2019/03/16 -岐阜・岐阜メモリアルセンターで愛ドーム- 見どころ(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
いよいよ世界三階級制覇王者であり、
現WBO世界フライ級王者田中 恒成(畑中)の初防衛戦が迫ってまいりました。
迎えるは元WBAスーパー/IBF世界ライトフライ級統一王者の田口 良一(ワタナベ)。
思えば、田中がWBO世界ライトフライ級王者だったころ、
最強挑戦者アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を打ち破ったリングで、
対戦を直訴した相手が当時、WBA世界ライトフライ級王者だった田口。
WBAとWBOの統一戦として大晦日に試合が予定されながら、田中は秋に組まれた防衛戦で
パランポン・CPフレッシュマート(タイ)に両目の眼底を叩き折られてしまう。
パランポン戦にはしっかりと勝利したものの、試合は流れることに。
対して田口は大みそかにIBF世界ライトフライ級王者のミラン・メリンド(比)と対戦し、見事に王座を統一…
しかし次戦、統一した王座を元WBA世界ミニマム級スーパー王者の
エッキー・バドラー(南ア)にさらわれてしまう。
三階級制覇王者と元統一王者。
輝かしい実績を誇る二人だが、その戦いの中身は手中に収めかけたモノを取り戻す戦い。
最高級に血沸き肉躍る世界戦が岐阜の血で組まれた。
そして、前座カードには中日本のホープたちが登場。
中日本新人王戦の開幕カードも組まれ、こちらも見逃せないものとなっている。
■予備カード
【バンタム級4回戦】
大森 雄貴(三津山) vs 木村 天汰郎(駿河男児)
大森 雄貴 6戦3勝(2KO)3敗
昨年の中日本バンタム級新人王。
その1年前の中日本新人王では準々決勝でデビューし、
決勝まで勝ち上がってトーナメントを掻きまわした選手。
戦績イーブンだが、敗北した相手は、中日本新人王決勝で対戦した、”見えない左”を持つ高井 一憲(中日)、
当時、4回戦のレベルを明らかに超えていた加賀 聖也(タキザワ)。(その後怪我により引退)
昨年の全日本新人王を獲得することとなる藤川 祐誠(S&K)。
いずれも実力者ばかり。
負けるごとに変化を遂げているのも大森…。
きっと昨年の中日本新人王獲得時点より力量を上げてリングに上がってくることだろうと思う。
木村 天汰郎 1戦1勝
アマチュアのトップ選手である木村 蓮太朗(駿河男児)の従弟として注目を浴びるが…。
本人の実力や如何に…デビュー戦は中国に渡って勝ち星を挙げている。
“相当強い”という噂ばかりが耳に入って来る…。
今年の中日本新人王トーナメントの目玉選手でもある。
バンタム級でエントリーしており、5月19日に地元静岡で準決勝として冨田 風弥(伊豆)と対戦する。
怪我も許されないスパンで強気にこの時期の試合を行う。
“並みの4回戦とは言えない”大森に対して、注目選手の木村が世界戦の前座のリングで対峙する。
大森はこの試合に勝てばB級昇格の権利を得る4勝目。
新人王にはエントリーしていなかった為、今年うまくいけばB級のリングに…と思っていたが。
勝ち星を稼ぐカードではなく、注目ホープの壁としてリングに上がることとなった。
それもまた、厳しいカードを戦って来た大森らしい道のりに思える。
また、木村にしても、プロとして日本のリングでの初の試合が大森となれば…。
過保護な道を行くつもりがないことをはっきりと汲み取れる。
予備カードとして組まれた4回戦が、ビリッビリに痺れさせてくれる好カードとなっている。
■中日本フェザー級新人王準々決勝
【フェザー級4回戦】
甲斐 貞行(HEIWA) vs 中野 精(杉田)
甲斐 貞行 2戦1敗1分
デビュー戦では高いポテンシャルを持った豊島 竜樹(伊豆)を相手にドロー、
そして、2戦目では今年の中日本フェザー級新人王の
対抗ブロックの注目選手、太田 奏人(中日)に敗れている。
いずれも力のある選手に勝ち星を挙げることはならなかった甲斐。
その後、しばらく試合が無く、ジムのHPの引退選手のページに甲斐の名前が掲載されていた。
もう見れないと思っていた甲斐が…2年弱の時間をおいてリングに返って来る。
少しボクシングから離れることで、強くなって帰って来る選手もいる。
甲斐がどんな姿で戻って来るのか…期待しかない。
中野 精 2戦1勝(1KO)1敗
岐阜県飛騨高山地方で唯一のプロボクサー。
広大ながら人口としては少ない高山市…そんな地方のボクシング好きにとって
「地元ボクサー」を応援しようと思えば、選択肢は中野しかない。
昨秋の世界戦、木村 翔(青木)vs田中 恒成(畑中)の前座で爽快な1RKO劇でデビューを飾ったが…。
富山のリングで対峙したプロ11戦目の4回戦、岡田 和晃(富士)に洗礼とも思える敗北を喫した。
ダウン寸前まで追い込みながら逆にダウンを奪われ、そのまま勢いに飲みこまれた試合。
ヒヨッ子ボクサーに強くなるきっかけを与える試合を洗礼と呼ぶ。
岡田への敗北を経て、高山のヒーローが変身を遂げるか。
この試合に勝利すれば4月28日、中日本フェザー級準決勝として
僕が優勝候補に推している三輪 珠輝(名古屋大橋)との対戦が待ち構えている。
この試合を生き残り、そして三輪に挑む資格を得るのはどちらか。
ドラマティックなストーリーを持つ男たちが集結した今年の中日本フェザー級新人王トーナメント。
…いよいよ幕を開ける。
【125lb契約8回戦】
ワン・ジアン(中) vs 竹嶋 宏心(松田)
WBOスーパーバンタム級ユース王者/WBOアジア太平洋スーパーバンタム級13位
ワン・ジアン 9戦7勝1敗1分
プロ3戦目で挑んだWBOアジア太平洋スーパーバンタム級ユース王座決定戦で敗北。
しかし、その後は連勝を続け、昨年1月にはWBOスーパーバンタム級ユース王座に挑戦。
日本でデビューし3連敗するものの、自国で勝ち星を重ねてタイ国王者に成り上がっていた
ルンペット・サイトーンジム(タイ)との決定戦を8RTKOで制して王座を獲得している。
今年1月、初防衛戦を行い、ヤン・ソニョン(韓)相手にドロー防衛となっている。
竹嶋 宏心 2戦2勝(2KO)
拓殖大では主将を務め、アマチュアの熾烈な争いの中、大学全日本3位など輝かしい実績を収めた竹嶋。
力の片鱗は見せつつも、6回戦のリングでは見合う相手との試合は叶っていないように感じる。
まだまだ、キャリア序盤…勝負の試合はこれから待っているだろうが…。
6回戦での2勝を終えて、A級初戦の相手がWBO-APランカーとなった竹嶋。
王座を獲れば世界ランキングが手に入るWBOアジア太平洋王座を狙うアジアの猛者は多い。
この日は中国人選手との対戦。
中国はプロボクシングでは新興国の一つだが、アマチュアでは
スーパーヘビー級金メダリストも輩出しているアジアの強豪国。
プロボクシング興行に国費がつぎ込まれており、有望選手が多数産まれてきている。
現WBA世界フェザー級王座の椅子にはシュ・チャン(中)が座り、
莫大な人口も背景に、しっかりと土壌が作り上げられて来ている。
カタカナ名のアジア人選手を見るだけで格下とみなしてしまうファンもいるが…
果たしてこの選手はそうだろうか。
地域タイトルの中でも人気の高いWBOアジア太平洋のランキングを持つ選手。
この試合が勝負の試合になる可能性も感じてしまう。
【54.5kg契約8回戦】
田中 裕士(畑中) vs ユ・ヨウグ(中)
元WBCユース世界バンタム級王者
田中 裕士 26戦21勝(14KO)2敗3分
ステップインから伸びるジャブ…中日本で最も美しいジャブを持つ男。
自身の怪我と相手の怪我で試合のキャンセルが重なり、1年半のブランクが開いた。
かつて2度、日本王座に挑んだ田中だが、現在はランキングも失っている。
ようやく帰って来る田中…このブランクが田中にどんな変化をもたらせているのか。
期待したいところ。
ユ・ヨウグ 8戦5勝(2KO)1敗2分
中国でキャリアを重ねる22歳。
国外での試合は2試合目で、前回は韓国に乗り込み
無敗戦績だったソ・ハンビン(韓)を相手にドローを記録している。
昨年12月には、フリーで戦う日本人選手で、2月にWBA世界バンタム級暫定王者の
レイマート・ガバロ(比)とノンタイトルを戦ったことで話題となった中村 優也(TOP STAR)と対戦。
こちらの試合もドローとなっている。
勝利レコードの中にまだ特筆する選手は現れていないものの、
敵地ドロー、そして中村とのドローを記録しているユ。
戦歴の羅列からは侮れる相手とは思えない雰囲気を醸し出している。
田中は1年半ぶりの試合…WBCバンタム級ユース王座のベルトを手放してから5年。
絶対に転ぶわけにいかないリングは、不気味なアジア人が待ち構える。
単純に復帰を喜ぶようなカードではなく、田中のこれからがかかるようなカードにも感じる。
上下に撃ち分けられる綺麗なジャブが、復活することを願いたい。
【56.0kg契約8回戦】
アルティド・バムルンガウエア(タイ) vs 水野 拓哉(松田)
OPBFスーパーバンタム級5位/WBOアジア太平洋スーパーバンタム級8位/日本スーパーバンタム級13位
水野 拓哉 17戦15勝(13KO)1敗1分
日本スーパーバンタム級ユース王座を3度防衛。
トラブルからブランクを作り、王座も返上したが、この日のリングで復帰する。
抜群のKO率を誇り、また倒し方も豪快な人気選手。
強烈なボディブローから顔面を襲う右ストレートは逸品。
アルティド・バムルンガウエア(タイ) 不明
情報を見つけられず…。
ムエタイベースの選手で、来てみてびっくりとんでもない選手も存在するのがタイ選手。
果たして…。
前日本スーパーバンタム級ユース王者の水野がリング復帰。
傷害容疑で逮捕、不起訴により釈放というトラブルから6カ月のサスペンデッド明けとなる。
この件については様々な噂が飛び交い、はっきりとしたことは僕にはわかっていない。
逮捕されるような出来事が起こり、
そしてそれは起訴されるような事象ではなかった…というのが確定的な事実だ。
「中京のホープ」として注目を集めた逸材が、帰ってきてくれたことにホッとする。
逮捕の報道は大きくされても、不起訴や無罪はあまり報道されないのが世の常。
失ったものはあるだろうが、リングでしっかりと取り戻してくれることを願う。
■WBCフライ級ユースタイトルマッチ
【フライ級10回戦】
畑中 建人(畑中) vs ペットソンセーン・ロンリアンギラーコラート(タイ)
日本フライ級6位
畑中 建人 7戦7勝(7KO)
第13代WBC世界スーパーバンタム級王者畑中 清詞(松田)の息子として注目を集める。
国体3位の実績を持ってプロのリングに登場すると、
7連続KO勝利でWBCフライ級ユース王座のベルトを巻いた。
伸びる左は父親譲り…日本人離れした武器を持つ。
日本ランキングも上位まであと一歩に迫る中、タイ人挑戦者を迎えて防衛戦のリングに上がる。
ペットソンセーン・ロンリアンギラーコラート 7戦6勝(1KO)1敗
最近はタイ人選手の名前表記は本名となったため、ソンセン・ポーヤムの表記になる様子。
唯一の敗北は2017年12月の日本のリングで喫したもの。
相手は現在、日本/OPBF/WBOアジア太平洋それぞれのランキングに
名を連ねているダイナミック 健次(大鵬)。
以降は母国のリングで5連勝して、この日のタイトル戦を射止めた19歳。
前回の日本のリングではオープンブローの減点をきっかけに、ボディからリングに沈んだ。
2度目の日本のリングはリベンジじみた舞台。
畑中がユース王座の初防衛戦に…どんどん頼もしくなってきている畑中。
日本ランキングも上位まであとわずかに迫り、数年のうちの王座挑戦も見えてきてる。
ホープがホープとしての価値を持ったまま、ユースの肩書が外れた王座へアタックできるか…。
今のところ、傷無きレコード…その重たさは試合ごとに増していく。
■WBO世界フライ級タイトルマッチ
【フライ級12回戦】
田中 恒成(畑中) vs 田口 良一(ワタナベ)
WBO世界フライ級王者
田中 恒成 12戦12勝(7KO)
昨年、木村 翔(青木)との激戦を制して三階級目の世界王座を獲得。
試合はWBOの年間ベストバウトにも選出された。
全国ネットでのTV中継がなく、知名度と実力が全く比例しない状況に陥る中、
シビアな相手と戦い続け、激しい試合を続けての三階級制覇、そして全勝レコードを誇っている。
世界戦6試合中、元世界王者1名、現役王者1名、田中に敗北した後に世界のベルトを巻いたのが2名。
残った2名のうち、パランポン・CPフレッシュマート(タイ)はボクシングでのベルトを巻いてはいないが、
ボクシングと並行して戦っているムエタイのリングで、中国のビッグマッチのリングに上がり
ボクシングの軽量級では手に入らないような破格の大金を手にしている。
そしてまた…この日も超強豪選手を迎えることとなる。
WBO世界フライ級4位
田口 良一 32戦27勝(12KO)3敗2分
WBA世界フライ級王座を連続7度防衛。
WBA創設以降での記録では同王座の単独4位となる記録であり、
他の三団体を合わせた世界フライ級の記録としても8位タイとなる記録。
2014年から4年以上世界王座に在位し、2017年には
IBF世界ライトフライ級王座を吸収し統一王者にもなった。
日本が誇れる世界王者だった田口だったが、昨年王座を陥落。
一階級上げて、2階級目の王座に挑む。
ツヨ可愛いなんて言われるルックスとは裏腹に、退かない猛烈なファイトが持ち味。
体調を崩して試合のリングに上がったことも何度かあり、ムラはあるが…。
いい時の田口は間違いなくライトフライ級世界最強選手だったと感じる。
この試合、勝った方に期待されるのは、現役続行を明言した木村 翔(青木)との対戦だろう。
さらには5月に黒田 雅之(川崎新田)がモルティ・ムザラネ(南ア)に挑む。
獲れば、同階級の日本人王者として統一戦への期待は高まると感じる。
ムザラネもまた、日本人選手との対戦が続いており、IBFとWBOのベルトが重なることも
想定の範疇と言える流れになって来るのではないだろうか。
また、ランカーにも世界を狙える強豪が多数おり、ライトフライから上げてきそうな面々も興味深い。
さらに、田中が王座を獲った場合には、時期を見て4階級目のスーパーフライ級奪取も視野に入る。
この日の勝者が、今後のフライ級戦線を大きく動かしていくことになるはず。
試合に至る経緯も、勝者に用意されるストーリーも…申し分ない。
そして、撃ち合う両者…この試合が激しいものになるのも、高い確率で当たる予想だと感じる。
前座から見どころある試合が続き…。
最高級の試合がメインに控える。
中日本でこんなの…いいんでしょうか…。
贅沢過ぎてバチが当たりそう。
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