ホームズが欲しかったもの? ラリー・ホームズ(米)㉓ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/07/01

ホームズが欲しかったもの? ラリー・ホームズ(米)㉓ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/07/01
 
 

 

ラリー・ホームズ(米)

世界ヘビー級王座19度防衛の輝かしい栄光。
その王座をライトヘビー級から上げてきた、マイケル・スピンクス(米)に明け渡し
さらに再戦及ばすに引退。

ここまでなら綺麗な引き際。

しかし2年後、ドン・キングに乗せられて復帰、マイク・タイソン(米)に圧倒的な敗北。
さらに3年後、復帰したうえで5連勝を飾り、実質世界王者だったレイ・マーサー(米)を退ける。
イベンダー・ホリフィールド(米)には圧倒的に敗北し、王座返り咲きは逃すものの判定まで粘り意地を見せる。

そこから3年、世界で最も強かった男は、日の当らぬ場所でキャリアを再構築。
眩しいほどのスポットライト…そんな世界戦の舞台とは程遠い場所で拳を重ね、
ようやく、ホームズがかつての居場所…世界ヘビー級タイトルマッチに戻ってきました。

ホームズ…既に45歳。
ボクシングは…30歳でベテランと呼ばれる世界です。
 

相手はWBC世界ヘビー級王者のオリバー・マッコール(米)
レノックス・ルイス(英)から衝撃の2RKO勝利を収めて世界王座を獲得し、初防衛戦としてホームズを迎えます。
 

ホームズの仕上がりは十分、42歳のころよりジャブはスピーディーでスナッピー。

お互いに距離を測り合うような1R。
マッコールのジャブに合わせたホームズの右フックをスレスレで交わし、左フックを叩きつけるマッコール…
カウンターにカウンターを合わせた技術の高い最初のビッグヒット。
しかしホームズもマッコールの撃ち始めに合わせた撃ちおろしで強烈なヒットを奪う。
ホームズが世界王座の舞台でもまだまだやれることを示した最初の3分間。
 

2R、全盛期のようにリングの上を飛び回るわけではないものの、ホームズが距離を支配。
細かく細かくポジションを調整しながら、相手のジャブがギリギリ届かない位置に立つ。
そのまま撃つマッコールのパンチはホームズに届かず…距離を詰めようと踏み込んだ瞬間に、
ホームズのジャブが飛んでくる。
マッコールはほとんでパンチを当てれないまま…終盤には強引に攻め込むものの、
ホームズは両腕でいなしてしまいます。
積み重ねた経験で、失われたフットワークを補ってしまう…そんな熟練の技でラウンドをもぎ取ります。
 

3R、やはりボルトで固定したように距離を支配するホームズ。
前のラウンドと違うのは、イケる実感をつかんだか、右の強いストレートを使うこと。
コーナー付近まで下がりながら相手のジャブを鼻先で交わしたホームズ。
体を戻す反動でそのまま右フック叩きつける強烈な一撃。
しかしマッコールはスリッピングアウェイで外し、強烈な右フックを返す。
ロープにバウンドするホームズ。
一気に攻めようとするマッコール、強烈な撃ち合いになる二人。

一旦マッコールがリング中央まで下がり、「出てこい」と促しますが…
ホームズのプライドに触れたか、ホームズは首を横に振る。
不利なはずのコーナーから動かないホームズ。
仕方ないといった感じでコーナーを背にするホームズとの撃ち合いに応じるマッコール。
痺れる男同士の意地が見えます。
 

3R、やはりリング中央ではホームズが距離を支配。
マッコールが気を抜くと強烈な右ストレートもマッコールを捉える。
終盤、あえてマッコールをコーナーに呼び込むホームズ。
こうなると、マッコールがホームズに強打を入れていく…。
 

4R、ロングレンジでジャブを突きたてながら、マッコールに強烈な右ストレートを叩き込むホームズ。
しかしスリッピングアウェイで交わしたマッコールがホームズに連打を浴びせながらロープ際に追い込む。
そのままコーナーに詰めてボディへ左右の連打…。
一旦レフリーが二人を引き剥がすものの、ホームズはコーナーで「来い来い」のポーズ。
ここは応じないマッコール…。
 

5R、フェイントの応酬の中、お互いのパンチがなかなかヒットしない展開。
ホームズは右から入っていくなど工夫を見せるも、接触が少ないラウンドに終わる。

ここまで互角の展開。
 

6R、先ほどのラウンドに続いてロングレンジの戦い。
フットワークを使ってマッコールが綺麗なボクシングを見せるものの、
やはりホームズの駆け引きが上回るラウンド。
静かになればなるほど、ホームズが優位なラウンドになります。
 

7R、開始直儀右の強打をヒットさせるホームズ。
その勢いで左フックも追撃。
ここでコーナーに誘い込むホームズですが…この撃ち合いでは圧倒的にマッコールが上回る…。
ホームズの狙いは何か…モハメド・アリ(米)の起こしたキンシャサの軌跡を思い起こさせる展開…
 

8R、開始ととも右を浴びせるホームズ。
やはり離れた距離ではホームズ優位。
しかしコーナーで戦いたがるホームズ…これにマッコールは応じず、
ロングレンジの駆け引きになり、このラウンドを優位に進めたのはホームズ。
 

9R、ホームズが順調に細かいパンチを重ねていく…。
しかし右ストレートを空振りしたホームズがバランスを崩して後ずさると…
マッコールが一気にコーナーへ詰めて滅多撃ちに…。
時折、崩れ落ちそうになりながら、ホームズも撃ち返す。
自身が望んでいたはずのコーナーでの戦い…圧倒的に上回られる。
クリンチ気味になり、一旦レフリーが引き剥がしても、マッコールをコーナーに呼び寄せる。
…何のために?

結局このラウンドを一方的に獲られるホームズ。
 

10R、中盤でジャブの刺し合いをしていれば簡単な試合なハズ…
しかしやはりホームズはコーナー付近での撃ち合いを望む。
右目の下はパックリ切れ血が滴るホームズ。
 

11Rもやはり…コーナーで撃ち合いたがる…
自分の有利な土俵を捨てて…何を求めるのか…。
かつての伝説の世界王者は、疲弊し、コーナーでうつろな目を見せる。
 

12R、拮抗した展開の中…積み重ねたダメージがホームズを失速させる。
力を込めて振るう拳も、マッコールをマットに這わすには至らず…。
 
 

判定は1P~3P差の小差判定でマッコール。
45歳の老兵がヘビー級王座にここまで迫る…ビッグアップセットとは言わずとも驚愕の結末。
 

しかもこの試合、きっとホームズが勝ちに徹すれば勝てていた…。
コーナーでの撃ち合いを求めなければ…
この試合だけ切り取って見て、なおかつホームズの年齢を加味すればスタミナ切れにも見えなくない。
でも、前後の試合とこの試合の前半の出来を見てしまうと…
ホームズのスタミナがこんなに早く切れる?まさか?

僕にはそんなふうに見えてしまう。
 

アリに憧れ、アリの模倣と言われた男が…既にリングを去って久しいアリの姿を…
伝説となったキンシャサを再現しようとしたのか…。
決して撃たれ強くないマッコールをどうしてもKOで倒したかったのか…。

ひとつわかることは…かつて世界戦20連勝を飾り、復活した老兵は…
ただチャンピオンになるだけでは…満足できなかった。
世界王者に返り咲く…それ以外の何かを欲しがった…。
それが何かは…闇の中に消え去ってしまいましたが…。
 
 

驚異的な姿を見せつけたホームズ。
ここから、またさらにホームズの戦歴は伸びていきます。

そんなところは、また次回。
 
 

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