世界獲得へ… レパード 玉熊(国際)③ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2015/11/01
さて、昨日はレパード 玉熊(国際)が2度目の世界挑戦を手に入れたところまででした。
今日は玉熊の世界王座獲得から引退まで…一気に行っちゃいます。
この間のフライ級のWBA世界フライ級のベルトの動きは↓こんな感じ。
①玉熊の初挑戦の夢を破ったキム・ヨンガン(韓)は、ヘスス・ロハス(ベネズエラ)に敗れて陥落。
②ライトフライ級でウンベルト・ゴンサレス(メキシコ)にベルトを奪われたイ・ヨルウ(韓)が階級を上げ、
2階級制覇を目指してフライ級へ進出。
③イ・ヨルウが、前王者のキム・ヨンガンを破って同国対決を制する。
これが事実上の挑戦者決定戦。
④ヘスス・ロハスの王座にイ・ヨルウが挑戦。際どい判定でヨルウが2階級制覇を達成。
この時点で既に、日本人の世界戦連敗記録は大橋 秀行(ヨネクラ)が終止符を打っています。
日本ボクシング史に残る、後楽園の万歳コールですね。
念願のベルトが手に入って日本のボクシング熱は落ち着くと思いきや、
大橋戦の熱狂がそのままこの試合に持ち込まれたような日韓戦。
レパード 玉熊のボクシング劇場とも言うべき試合がこの試合。
スピードがあってテクニックが日本ボクシング史上で屈指と言えば、
誰もがアウトボクサーをイメージしますが、玉熊はインファイター。
近距離でディフェンス技術を駆使しながら、回転の速い連打を撃ち込んでいく…。
パンチの無さを自覚したうえでのインファイトが玉熊のボクシング。
強打の王者とインファイトで撃ち合う玉熊。
強烈なボディブローを鍛え抜いた腹筋で受け止め、インファイトでは不利になるはずの相手より長いリーチを
うまく畳んで内側からショートを集めます。
1Rこそ玉熊に撃ち勝った王者。2R以降パンチを見切られ始めます。
5R~6Rには勝負をかけますが、頭がぶつかる近い距離にも関わらず、
顔を狙ったパンチはすべて外され、撃っても撃ってもボディしか当たらない。
それどころか出すパンチ出すパンチ、選んでカウンターを合わされます。なす術なく消耗しきっていく王者。
10R、王者はひたすら細かい連打を撃たれ続け、意識はあるままイヤ倒れ…。
立ち上がるものの、やはり玉熊の連打にさらされ、最後は何が当たったかわからないような状態で
しゃがみ込んでしまいます。
「もう勘弁してくれ…」って声が聞こえて来そうなダウン。
戦意喪失気味の王者、そのままレフリーが試合を止めて、レパード 玉熊の10RTKO勝ち。
念願のベルトを手に入れ、ねぶた祭りで凱旋パレード、青森市民栄誉賞、荒川区民栄誉賞。
今日じゃ世界のベルト手に入れてもここまではフィーバーしないですよね。
当時、世界王者になるってことはまさに人生が一気に変わるような出来事だったんですね。
小堀 佑介(角海老宝石)がドン・キングと契約したばっかりに、
世界王者になって貧窮したってエピソードが信じられないほど…。
そんな玉熊絶頂期の中、初防衛戦。
実はこの試合の前に大橋がベルトを手放しており、日本国内のベルトは玉熊持つの1本のみ。
それはそれはメディアの煽りようがハンパ無かった。
迎えたのはヘスス・ロハス。
前回玉熊が破ったイ・ヨルウの一つ前の王者なんですが…イ・ヨルウにベルトを奪われた試合が実は圧巻。
ロハスは4Rに右肩を脱臼…左手一本で戦い、12R判定で敗れはしましたが、1-2のスプリットデジジョン…。
運悪くベルトを手放したものの実は超のつく実力者。
試合が始まるとプッシング、ホールディングを交えてジワジワと玉熊を消耗させ、
左半身がレフリーの死角に入ると玉熊の右腕を抱えてボディを叩く。
ゴングが鳴ってもレフリーが止めるまでパンチを止めず。
オーソドックスとサウスポーが戦うとき、前に出した足同士がぶつかることはよくあるんですが、
この足がぶつかるときにね、上にある…つまり踏んでしまう側になるのはいつもロハス。
とにかくしたたか、綺麗事抜きにベルトを獲りに来るんですね。
国際ジムから初めて世界のベルトを手にしたロイヤル 小林(国際)の名言
「正々堂々、スポーツマンシップは夢物語。勝つために何でもするのがプロ」
これを地でいくボクサーなんですね。
ロハスは1Rから撃ち負けても撃ち負けても接近戦を選択。
体全体を玉熊に押しつけてロープ際まで押し込み、そのまま全体重を預けたインファイト。
玉熊の体力を奪うことに徹底します。
鍛え上げた自信からボディを捨てるスタイルの玉熊に対し、派手にボディを叩き込むロハス。
際どいラウンドはこのボディでポイントを持っていきます。
実際に撃ち勝っているのは玉熊でも、ポイントはロハスに転ぶ…。
そんなラウンドが何ラウンドあったんでしょう…。
ロハスの誤算は、玉熊がボディをどれだけ積み重ねても、どれだけ押し合いをしても消耗しなかったこと。
見る人によっては玉熊圧勝にも見えそうなこの試合、判定はドローで引分け防衛。
玉熊、曲者挑戦者をなんとか退けます。
ドロー防衛ながら、日本に1本しかないベルトを死守したことで、玉熊は国内の救世主扱い。
この2週間後に結婚。そして次の防衛戦までの間には長男が誕生。
ベルトを保持している間、彼の絶頂期は続くわけです。
そして迎えた2度目の防衛戦。
エルビス・アルバレス(コロンビア)を迎えます。
この選手、強打が売りなんですが、イ・ヨルウとは全く別のタイプ。
イ・ヨルウは頭からガンガン詰めてきて密着した乱打戦に持ち込むタイプ。
アルバレスは飛び込みざまにスピードに乗った強打を放り込むタイプ。
この試合、アルバレスはいつもなら強打を放り込む為のスピードを
リングをサークリングすることに費やし、ヒットアンドアウェイを展開します。
近距離のショート連打を出させないよう、中間距離から飛び込みざまにロングパンチを放り込む作戦でした。
4R、突然右目を気にし出す玉熊。
自らロープを背にしてアルバレスを誘いますが、誘いに乗らないアルバレス。
このあたりから突如、アルバレスの飛び込んで撃つパンチがバシバシ当たり始めます。
中間距離を制された玉熊…近距離での撃ち合いでもスピード負けし、打つ手がなくなります。
時折タイミングのいい強打を返しますが、1発の強打に3発の強打を入れられるような状況。
7R後半、KOを狙って距離を詰めたアルバレス…。
すると、超至近距離ではアルバレスのパンチが全く当たらない。
逆に玉熊の細かいパンチが当たる…当たる…当たる。
唯一玉熊が制する距離、それは近距離を越えた、頭がくっ付くほどの超至近距離インファイト。
しかしその距離に行くにはアルバレスを捉まえるしかなく、中間距離を支配されている為、詰められず。
相手を誘っても乗って来ない…。
玉熊の距離で戦えたのは第9Rだけ…見せ場はそこまで…。
最終ラウンドまでアルバレスを捉え切れずに判定負け。
実は玉熊、既にロハス戦のあたりで眼疾を患っていたようで…。
接近戦でないと距離がつかめない状況だったようです。
最終的にこの試合後、網膜はく離で引退するんですが、
網膜はく離には前兆として飛蚊症や光視症なんていうのがあって…
ここは想像なんですけど、この前兆段階だったのでは…と。
実は僕自身が光視症を患った経験があるんですが、
まばたきをする度にフラッシュが焚かれるようで、常に目がくらんだような状態なんですね。
ボクシングするなんて想像もつかない…。
これが進行すると網膜剥離…突然目の前にシャッターが下りるなんて言います。
目を病んだボクサーができる選択は引退のみ。
現在はレーシック手術で復帰するボクサーもいますが、
この時代はそういった技術もなく、手術に成功しても、網膜はく離を発症した時点で強制引退。
玉熊もリングを去ることになります。
前述の通り、彼は引退後、国際ジムのトレーナーとなり、同郷のクラッシャー 三浦(国際)と共に
セレス 小林(国際)等を育て上げました。
このセレス 小林って選手がですね、いかにも国際ジムって選手で…
玉熊もそうなんですけど、とにかく生真面目な印象が強い。
ドタバタドタバタしてるように見えて、実はすっごく強いんですね。
地味なイメージの王者だったのも玉熊と重なる部分かもしれません。
スタイルは全然違う癖に、玉熊を彷彿とさせるボクサーで…。
また、ちょっと取り上げる機会があればいいな…と思ってます。
とりあえず、レパード 玉熊に関してはここまで。
以前お知らせしたとおり、今月は奇数日の更新としますので明日は更新お休みします。
そんなこんなでまた明後日。
ではっ!!
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