あぁ、試合枯れ… ドノバン・ラドック(カナダ) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2015/12/29
さて、本日はドノバン・ラドック(カナダ)の2回目。
勢いに乗って勝ち続けるラドック。
マイク・タイソン(米)との対戦が流れてもその勢いは収まらず。
勝ち続けるラドックが、あまりにセンセーショナルな勝ち方をするもんだから
対戦してくれる相手がいなくなり試合枯れ…。
イベンダー・ホリフィールド(米)への世界挑戦の話も経ち消えてしまう…。
不運に不運が重なり、タイトルに挑めないラドック。
冠された名は「無冠の帝王」。
そんな折、ビッグチャンスが舞い込みます。
何度も立ち上がっては消えた、因縁のタイソンとの試合。
ここでようやく、ようやく、実現します。
この時期のタイソンは東京で衝撃的なKO負けを喫してベルトを失い、
世界王座再挑戦に向けてランカー達をなぎ倒している真っ最中。
ベルトはありませんが、ヘビー級No.1の人気選手。
ビッグチャンスには変わりありません。
この時点でラドックは27戦25勝(18KO)1敗1分。
周りは圧倒的にタイソン支持。
ここでアップセットを演じれば、世界ヘビー級のド真ん中にいきなり飛び出すことになる。
…そんな大一番です。
この試合を裁いたのはリチャード・スチール。
世界No.1の呼び声高い名レフリーです。
先に彼の名言を紹介しておきます。
“No fight is worth a man’s life”
『人の命に代えられる試合なんて存在しない。』
↑を踏まえたうえで…ラドックvsタイソンの内容に進みましょう。
近距離では有利に試合を進めるタイソンに対し、
左の強打で「もしかしたら…」を思わせるラドック。
ポイント自体はタイソンが持っていきますが、
会場全体がラドックの強烈な左に期待を持ちはじめます。
そんなピリピリした緊張感の7R、左フックの強打から強烈な連打を3つほど喰らったラドック。
タイソンがロープ際に追い詰めるか…というところで突然のストップ。
スチールレフリーは7RTKOでタイソンの勝利を宣言します。
この試合はストップが早過ぎる!と観衆の猛烈なブーイング。物議を呼びます。
映像で見ると確かに早く見えて…え?この程度で?となる試合。
実はこの直前、クリンチ際にタイソンの強烈な右フックが入っているんですが、
このタイミングでスチールレフリーの表情が変わります。
クリンチを引き離す時にはラドックの目をじっと見つめ…。
もしかすると、ラドックの目に眼振を見つけたのかもしれません。
しかし、そんな距離で見ていたわけではない観客は当然納得いきません。
その不満は暴動に近いレベルまでエスカレートし、
スチールレフリーは警護を置いてリングを降りなければならないほど。
ラドックが善戦してなければ、これほどファンも騒ぎたてなかったでしょう。
それほどまでに緊張感のある撃ち合いを見せた二人。
誰もが納得いかなかった試合として、この二人、すぐさま再戦する形となります
この試合、壮絶な撃ち合いのまま、判定までもつれる死闘となります。
タイソンは鼓膜を破り、ラドックは顎を砕かれる、まさに死闘。
2Rと4Rにダウンを奪われたラドック。
しかし最後まで逆転を狙うスマッシュの威力は落ちず、
ラドックのスマッシュでタイソンのマウスピースが飛ぶシーンも…。
結果は4P~6P差でタイソンが勝利。
タイソンと真っ向から撃ち合って判定までもつれたのはこのラドックが初めてだと思われます。
これが彼の名声を高めることに。
ヘビー級の中心に躍り出ることには失敗したラドックですが、
この時代のヘビー級の重要なキャラクターとして認知されます。
特に彼が使ったスリークウォーター気味の特殊なパンチ「スマッシュ」は、
彼の代名詞としてセンセーショナルなイメージを植え付けました。
その左には“レーザー(剃刀)”の異名が与えられ、一気に人気選手になります。
再起戦では元WBA世界ヘビー級王者のグレッグ・ペイジ(米)を8R棄権で破り、4人目の元世界王者喰い。
続いてマイナー世界タイトルのIBC王座に挑戦し、フィル・ジャクソン(米)に勝利。
そうして、次戦の対戦者として挙がったのは、レノックス・ルイス(英)。
アマチュア時代に一度破っている相手との試合。
コモンウェルス英連邦の地域王座と共に、WBC世界タイトルへの挑戦権が掛けられた試合となります。
スマッシュの強打を狙うラドックに対し様子を見るようにサークリングするルイス。
1R終盤に不用意な左のボディストレートを伸ばしたラドックに対し、
ルイスの撃ち降ろしの右が強烈にヒット。
完全に足に来たラドックは、足を滑らすように倒れ、マットにもんどり打ちます。
このラウンドはゴングに救われますが、ダメージの回復しないラドック。
2R、一つのパンチも撃ちこめないままに2度のダウンを奪われTKO負け。
左に強打を持つ分、空きがちになるラドックの左のガード。
冷静にそこを撃ち降ろしたルイスが完勝した試合でした。
ラドック…世界挑戦へのチャンスまであと一歩としながら届かず…。
善戦したタイソン戦とは違い、全く手も足も出なかったルイス戦。
一気に評価を落とします。
さぁ、これで世界ヘビー級王座への道からは一歩も二歩も後退したラドック…。
彼のキャリア晩年はまた次回。
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