウンターとなって突き刺さる。
北川…いきなり痛烈なダウン。

4回戦でのマイナス2Pは大きい…しかし、ここから冷静に仕切り直した北川。
2R以降は、ボディの叩き合いとなっていく。

ファイトの中で、北川はガードの外から周りこむ左右フックを幾度も見せる。
この日も、また新しいものを得て来たか…。
お互い譲らぬ拮抗した展開の中、試合は判定までもつれ込む。
 

2R以降はどちらにポイントが付いてもおかしくなかった試合。
ジャッジはダウンポイント分、村田についての38-37×3。
勝利者インタビューで村田は「負けたと思った」と口にしている。

初回にダウンを奪われながら接戦に持ち込んだ北川。
しかしながら…あと僅かに勝利には届かなかった。
 
 

それから5か月後の9月15日。
北川は技巧派の高畠 愛大(タキザワ)と対峙していた。

スピード差の中、距離を掌握され、なかなか手が返せない立ち上がり。
2Rに入ると、北川は貰いながらボディを返して状況の打開を図る。
3R終盤に入って展開が落ち着くと、ようやく上にもパンチを返せるようになった北川だったが
最終ラウンドはボディに合わせた高畠の左フックを何度も何度も強烈に被弾。

ハッキリと主導権を握られたまま試合を終え、0-3の判定負けとなった。
 

1Rが終わった時点、力の差が大きいと感じた試合。
しかし、撃たれ弱いはずだった北川は、高畠のパンチを耐えながら
上に当たらぬならと、下へ下へパンチを集め、少しずつ少しずつ
その差を縮めようともがいていった。

試合自体は完敗の内容…しかしそこには、もがき苦しみながら
勝利への可能性を少しでも上げようとする北川の姿があった。
 
 

年が明けて2020年。

2月22日
西日本から三重の市野ジムへ移籍してきた原田 大輝(市野)が対戦相手。

1R中盤、原田の右ストレートでロープまで吹っ飛んだ北川。
原田が一気に詰めたところ…これまでなら飲み込まれていてもおかしくない場面。
北川が右ストレートで捉え返してみせる。
さらに、このラウンド終盤にはコンビネーションで原田を捉える。

足を使って丁寧にジャブを突き、距離が詰まればしっかりと撃ち合う。
2R終盤にも原田が北川を飲み込みかけるシーンが訪れるが、
ここもしっかりと手を返して窮地を逃れた北川。

試合が後半に入ると、グイグイ出てくる原田に対し、
下がりながらも手数を多く出し、撃ち終わりをしっかり捉えてヒットでも上回る。

押し込もうとする原田に対し、丁寧にボディから上へと返し、
激しく撃ち合う中でも、北川がしっかりと強烈に捉えるシーンを作って試合終了。
 

マイジャッジは39-37で北川

しかし、判定は0-1のドロー。
前に出続けた原田のアグレッシブが試合をドローに持ち込んだようにも見えた試合。

勝っていておかしくなかった試合だったが…
昨年あたりから感じるアグレッシブが強く獲られる傾向を考えれば
原田の勝ちについてもおかしくはない試合。

またも…ほんの僅かに勝利に届かなかった北川。
しかし、この試合はこれまでのベストパフォーマンスにも感じられた。
 
 

ここまでの戦績、7戦1勝(1KO)4敗2分。
撃たれ弱さから後半を失ったデビュー当初。
そこから試行錯誤で様々なものを克服しながら、大幅階級増のビックチャレンジの末に勝ち取った初勝利。
…しかし、そこらか強さを増しながらではあるが、また勝利は遠のいてしまっている。
 
 

ある日の休日、映像で井上 尚弥(大橋)の試合を見ていたときのこと。
あまりの強さ、あまりのカッコよさに、彼を同じ人間だとは
思えないような感覚になっていることに気付いた。

その圧倒的な強さには吸い込まれるように惹きつけられる…。
でも、自己投影はできない…どこか遠い世界の住人。

自分の抱いた感覚を、なんとなく自分自身で受け入れられずに、
フラフラと外に出て煙草をふかしていると、なぜか北川の顔が浮かんでくる。

「あぁ…そうか、俺は北川だ。」
 

上手くいくことなんてそれ程多くない。
何かの才能に恵まれなかったと思える自分にとっては、
北川というボクサーが自己投影の対象なんだと気付いた。

ああしてもダメ、こうしてもダメ…それでもそれを繰り返すうちに、たまに上手くいく。
あきらめずに試行錯誤して、失敗を繰り返しながら、折れそうな心に歯を食いしばって挑んで行く。
負けてリングの上で泣き散らかそうが、それでもまたリングに上がる。

自分が何かを成そうとするなら、北川のボクシングのように生きていくしかない。
 

決してタフなわけでもなく、足りないモノだらけ。
それを補うように、練習で手に入れたものを丁寧に丁寧にリングの中で吐き出していく。
一つ一つ、あの手この手で様々なものを克服し、もがき、あがき、ようやく初勝利を手に入れた。

しかし、またそこから連敗…。
頑張って頑張って、一歩進んでは後退し、それでも前に進んで行こうとする。
そんな北川を見て、自分の人生もこうでありたいと思う。
 
 

今年の新人王戦にはウェルター級でエントリーしている北川。
初戦では、僕が優勝候補に挙げている中村 力也(とよはし)と対決する。
連打の回転がいい中村は、北川にとっては相性的にも良くない相手と思える。

しかし、どんな局面になっても、きっと北川はあの手この手で試行錯誤して立ち向かっていく。
 
 

僕の憧れのボクサー 北川 仁暉。

彼は今、中日本のリングで、とてつもなく色の濃いドラマを描いている。
 
 

 

【カテゴリ別】
2020年選手紹介一覧に戻る

選手紹介一覧に戻る

カテゴリ別記事一覧に戻る
 
 

【日付別】
【記事一覧】2020年4月に戻る

【記事一覧】2020年に戻る

【記事一覧】に戻る
 
 

各選手の戦績はこちら。
ボクシング選手名鑑
 
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました