2018/8/19 -石川県産業展示館2号館- ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2018/8/19 -石川県産業展示館2号館- ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

メインイベントの前に井上 尚弥(大橋)ゼネシス・カシミ・セルバニア(カシミ)
公開スパーリングが挟まれる。
 

今や日本ボクシング界のトップスターとなった第44代WBA世界バンタム級王者の井上。
彼の登場に多くの人がカメラを構える。

対するは、数少ない「井上のスパーリングパートナーが務まる選手」として知られるセルバニア。
地元の人気者に、セルバニア頑張れの声が響く。

ヘッドギアがあってこその部分もあるだろうが、二人は激しい撃ち合いを魅せて観客を喜ばせる。
井上に、バンタム級の頂点を決めるWBSSが控えていることもあり、
観客席からは「セルバニア!手加減しろ!」の声も。
公開スパーリングは盛況の中終了。

これが終わって帰路に就く客も大勢いたが、元々が超満員だったこともあり
会場の埋まり具合は8割程度になっているだろうか。

試合はメインイベントへと進行する。
 
 

【スーパーライト級8回戦】
ハリケーン 風太(カシミ) vs ロイ・ツア・マニフルク(インドネシア)

WBCインターナショナルライト級王者、OPBF東洋太平洋ライト級3位、日本ライト級4位
ハリケーン 風太 32戦24勝(15KO)7敗1分

インドネシアスーパーライト級7位
ロイ・ツア・マニフルク 39戦19勝(15KO)18敗2分
 

1R、いきなりガチャガチャとした展開になる中、ドンピシャの左フックをカウンターで撃ち込む風太。
ラウンド終盤には下がるマニフルクを追いかけ、
ロープ際で抱きついて強引に体を入れ替えようとするマニフルクに
強引に拳をねじ込むような形でダウンを奪う。
 

2R、大きく振るうマニフルク。
普通ならやりにくいだろう、距離が潰れた状態で、どこからでも強打を繰り出してしまう風太。
天才と呼ばれる男の所以のようにも感じる。

ガチャガチャした展開の中、一旦距離を置いたところで、
ロープ際のマニフルクが風太に強烈な右ストレートを炸裂させて反撃。
このインドネシア人、本気度をビシビシ感じる。

クリンチ際に相手を投げ飛ばしかける風太…血の気の多い試合になりそうだ。
 

3R、マニフルクの振るう大きなパンチを浴び始める風太。
ラウンド中盤に入ると、マニフルクは強烈なボディで襲撃。

ここでトラブル。
絡み合い、腕を抑えつけた状態でマニフルクに左アッパーを2度叩き込んだ風太。
マニフルクは膝を着く…このダウンはレフリーは認めず…。
かといって風太に減点が与えられるわけでも、マニフルクに休息が与えられるわけでもなく…。
なかなかはっきりしない裁定。

鼻血を吹き出したマニフルク…ダメージを負ったように見えたが、
失速することはなく、このラウンドを乗り切る。
 

4R、ラウンド序盤、バッティングによるカットを負った風太。
マニフルクに続いて、風太の顔面も鮮血に染まる。

ラウンド中盤、ノーガードの状態からカウンターで左フックを2発連続で振り抜いて効かせて見せた風太。
お互い足を止めて、ガードを下げた状態で、思い切り振るう。
風太はディフェンスが面倒になってしまったのかと思えてしまう。
まるでお互いの耐久力を試し合うようにフルスイングを交換し合う二人。

マニフルクはリング上で踊って風太を挑発。
ボクシングが獣二人の殴り合いになっていく…。
 

5R、ラウンド開始から強打の撃ち合いとなる。
だらりと両腕を下げ、カウンターを振り抜く風太だが
マニフルクの大きなフックをまともにもらうシーンも。

中盤、風太の低い打撃を受けて、レフリーにローブローをアピールするマニフルク。
しかし次の瞬間には、右フックで急襲するマニフルク。
これは躱した風太だが…綺麗ごと抜きの殴り合い。
二人の試合はラフさを増していく。
 

このラウンド終了後、何やら言い争う二人。
カシミ会長が風太を一喝する怒号が響き、風太がコーナーに引き上げる。
 
 

6R開始直後、ロープ際で風太の強烈なアッパーが突き刺さり、
マニフルクがこの試合2度目のダウン。
立ち上がったマニフルク…タフさもやる気も半端ない。

このラウンド、自らロープに下がっていった風太。
その姿は、まるでロシアで魅せた一撃KOを再現しようとしているよう。

明らかに狙っている風太に、マニフルクは入って行けず…
二人は細かいフェイントで誘い合いながら、全く手を出さずに見合う時間が流れる。
 

このラウンド終了後も言い争う二人。
会長はまるで犬でも叱るような怒号で、風太を一喝する。

リングの上の猛獣と、歴戦の猛獣使い樫見会長。
そんなシルエットに見えてしまう。
 

7R、ラウンド前半、ロープに追い込んでボディを効かせる風太。
延々と続くガチャガチャとした展開の中で、強烈に上を叩いてダウン寸前まで追い込んだ風太。
しかし、一旦距離が空いた後、マニフルクが強烈な右フックをカウンターで叩き込む。
ラウンド中盤にはマニフルクの強烈なボディブロー。
 

8R、お互いノーガードで思い切りパンチをぶつけ合う。
避けて撃つ…そんなまどろっこしいことはもういい…。
残り10秒、撃ってこいと挑発する風太に対し、強烈な右を叩き込むが、試合はタイムアップ。
 
 

マイジャッジ 80-70 ハリケーン 風太
 

公式ジャッジが発表される。

77-73、80-70×2
 

3-0で勝者はハリケーン 風太。
 
 

あれだけ荒れた試合をした癖に、試合後は抱き合って健闘を称える両者。
これもボクシングの世界観。
 

ラフな試合には賛否の声が上がることがあるが…
ボクシングにはスポーツとしての角度、ショーとしての角度、格闘技としての角度…
そして、殴り合いとしての角度…様々な角度があり、視点がある。
これがボクシングの面白さの深みだと思っているからこそ、
見ている側としては、より楽しめる角度からボクシングを見るだけだと思っている。

クリンチの際に、相手を何度も投げかけた風太。
綺麗ごと抜きのスタイルは国内ではなかなか見れない。
これほどの荒くれ者を楽しまない手はないだろう。
 

この試合のシルエットが際立ったのはマニフルクの肌がひりつくような、強靭な負けん気。
最後の最後まで勝利にすがり、力いっぱい拳を振っていった。
アジア人の試合を、噛ませ戦と決めつけて試合を見ないファンも多くいる。
しかし…こんな試合も多数ある。

東京を見に行く機会が減っているので、全体的な話かどうかは分からないが、
僕が見ている範囲では、昨今、気概の足りないアジア人ボクサーは減ったように感じる。
力量差があることはあっても、その試合にかける熱をしっかり魅せて帰っていく。

少し前までの先入観で見ていると、超絶面白い試合を見逃すこともあり得るだろう。
この試合…僕にとってはかなり面白い試合だった。
 
 

試合後、縁のあった方と一緒に夕食。
金沢の海の幸をご馳走になる。

プロボクサーを子供に持つ夫婦、自分も子供を持つ身としてその心境は特に気になる。
色々な話を聞かせてもらった。
ありがとうと言ってもらった。
 

ボクサーのドラマを彩るのは、そのボクサーを支える人々も含めてのこと。
そんなふうに感じるようになっていた昨今、
選手の家族と話して、その思いがより強くなる。
 
 

中日本ボクシング観戦記や、ボクシング選手名鑑を創ることで、喜んでくれる人たちに出会うようになった。
この日、挟まれた休憩時間の合間に、静岡のあるジムのトレーナーさんに話しかけてもらったりもした。

おごりかもしれないけれど、かなり頑張ってきたと思うし、かなり頑張ってると思う。
毎日、選手名鑑にページを追加したり、記事を書いたり…。
金になっていないから、当然本業があって、そちらも併せて日付が回る頃までは、
毎日何かしらの作業をしている。

頑張ってることが認められる…これって何かを辞められなくなる時の理由だったりすると思う。
 

喜んでくれる選手、喜んでくれる選手の家族、喜んでくれる選手を支える人たち…素直に嬉しい。
自分のやっていることに自信を持とうと思った。
 
 
 

強い弱い、結果を残す残さないに関わらず、
選手一人一人がドラマに満ち溢れてることをいつか証明したい。
僕は不人気スポーツとまで揶揄されてしまうボクシングを、心底面白いと思っている。
4回戦から世界の頂点を争う試合まで、面白くないと思える試合に出会ったことがない。

なんとも言えない気分に陥る試合はあるが、
そういう試合ほど、その後にその試合の意味を考えてしまう。
気が付けば、その試合が濃厚な色味を持って自分の中に残ったりする。
レベルとか強さとか、そういうことじゃない。
そこに纏わりつくようなドラマが必ずある。
 

僕の持っている感覚が、理解してもらえれば…
僕の見ている世界観を見てもらえれば…
きっと皆、もっともっとボクシングを楽しんでくれるはずだと思っている。

自分が一番とは思ってはいないけれど、
ボクシングファンであることに人生を捧げたい人間の一人ではある。
僕と同じ感覚の人間が1万人いれば、日本中の会場がファンで埋まるハズだ。
昭和の熱狂さえ、きっと霞んでしまう。
 

だからこそ、ここに自分が見た「面白いもの」を残している。
少しでも伝わればいい…。

貢献や奉仕ではない。
リングの外側が熱で溢れた方が、リングの試合も面白く見える。
自分が見たいものを見るため…たったそれだけのための、エゴイスティックなもの。
 

自分のためだから、自分が頑張る。
 
 

リングの上を見れば、自分が逆立ちしてもできないような努力を重ねる男たちがいる。
選手に、周りに書かせてもらっているもの…感謝しかない。
 

ありがとうの言葉を受け取って帰って来た、北陸へのボクシング観戦旅行。
また、中日本のボクシングを愛する理由が増えたようにも感じた。
 
 

 

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