叫べ!咆哮のブル 弘師(トコナメ) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/09/05
今日からは、2018年度中日本新人王特集。
9/30の中日本・西部日本新人王対抗戦に出場する選手から優先して掲載。
各選手がこれまでどのようなドラマを積み重ねてきたか…。
中日本・西部日本新人王対抗戦、西軍代表決定戦、全日本新人王決定戦…と、
これから壁を越えていこうとする中日本の選手たちを紹介していきます。
まずは…最軽量級のミニマム級から、ブル 弘師(トコナメ)を。
本名、尾崎 弘師。
2011年、福岡県のフジタジムでプロテストに合格。
そこから5年間、試合はなし。
2016年11月13日、中日本でC級プロテストに合格し直し、その年の12月。
リングネームをブル 弘師とし、トコナメジム所属としてデビュー戦のリングを踏む。
相手は…ライトフライ級で今年の中日本新人王を獲得した太田 アレックス(西遠)。
マンモス 和則(薬師寺)との2度に渡る大激戦の末、現地観戦ファンにその強さを認知させ
戦績はイーブンながら、今年の中日本新人王の中でも注目株に挙げられる選手である。
お互いデビュー戦のピリピリした空気感の中、リングネームの通り、突っ込んでいったブル。
コーナー付近まで押し込んでいったが、アレックスは慌てることなく、
ブルの撃ち出しにビッグパンチを合わせる。
アレックスの方が一回り強いボクシング…しかし、ブルは撃たれても撃たれても手を出していく。
3Rにはボディ攻めが功を奏したか、アレックスはバランスを崩し始め、ブルにチャンスが訪れる。
しかし…4Rにはアレックスが立て直し、また何度もブルの顔面を跳ね上げる。
試合終了まであとわずか…そんな中で響いたのがブルの雄叫びだった。
叫び声をあげて、最後の猛ラッシュ。
全てを出し切るようなデビュー戦のリング、結果はほぼフルマークの判定負け。
3Rに光明を見出しはしたものの、この時点では実力差が出てしまった敗戦だった。
しかし、第一試合だったこの試合で、会場は熱を持った。
この日、デビュー戦のブルが会場の空気に火を入れた…そんな興行になったように思う。
翌年の2017年中日本新人王トーナメント。
ブルはライトフライ級でエントリーする。
僕はこの年、準々決勝からの登場となったブルを優勝予想に挙げている。
初戦の相手は東 健史(KUWANA)。
僕が「弾幕の東」なんて勝手に呼んでいた選手で、近い距離の回転力に特徴を感じた選手。
デビュー戦のブルの戦いぶりと照らし合わせて、激しい手数の応酬を予想した試合だった。
この試合、序盤から東が制する。
ブルの突進を手数で阻み、ブルのパンチをもらう危ない場面も手数で窮地を脱出。
東の強さが際立った試合…最終ラウンド、倒さなければ勝ちのないブルが前掛かりになったところを
東が弾幕で飲み込んでTKOを呼び込んだ。
デビュー2連敗となったブル。
しかし…一切引かなかったブルはこの試合でもまた、負け試合で魅せてくれた。
新人王戦を初戦で敗退したブルの次戦は年末まで開くこととなる。
相手はデビュー戦の田代 裕正(三河)
ゴングとともに前進し、デビュー戦で固さの残る田代を飲み込む。
田代のジャブで止まらず、そのまま押し込んだブルが、
右ストレートをカウンターで撃ち込んでダウン奪取。
立ち上がった田代に対し、そのままの勢いで右フックを何度も叩き付け、
レフリーが割って入ってのTKO。
試合中に聞こえなかったブルの咆哮は、試合終了後に会場に響き渡った。
初勝利…噛みしめるような表情で叫ぶ。
…試合中に堪えた感情がここで爆発したようにも見えた。
翌、2018年の中日本新人王戦のエントリーにブルの名前を見つける。
ミニマム級…エントリーはブル 弘師の一名のみ。
不戦での中日本新人王獲得となった。
地方の新人王ではよくあるケース。
東に比べれば中日本は圧倒的にボクサーの数が少ない。
しかし、その分、全日本新人王までの道のりは、西部、西日本、東日本と、
各地区の新人王を総ナメにしなければならない。
そして、その肩には中日本という一つの大きな地域の期待がかかる。
中日本新人王の称号は、ときに勝ち抜いた証にはならないことがある。
しかし、その肩に期待を背負った証としては充分過ぎるほどの証明となる称号だ。
彼の魂を揺らすようなファイトが全国の様々なファンの目に触れることが嬉しく思える。
ブル 弘師の中日本新人王が喜ばしく思えた。
2018年6月。
中日本・西部日本新人王対抗戦を3カ月後に控えるブルがリングに上がる。
試合間隔が空き過ぎるためだろうか、ウェートはこれまで戦ってきたライトフライ級。
相手を見て驚く。
栗原 祐樹(和光)…ここまで2戦2敗だが、こちらも猛烈な手数で勝負する苛烈なファイター。
未勝利の選手ながら、突進力で言えば中日本トップクラスの選手だと思っている。
激しい打撃戦になれば、無傷では終われないだろう相手…ブルとは噛み合うように思えた。
対抗戦を前に怪我だけは避けて欲しいところ。
試合が始まると、これまでに見たことのないブル 弘師の姿がリングを躍動した。
突っ込んでくる栗原に対し、丁寧にポジションを変えながら撃ち込んでいく。
栗原の手数の合間にパンチを差し込み、しっかりとダメージを与え…
試合後半は撃ち合いになる中、最終ラウンドに右クロスを炸裂させる。
ロープに後退した栗原にラッシュを浴びせて、TKOを呼び込んだ。
特攻型で撃ち合う姿から、冷静さを手に入れて変貌を遂げたブル。
デビュー戦で試合中に響いたブルの雄叫びは、試合終了後の雄叫びに変わる。
「ありがとうございました!」の絶叫。
深々と頭を下げる姿に、送り出す思いも万感となる。
今年のミニマム級、西部日本の竹田 宙(S&K)の評判が聞こえてくる。
新人王戦の最初の試合が高い壁となりそうだ…。
これまで全試合をライトフライ級で戦ってきたブルが、1階級下げて挑む新人王。
47.6kg以下の階級では、当日のコンディションに苦しむ選手も多くいる。
軽量級の勝負は数週間前から開始される。
仮に実力差があったとして、調整の良し悪し次第で簡単に勝敗は入れ替わる。
きっとブルならやり遂げる。
そして、リングで勝利の咆哮を響かせてくれる。
そう信じている。
極限の階級で新人王の頂点を目指すブル。
九州、大阪…そして東京で、その雄叫びを数多くのファンの耳に残してほしい。
勝ち抜いていけ!
我らが中日本新人王!
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