漫画のようなスーパーヒーロー② 江藤 光喜(白井・具志堅) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2015/10/19
さてさて、今日は昨日の続きです。
江藤 光喜(白井・具志堅)選手が
WBA世界フライ級暫定タイトルマッチまで駒を進めたとこまで書きましたね。
ここからの試合はねYoutubeなんかに動画もあると思うので、これ読んだら一回見てみてください。
ちょっとでもボクシングに興味あるなら損しない内容の試合なんで。
WBA世界フライ級暫定王者コンパヤック・ポープラムック(タイ)との対戦。
これは敵地開催なんで、普通の日本人選手だったら交渉がまとまらないところ。
既にタイで1試合やって、自信につなげてたからこそ、やってやるってなれたんでしょうね。
それに海外でしか試合ができないWBA世界フライ級暫定タイトル。
正規王者と戦うまでは獲っても海外での防衛が必要なので、
その後も海外で戦い続けるつもりが無ければ挑めないタイトルです。
相手は”あの”ポープラムックです。
ジョナサン・タコニンの回 で出てきた地元判定で勝ちをさらっていった選手。
その後、陥落。一階級上げてこの決定戦に挑んできたわけです。
当然判定では勝てないと踏んだ具志堅会長からは、前半から飛ばせ!と。
当日はやっぱりか…とウォーミングアップを途中で中断させられたり、ちょっと暗雲立ち込める感じ。
試合のゴングが鳴ると1Rから猛然とラッシュを賭ける江藤選手。
具志堅会長の指示通り、1R終盤にはダウンを奪います。
しかしこれはスリップの判定。
完全にパンチでダウンさせてるように見えるんですが…レフリーにはそう見えていないようです。
その後、再三、撃ち勝ちながら倒せずに迎えてしまった最終ラウンド。
判定になれば、地元判定で持っていかれる可能性は充分にあります。
このラウンドで倒しきらなければ、ほぼ負け…。
KOを狙って最後の力を振り絞り江藤が仕掛けます。
インファイトでショートパンチのコンビネーションを休まずラッシュ!
止まらない手数をさばききれなくなった王者、いい角度のパンチをもらいながら
じりじりと撃ち負けていきます。
もみ合いのようなインファイトの中で、王者が放ったショートアッパー…
そこにドンピシャのカウンターで江藤の右フックが炸裂します。
完全に意識が飛んだ王者、フラフラと後ずさりする中を左右のストレートで追撃すると
コーナー付近でヘタり込むように王者がダウン。
今度こそレフリーもダウンを宣告。
カウント8で試合再開後、またもや即ラッシュにかかる江藤選手、倒れる王者。
レフェリーは”ストップ”と声をかけただけで、ダウンなのかなんなのか、うやむやなままゴング。
王者がやばいってんでこのラウンド、10秒早くゴングが鳴ってました。
あと一歩のところで判定決着となってしまったこの試合。
ジャッジの採点が読み上げられ、江藤選手の名前がコールされますが、江藤選手無反応…。
レフリーに手を挙げられると、え?マジで?といった表情。
判定になった瞬間、負けを覚悟してたんでしょうね。
採点は(114-113、114-113、116-111)。
最終ラウンドダウンを獲ってなければ負けてたか、良くて引分け。
試合通じて撃ち勝っていましたが、そこは敵地開催。
ジャッジ側はうまいこと帳尻合わせしようとしてたんでしょう。
そしたら最終ラウンドでダウン取られちゃったもんだから、
ジャッジもどうしようもなくなっちゃった…みたいな感じでしょうか。
伝説の王者ファイティング 原田(笹崎)を含め、タイで世界戦に勝利した日本人…いなかったんですよ。
これ…とんでもないことですよ。これまで、17敗1分ですから。
それだけ海外での試合っていうのは、とくにタイってのは難しくてね。
これもダウンがもう1~2R早ければ、ジャッジにうまく帳尻あわされちゃってたかもしれないし。
完全に倒しきらなきゃ、ほぼ負けっていうのがタイでの試合。
もうすべてが敵だったんです。
レフリーも、ジャッジも、観衆も…。
すべてまとめてひっくり返した。
これを劇的と言わずしてなんと言うのでしょう。
アジア圏のボクシング情報を網羅するウェブサイトの Asian Boxing は、
この試合を「真の年間最高試合候補」とし、
「やや一方的な性質だったにも関わらず年間最高試合の呼び声高い
荒川仁人対オマール・フィゲロア戦も見劣りするぐらいだ」と大絶賛。
by Wiki
そして初防衛戦、またもやタイでの試合。
ヨドモンコン・ウォーセーンテップ(タイ)との試合なんですが、この試合は圧倒的な12RTKO負け。
実は2Rに眼底骨折してるんですね。
本人のコメントです。
「パンチを避けようと頭を振っても、自分でパンチを出しても響いてひどく痛かった。
自分で自分にダメージを与えるようなものでした。」
そんな状態で12Rまで撃ち合い、最後はタンカに乗って退場…。
とんでもない根性ボクシングをやってくれます。
ともあれ、根性は見せ付けたものの、正規王者になる前に、タイトルを奪われてしまった江藤さん。
日本では元世界王者とは認めらず…。
でもね、ここで終わりじゃないのが凄いところ。
大怪我を負ってしまったので、しばらく休養しますが、OPBF東洋太平洋王座決定戦で再起します。
アーデン・ディアレ(比)との対戦。
この試合、なんと3R,7Rでダウンを奪われます。
セコンドからはあと1回いいのをもらったらタオルを投げるなんて言われながら迎えた8R。
腹をくくって前に出た江藤。こうなるとこの選手は強い。
相手の一番得意な距離に飛び込んで撃ち合いを展開。
手数、手数、手数、…で、またもや相手の出したショートアッパーに被さるフック!
ドンピシャのカウンターで相手の顔が体から外れそうになるほど跳ね飛びます。
そのまま尻もちをつくようにディアレがダウン。
カウント10までに立ち上がったディアレですが、ダメージは抜けきらず、
猛然とラッシュを仕掛ける江藤の巻き込むような左フックをもらって、押し負けるようにダウン。
あと1度ダウンを取れば江藤の勝ち、ディアレはこのラウンドさえ乗り切ってダメージが回復すれば
残り12分逃げ切れる可能性も充分あります。
仕留め切るか、逃げ切るか…
ここでディアレが選択したのは、真っ向からの撃ち合い。
確実に足にきている状態で逃げにかかるより、
撃ち合った方がいいパンチをもらう可能性が低いと判断したのでしょうか。
壮絶な二人の撃ち合いが始ります。
この撃ち合いを制したのは、先ほどまでマットに這っていたディアレ。
このラウンドずっとラッシュを仕掛けている江藤選手…
撃ち疲れでパンチスピードが鈍り、出すパンチ出すパンチにカウンターを合わせられます。
それでも…倒れない!倒れない!倒れない!
もらっても、もらっても手を出し続けます。
手を出せば出すほどカウンターをもらいますが、
それでも手を出すことをやめない江藤選手。
次第にディアレが撃ち疲れを見せ始めます。
そして、ディアレの体がコーナーに詰まったところで
江藤のもう1段階ギアを上げたような、猛然としたラッシュが始まります。
もう限界だったんでしょう、体重が乗っているとは到底思えないような伸びきったフォームで
そんなことはどうでもいいと言わんばかりに、とにかく撃つ!撃つ!撃つ!
ディアレが撃ち返せばモロにカウンターでもらいますが、
それでも撃つ!撃つ!撃つ!
江藤のパンチが一発いい角度で入ると、あとはディアレは防戦一方。
最後は撫でるようなショートフックでディアレの腰が砕けてスタンディングダウン。
これで3ノックダウンの大逆転TKO。
会場は熱狂の渦です。
試合後は本人のダメージが深すぎてまたもやタンカに乗って退場…。
ドラマティックすぎます!
まるで漫画の主人公みたい。
どの試合も撃ち合い、どつき合い!!
ボクシング初めて見る人でも、面白い!!!ってなっちゃうような選手です。
【余談】——-
それにしてもレフリー…よく見てました。
ディアレ側からすれば、このラウンドさえ乗り切れば勝ちが見える状況。
安易に止めれば地元判定に見えてしまいます。
つまり、レフリーからすればめちゃくちゃ止めにくい状況。
それでも、選手の命が最優先なので、止めるべきタイミングを逸すれば取り返しはつきません。
あの状況で腰が落ちた瞬間に止めたのは本当にファインプレーだと思います。
世界戦に引けを取らないレフェリングでした。
漢字はわかんないけど、「よしだかずとし」って名前らしいです。
ちょっと覚えとこうと思います。
———————
次の世界戦、相手は未だ負けたことのない、カルロス・クアドラス(帝拳)。
下手したらローマン・ゴンサレス(ニカラグア)ともいい試合するんじゃないかと思います。
そんなクアドラスとの世界戦は、圧倒的に不利予想。
江藤選手、防御がザルですしね。
ただね、ここに書いた2試合に共通してのことなんですが。
ダウンを奪った時、逆転KOした時、江藤選手…へろへろなんですね。
パンチのスピードも力も落ちた状態から逆転してる。
体力消耗した中でね、なかなかそんなパンチ出せないですよ。
大番狂わせってね、こういう選手が起こすんじゃないかと。
ちなみに、白井・具志堅ジム所属の江藤選手。
具志堅 用高の愛弟子として具志堅2世なんて呼ばれることもしばしば。
同じ沖縄出身、ボクシングスタイルは全然違うんですが…
あのとぼけたコメントや天然っぷり…これを確実に受け継いでます。
もし世界を獲るようなことがあれば、江藤選手、間違いなく人気出ると思います。
今、日本で最もスター性を持った選手!
11/28は絶対見逃せません!!
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