2017/12/10 刈谷あいおいホール-4試合目~セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2017/12/10 刈谷あいおいホール-4試合目~セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

 
 

【バンタム級6回戦】
松下 拓磨(市野) vs 中野 ウルフ(橋口)

・松下 拓磨 7戦4勝(2KO)3敗
・中野 ウルフ 12戦3勝5敗(1KO)4分 サウスポー
 

1R、ジャブを刺し合う松下とサウスポーの中野。
時折ボディへのストレートを刺し合うロングレンジの攻防。

この試合が2度目の刈谷となる鹿児島から遠征の中野。
前回は振りすぎてバランスを崩す場面が散見された中野だったが…。
…前回とは全く違う体のキレを感じる。

鋭利な左フックを撃ち込む中野、しかし松下は足を前に進め、
中野をコーナーに追い込み、強烈な左ボディを連続で叩き込む。
コーナーを逃れた中野だったが、追いかけてさらに左ボディを狙って行く。

嫌がる中野だが…前がかりになった松下を、中野の右フックが襲う。
強烈にもらってしまい、足元をふらつかせた松下。
ここで、攻める気持ちが勝ったか…松下はそのまま危険な場所に踏み止まってしまう。
そこへ追撃の中野の左ストレート。

後ろ倒しに倒れた松下は後頭部を強烈にキャンバスに強打。
打ちつけた頭部がゴムボールのように跳ね返る姿は残酷そのものだった…。
 

上体を起こそうとする松下だが、ままならず、レフリーは試合をストップ。
レフリーの力を借りて立ち上がった松下だったが、
肩をかかえられてコーナーに戻る途中、力尽きて崩れ落ちる。
 

TKOタイムは1R 1:57
 

中野 ウルフ…これでA級昇格。
前回に刈谷で見た際、僕はこんなことを書いている。
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そのうちA級に上がった後、誰もが不利を予想するリングに上がった時
こういう選手の魅力が爆発したりする…。
勝ち続けていく選手ではないと感じるが…一撃逆転の魅力は、持っている。

1回勝てばランカー…
ランカーになる為に、本当に当てなければならないパンチは、たったの1発である。
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九州の選手だから継続して見れないと思っていた。
それが目の前で…期待に現実味を帯びさせてくれた。
大振りを繰り返した前回とは違う姿…今日のウルフは強かった。
また刈谷で見れるのか、それとも遠くから報が届くのか、彼の活躍も楽しみにしたいと思う。
 
 

試合後、しばらくしてから松下が挨拶に来てくれた。
笑顔さえ見せていて、体は大丈夫そうだった。

「次は三重?」と尋ねると、笑顔で「はい」と答えてくれた。
4月に三重で市野ジム興行が予定されている。
そこに出場する予定らしい。
 

6回戦に上がって2戦連続1RKO負け。
4勝1敗からの3連敗。

松下は撃たれ弱いのかもしれない。
でも、だからと言って松下がこれ以上登れないなんて思わない。
全てを持ち合わせているボクサーなんて存在しない。

パンチ力の無さを体に刻んだテクニックとスピードで世界二階級制覇に挑む五十嵐 俊幸(帝拳)
足りない尽しを抜群のプレスと、固いガード、破格の右ストレートでミドル級を獲った村田 諒太(帝拳)
世界の頂点を争う選手でさえ欠点を持ち、それを別の武器で補っている。

松下はまだまだ行ける。
僕はそう信じている。
 
 

【56.0kg契約6回戦】
伊藤 仁也(三河) vs 今橋 将勇(姫路木下)

・伊藤 仁也 9戦5勝3敗1分
・今橋 将勇 11戦3勝(2KO)6敗2分
 

ゴングとともに前に出てくる今橋。
プレスをかけて、伊藤をコーナーに追いつめる。
「まずい!」…そう思った瞬間、教科書通りに左フックをひっかけてコーナーを脱出した伊藤。

この左フックが頻繁に当たり、一気にペースを奪う伊藤。
さらに接近したところで左アッパーを突き刺し、下半身の力を失ったように今橋がダウン。
立ち上がった今橋だが、再開後も同じアッパーからラッシュで2度目のダウン。
ここも立ち上がる今橋…ダメージを確認しながら試合は再開されるが、
直後のワンツーで前のめりに3度目のダウン。

ここで試合はストップ。
 

TKOタイムは1R 1:23
 

一気に詰めた今橋だったが、これで4連敗。
B級の壁にぶつかっている。

ただ…この日勝った伊藤も、実はB級に上がった直後に3連敗を喫した選手。
トンネルはいつまでも続かないはず…。

四国のリングで戦った高須賀 千春(フォーラムS)の評判はこちらまで聞こえているし
三重では今年大激戦の末に引退した濱口 人夢(市野)とも戦っている。
強敵とばかり手を合わせたこの時期が、次の勝利に繋がってくれればと願う。
 
 

これで伊藤がついにA級昇格。
中日本新人王決勝を5回戦で戦って以降、1年半近く…。
長かった…もっと早くに登る選手だと思っていた。
僕は「仁也は特別」なんて言っていたから、ほっとした。

垣間見せるポテンシャルの高さは、まだ出し切られていない選手だと思っている。
ここから、A級選手たちとの戦いの中で、彼の力が解放されて行くことを望む。
まわりが思っている以上に、高いゴールに辿り着いておかしくない。
 
 
 

【フライ級8回戦】
矢島 大樹(松田) vs 戸谷 彰宏(蟹江)

・矢島 大樹 15戦10勝(5KO)3敗2分 日本ライトフライ級11位
・戸谷 彰宏 10戦7勝(1KO)3敗 日本ライトフライ級12位
 

3度目の対戦となった両者。
1戦目は矢島が勝利。

全日本新人王を獲り、ランカーとなってリベンジを期した戸谷だが、大接戦の末に敗北。
しかし、この判定はあまりにも際どく、戸谷勝利の声も聞こえた試合。
グレー決着の第2戦を踏まえて、ラバーマッチとなった。

前回、突進して距離を潰し、ドロドロの根性戦に持ち込んだ矢島。
戸谷を雁字搦めにした1戦目を踏まえて…この試合がどうなるのか。
この試合を楽しみにしていたファンも多かったよう。
 

1R、前回距離を潰した矢島は、中間距離を取りたがる。
効かせるパンチを撃てる距離…KO決着で白黒つけるつもりか。
対して、突進したのは戸谷の方。前回と全く逆の構図になる。

前回、矢島に巧くやられてしまった密着した距離。
潰れた距離の中でボディを巧く突き刺し、上にも返す…。
この距離を磨いて来た…戸谷がこの試合に賭ける思いを感じてしまう。
 

2R、お互いの距離が詰まるタイミングでスリリングな攻防を展開したラウンド前半。
捉えるのは戸谷の方だが、矢島のタイミングも紙一重…その紙一重を戸谷が制していく。
ラウンド後半になるにつれ、矢島の手数が減って行く。
戸谷が細かいヒットを重ねる。
 

3R前半、前に足を進めてきた矢島。
ようやく矢島に手数が出始めると押し込まれる戸谷。
やはりこの距離を制するのは矢島の方か…そう感じているとラウンド終盤
逆に戸谷が矢島をロープに押し込み、コンビネーションをヒットさせる。
 

4R中盤、矢島の入り際に強烈な右ストレートを浴びせた戸谷。
二人のパンチがそのまま絡んでクリンチ…ほどかれたところで一気に攻めて出た矢島。
しかし接近戦で巧くいなす戸谷…逆に力を込めて撃ち込んでいく。

後半に入ると、強烈にボディを突き刺すと、矢島の腰が浮いたのを見逃さず
ボディに狙いを定めて撃っていく…さらにアッパーを上に反して矢島の顔を跳ね上げる。
 

5R、密着したところの手数で徐々に矢島が上回り始める。
戸谷は若干疲弊し始めたか、少し休んだか。
手数が落ちたところを矢島が押し込む。
 

6R後半、戸谷が一旦距離を取ろうとすると、矢島が押し込む。
密着する直前の左アッパーが有効に機能し、戸谷を捉えるシーンが目立つ。
密着すると押し合いの中、揉み合いのようになりながらパンチを交換する。
 

7R、戸谷の疲弊が見え始め、手数が落ちる。
足を使って距離を取ろうとしても、しつこく追いかける矢島はなかなか遠ざけられない。
パンチが生きる距離を作れない、前回と同じような展開に…。
ただ、矢島も距離は詰められても…手が出ない、両者疲労がピークか。
 

8R、頭を付けて押し込みながら、強烈な左右のボディから上に反した戸谷。
ラウンド中盤、矢島はロープ際で強烈なボディを放つ。
体をくの字に折って、ロープ際からエスケープした戸谷。
この日最大のピンチながら、矢島の追撃をいなしていく…。

ラウンド終盤になると、両者は最後の力を出し切るように撃ち合って試合が終了。
 
 

マイジャッジは78-74で戸谷。
ただし、微妙なラウンドも多く、それが矢島に流れれば割れる可能性もある。
 
 
 

採点は2-0
 
 
 

78-74、78-74、74-74
 

勝者:戸谷
 
 

この4カ月、戸谷は前回やられた距離を徹底的に磨き、
そして今回、自らその距離に行き、そして矢島を上回った。
どれだけ悔しかったんだろうか…たった4ヶ月で、相手の得意な土俵を上回ってしまう。

ファンは選手のその試合しか見れない。
試合と試合の間、何が起こっているかは解らないから、その試合を見てその間を想像するしかない。
前回の試合との違いを見つけたら、勝手にその間の数ヶ月を慮り、勝手に感動したりする。

ほんとは毎日酒飲んでても解らないし、煙草をふかしていても解らないから、あくまで想像だけど…
矢島に勝つためだけに捧げられた4ヶ月を感じた。
リングで戦うその背中から、積み重ねられた日々を感じた。

KOも少なく、華やかではない…どちらかというと地味な選手に当たると思う。
そんな戸谷が、全日本を獲り、ランカーとして戦っているその強さを目の当たりにした気分だった。
 
 

矢島はデビュー4連敗からランカーにまで駆け上がった男…。
そこから1敗を挟んで無敗街道を走っていた。
実に3年半ぶりの敗北…少し重たいかもしれない。

しかし、ランカー対決だったこともあり、まだランクは残るんじゃないだろうか。
因縁の対決は終わった…ここからは、様々な選手たちからの標的としてのボクサーズロードが始まる。
勝敗がすこぶる重いボクシングだが…ボヤボヤしている暇は無い。

とびっきりのドラマを持つ男が、ここからまた新しくドラマを作り始める。
ここからの矢島が面白いハズだ…絶対に見逃しちゃいけない。
 
 

 
 

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