連続逆転勝利で勝ち進む 冨田 雅季雄(三津山) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/10/07
冨田 雅季雄(三津山)。
サウスポーのボクサーファイター。
デビューは2015年の秋。
30歳でのプロデビューだった。
清水マリンビルで相手もデビュー戦の山本 裕樹(岡崎)。
速攻を仕替けた冨田だったが、そこを防がれ、再度の仕掛けでカウンターに沈んだ。
1R 2分12秒でのKO負け。
翌年、スーパーライト級で中日本新人王トーナメントにエントリーするも、初戦を棄権。
8月に長島 良太(MSG平石)との復帰戦を戦い、左ストレート一閃でダウンを奪い、
その後詰め切っての2RKO勝利で初勝利を手に入れている。
ここからしばらく期間を開け、3戦目は2017年末。
下田 一貴(天熊丸木)との一戦だった。
サウスポー同士の戦い。
冨田はプレスをかけていき、左ストレートをカウンターで浴びせるも
下田は負けん気強く反撃。
お互いに危険な距離での攻防に、下田が左ストレートを突き刺して、試合は突如の幕切れ。
失神して崩れた冨田にレフリーはノーカウントで試合をストップした。
危険な距離での攻防を続けた結果、もらってはいけない一撃を浴びての敗退だった。
遅いデビューにスローペースの試合間隔。
この時、冨田は32歳を迎えている。
今年に入り、発表された新人王トーナメント。
スーパーライト級に冨田の名前があった。
昨年はエントリー1名だった階級…。
今年はここに4人の選手がエントリーした。
僕の優勝予想は片岡 晃誠(蟹江)。
そして、その対抗が近藤 裕真(畑中)。
両者が準決勝の対抗ブロックで潰し合う組み合わせだった。
3月、一足早く優勝候補同士がぶつかり合う。
この試合は抜群のキレを見せた近藤が、カウンターの左フックを振り抜いてのKO勝利。
元々持ち合わせが多いように思えた選手。
ここに来て、これまで以上の実力を魅せつけたように思えた。
これだけの力があるなら、中日本新人王は固い…近藤に対してそんな感覚を持った。
6月、冨田の準決勝が行われる。
相手はデビュー戦となる永田 哲也(浜松堀内)。
サウスポー同士の対決は、長い距離からの永田の右フックが効果的にヒット。
しかし、永田が詰めたところで冨田の左フックが炸裂。
1Rからお互いに揺らし合う試合となる。
2Rは足を使って距離を取る永谷対し、ラウンド後半に冨田が詰めていくと試合は撃ち合いに発展。
3Rには冨田の強烈な右フックがカウンターで入ったことでその後の展開を一気に手中に収める。
冨田のプレスが有効に機能し、左ストレートで永田が何度も腰を落とす。
そんな中で、永田がカットを負い、試合続行不可能に。
ヒッティングによるカットで冨田の勝利が宣言された。
序盤の2つのラウンド、際どい内容だったが主導権は永田にあったように思う。
3Rに入り、冨田が主導権を握ると、試合は一方的になった。
僕にはこの試合が、冨田の逆転KO劇と見えた。
危険な場所にとどまって喫したKO負けから約半年。
その位置にとどまる時間は減り、冨田もまた、近藤と同じくこれまでとは違う姿になっていた。
決勝の舞台は、二人の変化を遂げたボクサーがぶつかり合う舞台となった。
8月、中日本スーパーライト級新人王決勝戦。
試合が開始されると、近藤がほぼ一方的に冨田を捉えていく。
2Rまで、展開は圧倒的。
冨田の重いパンチをしっかりとガードしながら
右フックを強烈に撃ち込んでいく。
もらってももらっても退かない冨田だが、出すパンチ出すパンチに近藤に拳を差し込まれてしまう。
1R終盤には近藤を一瞬フリーズさせる右アッパーがあったが、魅せ場はほぼそこだけに思えた。
そんな状態で迎えた3R、冨田が右フック一閃。
近藤がリングに沈み込む…冨田の逆転の一撃。
立ち上がった近藤だが、かなりのダメージで足元がおぼつかない。
なんとか反撃して、ラウンド終了のゴングに逃げ込んだ近藤。
ここまでのマイジャッジは38-38。
圧倒されていた試合を、一気に最終ラウンド勝負まで持ち込んだ。
迎えた最終ラウンドでは、ポジションを変えながら撃ち合っていく近藤に対して
ひたすら前進しながら撃っていく冨田。
はっきりとどちらかに流れることなく終了のゴングが鳴る。
マイジャッジでは近藤…しかし際どい。
公式ジャッジも割れた結果、2-1のスプリットデシジョンで冨田が中日本新人王を勝ち取った。
何度も何度も強烈にパンチを浴びながら…逆転の一撃に繋げた。
前半2Rを圧倒的に上回られながら、気持ちを切ることなく。
昨年末、「もらってはいけない一撃」をもらって敗れた冨田。
その怖さを知り、この試合では逆にその一撃を浴びせた形。
あの負けから9カ月…この選手もまた色の濃いボクシングロードを背景に勝ち上がった。
思えば、準決勝も際どいところからの逆転で勝ち上がっている。
倒し倒されの殴り合いをしていた選手が、一気にその力を増した。
今年の新人王トーナメントで最も伸びた姿を見せた選手。
12月のあの日、冨田がもし勝っていたら…この試合を勝ち抜けただろうか。
今年33歳になる男が、その強さを増している。
ここからさらなる強豪が待ち構える全日本新人王レース。
スーパーライト級は西部日本新人王がエントリーなしの為
西軍代表決定戦に進むこととなる。
全日本新人王まで、残り2勝。
この期間に、冨田がどこまで伸びていくのか。
たった9ヶ月で進化した冨田。
12月のリングに、さらなる冨田が立っていれば…。
今年のこの階級、東にはえぐいほど評判のいい遠藤 健太(帝拳)がいる。
メキシコ帰りのホープは、全日本新人王候補であると同時に、将来のチャンピオン候補。
しかし、ボクシングには驚愕のドラマが付き物だ。
今、この男の背中には、やらかしそうな匂いがプンプンしている。
決して強豪選手とは言い難かった冨田の新人王エントリー時点だったが
今や、はっきりと強豪選手と言える。
逆転勝利を重ねる冨田は、間違いなくドラマを持つ選手。
ボクシングの神様は、きっとこの男を愛しているハズだと感じる。
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