2017/12/10 刈谷あいおいホール-ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2017/12/10 刈谷あいおいホール-ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

 
 

【日本スーパーバンタム級ユースタイトルマッチ 8回戦】
水野 拓哉(松田) vs 入口 裕貴(エスペランサ)

OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級7位/日本スーパーバンタム級9位/日本スーパーバンタム級日本ユース王者
・水野 拓哉 14戦12勝(11KO)1敗1分

日本バンタム級12位
・入口 裕貴(エスペランサ) 10戦8勝(4KO)1敗1分
 
 

リングサイドに詰めかけた大応援団。
入口の応援団は兵庫からバスで詰めかけた様子。
かたや水野は、今中日本で最もチケットの売れるボクサー。
両者の大応援団の歓声は、リングアナウンスもかき消されるほど。

ユースのベルトを持って凱旋した水野。
初防衛戦は、全国的に名前を売りつつある入口。

いつもの刈谷とは全く違う異様な空気感は、
今から行われるシビアな生存競争に対するゾクゾク感と、
タイトルマッチと銘打たれた華やか感…
そして観客の応援合戦が鳴り響く熱気。
様々にまじりあい、2F通路から見下ろす眺めはどこか混沌とした異世界のようにも思えた。
 

1R、ジャブを突きながらプレスをかけていく入口。
水野をコーナーに追い込むと、上下へ強烈に撃ち込んで先手を獲る。
しかし、カウンターで撃ち込んだ右フックを皮切りに
強烈に入口の顔面を跳ね上げた水野、試合は一気に緊張感を増す。

右フックからの左ボディアッパー、ラウンド終盤、これを立て続けに2度ヒットさせる水野。
一気にペースを奪っていくか…
そんな展開の中でお互いの右ストレートが交錯した瞬間、後ろへふっとんだのは水野。
踏み止まって応戦し、両者撃ち合いの中最初のラウンドが終わる。

両者応援団は一発当たるごとに大歓声。
 

2R、両者緊張感を高めたか、ジャブの刺し合いからやり直す。
スリッピングアウェイを駆使する水野、まともな被弾を避けていくが…
入口がジャブの中に多彩にアッパー、フックを織り交ぜずいずい攻めて出る中、水野は後手に回る。

ラウンド終盤、入口の右フックがヒットすると、両者圧力を強めて熱を帯びる。
力を込めて振り抜く水野、最後は強烈な右ストレートをヒット。
 

ラウンド間、水野の応援団はサッカーの応援に使われる「THE NAME OF THE GAME」を歌って水野を盛りたてる。
サッカー少年だった水野を盛りたてる、仲間たちの歌が「オーレーオレオレオレオレ…」と響く。
入口の応援団も負けておらず、どんどん応援合戦がヒートアップする。
 

3R中盤から、二人は頭を密着させてインファイト。
水野が2発、3発とコンビネーションで捉えると、入口が4発、5発とやり返す。
お互いのパンチの切れ味は凄まじく…試合がいつ終わってもおかしくないような印象を受ける。
 

4R、水野が左右のフックの回転を強め、入口に傾きかけた流れを獲り返す。
しかしラウンド終盤、起死回生のコンビネーションで水野を棒立ちにさせる。
そのまま6発、7発と拳を叩き込んでいき、水野の顔面を跳ね上げ続ける。

ここは左右のフックを撃ち返して窮地を脱する水野だが、
ゴング直前にも強烈なワンツーを浴びてしまう。
 

5R、密着戦の中、サイドにポジションを変えながらボディをめり込ませる水野。
このボディを起点に数々のボクサーを沈めて来た水野。
鋭利に、強烈にヒットさせ、さらにしつこくしつこく叩いて行く。

しかし入口は、水野のガードの間に幾度も鋭利なアッパーを滑り込ませる。
水野はそれでも怯まずボディを叩き続け、ラウンド終盤に差し掛かると上へも痛烈に返していく。

水野の左フックで2度ほどバランスを崩す入口だったが
ラウンド終盤に連打を撃ち込み、水野を棒立ちにさせると
的確な連打で水野の顔面を跳ね上げまくってこのラウンドを終える。
 

6R、密着した状態から次々に手を出し、水野の顔面を捉えていく入口。
しかし水野も右を強烈に叩き込んで、一瞬腰を落とす入口。
ラウンド終盤に入ると、今度は入口が猛烈な回転で水野を攻め立て
滅多撃ちとも言えてしまいそうなほど、水野の顔面を捉え続けてラウンド終了のゴング。

まさに激闘…
「名古屋で一番面白いボクシングをする」そんな風に言われる水野と
関西のとんでもなく強いボクサーに会場はさらにヒートアップ。
 

7R、水野は距離を取って戦い始めるが、最終的にはやはり撃ち合いに。
水野の強烈な左フックが、入口のテンプルを捉えると、入口が膝を揺らす。
このラウンド、ようやくポイントを奪い返したか…しかし、
判定は挽回できないほど開いているようにも感じる。

インファイトの見た目の激しさとは裏腹に、
距離が潰れて水野の強打が生きない状況にもどかしさが募る。
 

8R、入口はこのラウンドも全くペースを落とさず攻め続ける。
撃ち続ける体力は、走り続けた者だけに許されたもの。
しつこくしつこく手を出し続ける入口に対し、下から上へ叩いて行く水野。

終了直前、入口の口からマウスピースがこぼれ落ちる。
それも構わず撃ち続ける入口。

両者撃ち合いに熱中したまま、最終のゴングが鳴る。
 
 

マイジャッジ 77-75 入口。
 

3発返せば、10発返ってくるような入口の回転力。
そして、そのパンチには一つ一つに力がこもっている。
えげつない強さ…そして、そのラッシュのような回転を延々と続けられる体力。

あまりの強さに、驚愕した。
現時点で日本上位ランカーと並んでも、遜色ない力を持っているんじゃないかとさえ思えた。
 

腹から崩して、顔面へズドン…。
中盤から水野は自分のパターン通りに猛烈に腹をえぐって行ったが…
もしもう少し早いラウンドから、そのスタイル通りに戦っていたらどうだっただろうか。

KOが増えるにつれ、上を狙い過ぎる水野を感じるようになっていた矢先…
しかし、この試合中盤から見せた水野本来の姿に少し安心したようにも思う。
 
 

判定が発表される。

77-76 入口
 
 
 

77-75 水野
 

ん?

一瞬驚いてしまう。
接戦は接戦だったが…はっきりとしたラウンドが多かった試合。
どちらに流れるか微妙なラウンドは少なかったようにも思う。
水野に甘く見ても、水野は2R~6Rまでを確実に失っているようにも見えた。
 
 

まさか…
 
 

 
 
 

76-77 水野
 
 

 

その場にへたりこんだ。
大歓声も、勝利者インタビューも、全て遠い世界のことのように感じる。
 
 

わからない…自分の素人ジャッジが正解だなんて思わない。
だけど、僕にはこの試合が水野に振られる理由が理解できずにいた。
 
 
 

足早に会場を後にする観客たち。
一番後方の席に腰をおろし、ぼんやりとリングを眺める。
 
 
 

僕の思春期の頃、名古屋のボクシングには「名古屋判定」という言葉があった。
名古屋のボクサーが、ホームで戦うときは、立ってさえいれば勝ちなんて揶揄もあった。
 
 

当時、出来立てホヤホヤのWBC世界ユースバンタム級タイトルマッチ。
名古屋で行われた防衛戦だったと思う…。
相手は確かフィリピン人。

あまりにも酷い判定を目にし、僕は以降、中日本のボクシングを見なくなった。
当時の僕は、名古屋のボクシングを汚らわしいとさえ思い、
わざわざ東京に出向き、月一で後楽園ホールに通うようになった。
 
 

この日の試合は、出来立てホヤホヤの日本ユースの防衛戦。
そんな背景もあって、中日本のリングを見なくなったあの日を思い出す。

あの時ほど酷かったか…そうは思えない。
誰かが、「あれは水野の勝ちだよ」って細かく説明してくれたら
…あぁ、そうかもなぁって思うかもしれない。
 

でも、僕が中日本を遠ざかったのち、月日を置いてこの目で見た刈谷あいおいホールは
クリーン過ぎるほどにクリーンで…

敵地のボクサーに微妙な判定が流れることも日常茶飯事。
未だに昔のイメージのまま、「名古屋判定」なんて口にする東京のファンに対して、
「今の刈谷を見てみろ!」なんて思っていた。

いつしか、刈谷のクリーンさを誇りにさえ思っていたんだ。
 

だから…ショックでボロボロ涙が出た。
 
 

微妙な試合になれば、マイジャッジと逆につくことなど日常茶飯事。
でも…この試合は微妙だったか…?
誰か、あの日の試合を見ていた人、お願いだから僕を否定してほしい。
 

ボクシングとは不安定な競技で、よくわからない判定はいろんな場所で頻繁に起こる。
僕は今年、刈谷の興行には全て足を運んだが、「ない」と感じた判定は、わずかにこの1試合のみ。
かなり優秀だと思う…。
 
 

それでも、1試合の重さは、選手も関係者もファンも…皆が知っていると思う。
僕はこの試合結果に納得しない。
 

入口が強かった。
水野が勝った。

そして、素晴らしい試合だった。
 

どうか、彼らのリマッチを…正真正銘の決着を…。
ファンとしては願ってしまう。
 
 

全てが万々歳では終わらない…。
今年最後の刈谷、「いい一年だった」なんて思う帰り道を想像していたが…
2017年の締めくくりは思った通りにはいかず。
あぁ、やっぱりボクシングは人生と同じだ…なんて思う。
 

頭の中でウジウジそんなことを考えていると、
もうリングはほぼほぼ解体され、骨組みだけに。

関係者だけしか残っていない会場を後にし、冷たい外気に触れる。
少し薄暗い夕方前の冬の空。
 
 
 

また来年も、熱い戦いが繰り広げられるだろうと思う。
試合後は、戦った選手たちの未来にワクワクしてばかりだけど…
この日ばかりは、一つの重たい試合に胸を痛めようと思った。
 
 

 

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