矢吹 正道(緑) 【ボクシング選手名鑑生配信表彰 ベストシーン賞】(選手紹介) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2022/03/09

矢吹 正道(緑) 【ボクシング選手名鑑生配信表彰 ベストシーン賞】(選手紹介) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2022/03/09

 

緑ジムの興行には別の配信が入っていることもあり、
矢吹 正道(緑)の試合は配信出来たことがない。

これについて、質問を受けることが度々あるので触れておきたい。

自分が行っている Youtube 配信について、
緑ジムが否定的だとかそういったことはない。
この配信について了承をもらいたく、総会にお邪魔した際、
ひときわ大きな声で、「俺はいいと思う!応援する!」と
言ってくれたのが緑ジムの松尾会長だった。

その場に現れた、よくわからない一般人が、
「Youtubeで試合を配信させて欲しい」といった突然のお願い。
正直、空気は重たかったと思う。

目の前にいるジム会長の面々にビビり倒し、まくしたてるように話した自分。
元チャンピオン、元名選手がゴロゴロいる場所である。
そりゃそうなるよ…と言いたくなるが…。

松尾会長の一言が、その場の空気が変えてくれたと思っている。


緑ジム 村上マネージャーのマッチョブログでも何度も宣伝してもらったし
最初の配信の際には、宣伝用にこんな映像を撮ってはどうか?
ジムを使ってもらってもいいし、できることは協力するとも言っていただいた。

これはコロナの最中、どんな反応があるか不透明だったこともあり、
ご迷惑をおかけする可能性を踏まえてこちらからお断りしているが
そういった経緯もあり、緑ジムには Youtube配信について好意的に
捉えていただいていると思っている。

ただ単純に既存の配信があり、それを邪魔だてすることは
こちらの本意ではないことを事前にお伝えしていることもあってのこと。
岡庭マネージャーからは「申し訳ない」との丁寧な連絡もいただいた。

 

そういった事情もあり、ボクシング選手名鑑の
Youtube配信では矢吹の試合は扱えていない。
それでも、ベストシーン賞は矢吹だった。

世界王者となって、初めて刈谷あいおいホールに登場。
功労賞授与式と合わせて行われたインタビューが
配信した試合の合間にあり、その場面がノミネート。

そして最多得票を集めた。

この日を待ちわびた人たちがそれだけ多かったということだろう。

 

中日本ボクシングの聖地「刈谷あいおいホール」

後楽園ホールによく似た形状。
試合の見易さは全国屈指の会場だ。

しかし、最大収容人数は700名。
さらに大きな会場を必要とする場合には、名古屋国際会議場などが使用される。
例えば田中 恒成(畑中)であれば、この規模では収容人数が耐えられない。
必然的に名古屋国際会議場か、それ以上の規模の会場が使用される。

矢吹はこの刈谷あいおいホールで、他の4回戦と同じようにデビューし、
その後も、16試合中9試合を戦っている。
小さな小さな試合会場で登り詰めていった選手だ。

全日本新人王決定戦に出場するころにはその強さは認知され
まだまだ知る人ぞ知る状態ではあったものの、
世界を期待される選手となっていた。

しかし、その決定戦での敗戦。
また注目を集めたホープ対決での敗戦。
一気に世界ランキング獲りを狙った試合での敗戦。

要所で敗れる姿に、「矢吹は勝負所に弱い」なんて声も聞こえた。
当たり前だが、決して平たんな道のりではなかった。


「運がなければチャンピオンになれない」


僕が初めて矢吹と会話したときに、偉そうに話した台詞だ。


矢吹は運がなかった。

例年なら間違いなく新人王の実力を持ちながら、
決定戦で立ちはだかったのはのちのWBO世界フライ級王者 中谷 潤人(M.T)
そして、実力を出し切ることなく終わった4R。

ただただ強さだけ認知されたノーランカー。
対戦を避けられる要素しかない状況に陥る。

そこで、同じく対戦を避けられていた ユーリ阿久井 政悟(倉敷守安)と対戦。
両者ともに中谷に敗北を喫した者同士。
世界王者候補たちが三つ巴の争いを繰り広げることになった。

この試合、矢吹は阿久井の右ストレートにまたも敗北を喫する。


敗れた相手はいずれも世界王者候補。

しかし、世界王座が4つに割れた現代とて、誰も彼もが世界王者になれるわけではない。
頂を目指す競争へ参戦する地域は拡大し、過去にはわずかだった旧共産圏の選手や
中東アジアや中国、インドなど、アマチュア強豪国からプロへの参戦も増えた。
今も昔も、その道のりが険しいことに変わりはない。

「ホープ三つ巴」の最後尾につけることとなった矢吹は
のちに「修羅の道」とも言われる本格派路線を走ることとなる。

まずは、寺地 拳四朗(三迫)への世界挑戦を叶えたばかり(4RTKO負け)の
ヒルベルト・ペドロサ(パナマ)を呼び寄せ、世界ランク獲りを狙った。

しかし…ここで不運。
試合数日前にペドロサが世界ランキング15位圏外へと落ちてしまったのだ。
強い相手と戦うリスクのみ、勝っても欲しかったものは手に入らない。

そんな試合を、2RKOで勝ち抜けるとまた改めて世界ランカーを呼び寄せる。
相手はダニエル・マテヨン(キューバ)

のちのWBA世界ライトフライ級暫定王者。
アマチュアでの戦歴は400戦を数え、その中には井上 尚弥(大橋)が勝てなかった相手であり
のちのアマチュア世界王者、ヨスバニー・ベイティア(キューバ)への勝利もある。

ただし、試合が決まった時点ではこの情報は知られていなかった。
米国でなかなか試合の決まらない地味なキューバン。
ほぼほぼそれだけの情報だった。

この試合を判定で失った矢吹。
まだまだ10戦に満たないノーランカーが、
世界ランカーの中でも格別に強い相手を呼んでしまったこととなる。

これもまた、不運と言える。
試合後、「この相手はまだ早かった…」と奥歯を鳴らす近しい関係者の姿があった。

 

矢吹の快進撃はこの後。
ようやくランカー挑戦のチャンスを手に入れ、挑戦者決定戦に勝利。
そして日本王座決定戦で日本タイトルのベルトを巻く。
王座戴冠も刈谷あいおいホールでのものだった。

 

ただし、決まっていた試合が流れては再セットされるのは毎度のこと。
沖縄で組まれた試合が流れた際には、既に航空券を購入していたファンもおり
事後処理に奔走させられていたようだった。

挑戦者決定戦では当初対戦する予定だった相手との対戦は叶わず、
通常1位対2位で行われるはずの試合が、日本8位との対戦となった。

日本タイトル戦も、試合が決定した後に王者が突如の引退。
さらにはこのタイミングでコロナウイルスの流行により、タイトル戦は長期の順延。
王座決定戦での戴冠となったが、長い長い待期期間を挟んでのものだった。

途中には拳の粉砕骨折もあり、ほぼ片手で勝利した試合もある。

相も変わらず続く不運の中、もうダメかもしれない…。
応援するファンの中でもそんな声が漏れる場面は何度も。
しかし、矢吹はその全てを、自分の拳で弾き返した。


自分が彼に発した言葉

「運がなければチャンピオンになれない」

矢吹はこれを覆した。


運さえあればチャンピオンになれていた選手は数多くいる。
これは間違いないが…、運は拳で覆せる。
純粋な強さで、世界は獲れる。

 

京都の地、2021年の年間最高試合に選出される激闘で
勝ち名乗りを受け、矢吹は世界王者となった。

主戦場としてきた刈谷あいおいホール。
そこには矢吹の道のりを噛み締めて来たファンたちがいる。

中日本の聖地、刈谷あいおいホールが初めて産んだ世界王者。

特に威勢のいいことを言ったわけではない。
いつもの矢吹が自然体でインタビューに答えた映像。
しかしそれは、京都の地で世界王者となった矢吹が、
正真正銘のヒーローとなって、初めて刈谷へ帰って来たその場面。

最多得票を集め、ボクシング選手名鑑生配信表彰 ベストシーン賞となりました。

 

今月19日、矢吹が世界王者として初防衛戦を戦います。
もう、矢吹が試合をするには刈谷あいおいホールは小さすぎるかもしれません。
だけれど、そこにはヒーローの帰りを待ち続けるファンがいます。

試合はより大きな会場でするとしても、願わくば、また世界王者として、
刈谷のリングに上がる姿を見せて欲しいと願っています。

 

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