14年ぶりの対戦 ラリー・ホームズ(米)㉕ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/07/05

14年ぶりの対戦 ラリー・ホームズ(米)㉕ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/07/05
 
 

 

前回はラリー・ホームズ(米)が、デンマークに乗り込んで挑んだIBO世界ヘビー級タイトルマッチで
ブライアン・ニールセン(デンマーク)に敗北したところまで。

内容的にはホームズの勝ちに転がってもおかしくなかった試合ですが、
47歳にして世界戦線から後退を余儀なくされたホームズ。
 

しかし、ホームズはまだ諦めず、その3ヶ月後には、モーリス・ハリス(米)と再起戦。
 

長身で長い腕を生かしたアウトボクシングをするハリス。
 

1R、長いジャブに距離が詰めれないホームズ。
しかし普段は顔に伸ばすジャブやワンツーをボディに持っていき対抗。
ハリスの長いジャブは距離をきっちりコントロールするホームズに当たらない。
 

2R、ホームズはプレッシャーをかけながらボディを叩いていく。
しかし中盤、ホームズの入り際に合わせたハリスの左フックがヒット。
これがこの試合初めての明確な顔面へのヒット。
 

3R、フットワーク豊かにホームズを攻略しようとするハリスに…
復帰以降ほとんど見せなかったフットワークを見せるホームズ。
本物のフットワークを見せてやる…と言いたげなのは伝わるのですが…
しかし月日の経過は恐ろしいもので、その場をぴょんぴょん飛び跳ねるだけに見えてしまう。

そんなお遊びもそこそこに足を止めたホームズ。
強烈な右を撃ち込まれながら、右フックを返す。
ハリスは効いていないよと首を左右に振る…。
しかし、このラウンドは素早い出入りを繰り返したハリスがやや優勢か…。
 

4R、今度はうって変わって圧力をかけて攻めていくホームズ。
しかし素早いハリスに顔面へのヒットはなかなか奪えず、ボディを中心に攻めていく。
逆にスピードの出入りで顔面へのヒットをいくつか奪ったハリス。
9勝8敗2分と平凡な戦績のハリスに、ジャイアントキリングの匂いも漂います。
 

5R、スピード負けするホームズ。
体を預け合っての撃ち合いではアッパーを入れ合うものの、
ハリスの強烈な右ストレートや撃ち下ろしがホームズを捉える場面もあり…。
ますます雲行きが怪しくなります。
 

6R、圧倒的スピード差でホームズをコントロールするハリス。
しかしコーナー付近に追い込んだところで、ホームズがワンツーで崩しての左フックが炸裂します。
ハリスも飛び込んでの右フックでやり返す。
 

7R、このラウンド、プレッシャーで下がらせながらのボディがいくつもヒット。
ハリスの右ストレートには右フックのダブルで反撃。
徐々にボディが効き始めたようにも見えるハリス。
パンチを数多く当てているのはハリスですが、腰が少しずつ浮いてきます。
 

8R、ホームズが放ったボディがハリスの股間を直撃。
ホームズに注意が与えられます。
しかし、ハリスのダメージはそこまで深くなく、試合はすぐに再開。
このラウンドもハリスの左が展開を支配します。
…が、常に後ろに下がり続けるハリス。
このあたりがジャッジへ与える印象はどうか…。
 

9R、離れてはジャブ、くっついてはボディ…ハリスが思うままに試合を展開。
ホームズはハリスを抱きかかえるしかなくなってきます。
 

10R、最終ラウンドに圧力を強めたホームズ。
強烈な右をヒットさせる。
それでもやはり最終的にはハリスのスピードに圧倒される。
最後は撃たれながら試合終了のゴング。
 
 

判定は割れ、全員が2P差…。
勝者は…ラリー・ホームズ。

ヒット数では明らかに上回っていたハリスですが
消極的なボクシングがジャッジに嫌われたか…惜しい星を逃します。
際どく再起を飾ったホームズですが…ここから2年のブランクを空けます。

もしかすると、このハリスとの試合で、自分の限界を悟ったのかもしれません。
昔のようにはやれないことは、マイク・タイソン(米)に敗北した時点で気付いていたはず。
しかし、衰えた自分でも世界のトップでやれる…そんな証明をしてきたホームズですが…。

もうそれさえ叶わない…ニールセンに敗北し、無名のハリスとの際どい試合。
そう考えてしまって仕方ないのかもしれません。
 

リングに戻ったのは49歳。
これまで、本気で世界の頂点を目指すような試合をこなしてきたホームズですが…
ここからは少し試合の質が変わります。

対戦相手は…14年前にIBF世界ヘビー級王座を争ったジェームズ・スミス(米)
彼もまた46歳になるこの日まで、現役を続けていました。

14年前の対戦では圧倒的な点差が開いたうえでの、ヒッティングによるスミスの負傷でホームズがTKO勝利。
不完全燃焼に終わった感はあったものの、お互いに効かせあったド突き合いで中身の濃い一戦。
思えばこの試合が、IBFで行われた初めての世界ヘビー級タイトルマッチ。

昔はパンパンに張っていた胸の筋肉はお互いに垂れ下がり…。
しかし、積み重ねた経験は幾重にも…。
そんな年老いた二人、リマッチのゴングが鳴ります。
 

1R、下肢の衰え激しく、突っ立った上体でジャブを突いていくスミス。
スピードはホームズの方が圧倒的に上。
ボディを中心に攻めながら、まずはホームズが右ストレートで最初のクリーンヒット。
 

2R、ホームズのいきなりの右ストレートにしっかり反応し、
もらいながらもスウェーで殺すスミス。
逆に左フックでホームズをロープに追い込み、右ストレートを撃ちつける。
しかし、その後はホームズが距離を保ちながら、ワンツーでコントロール。
ラウンド終盤にはホームズの強烈な右ストレートがスミスを捉える。
 

3R、いきなり強烈な右をヒットさせるホームズ。
中盤に入ると、距離を詰めてゴリゴリ攻め始めるスミス。
ショートフックのヒットをきっかけに、コーナー付近で血が熱くなりそうな殴り合い。
しかし、この攻防で疲れてしまったか、スミスは小休止…ボディを撃たれて苦しそうな表情を見せます。
 

4R、序盤はスピードあるジャブで支配し、強烈な右ストレートを叩き込むホームズ。
中盤は距離を詰めて左右フックを強烈にヒットさせたスミス。
撃ち合いに突入するものの、ボディを皮切りに、ホームズが近距離でも一気に有利に持っていく。
 

5R、このラウンドは少し休みにかかったか手数の減るホームズ。
スミスの方も手数は出ませんが、強烈なフックをいくつかヒット。
しかし、ラスト10秒、ホームズは強烈なボディを叩き込みます。
 

6R、長い距離ではジャブに支配され、近づけばボディを撃たれる…撃つ手が無くなってくるスミス。
展開はやや膠着し始めます。
 

7R、八方塞がりになりかけるスミス、しかし簡単に試合を投げたりはしません。
飛び込みながら左を当ててクリンチ…この形でなんとかポイントをもぎ取ろうとする…
しかし終盤、簡単にクリンチを許さず近い距離で撃ち合ったホームズ…スミスの策を簡単に潰します。
 

8R、ラウンド中にセコンドとやり取りし始めるホームズ。
「そろそろ決めるか?」とでも言っていそう。
察知したか、思い切りの左フックを振り、勢い余ってひっくり返るスミス。

再開後、ホームズが一気に詰める。
プレッシャーにずるずると下がらされ、コーナーに詰まるスミス。
強烈な右ストレートを叩き込まれたところで、意識が飛んだが…
ロープ伝いに隣のコーナーまでふらつきながら後ずさる・・・
ここでレフリーが試合をストップ。
 
 

試合は14年前と同じく、ホームズが圧倒的に支配したうえでのTKO勝利。
思えば前回の対戦、ホームズの強打を幾度も被弾しながら、起死回生のカウンターで
ホームズをあわやダウンまで追い込んだスミス。
ポイントでは勝ち目がないまま、逆転に賭けたスミスは撃たれ強さにまかせてガツガツと撃ち返し…
その両拳にアップセットの可能性を十分に秘めたまま、ヒッティングによるカットでTKO負け。
試合後は不満を爆発させた挙句、会場をつまみ出されてしまっていました。

ホームズとの対戦から2年後、ティム・ウィザースプーン(米)との対戦に勝利し、
WBA世界ヘビー級王座のベルトを巻くも、次戦ではマイク・タイソン(米)との王座統一戦。

「ボーンクラッシャー(骨をも砕く)」と恐れられたスミスは…
タイソンの圧力にクリンチを繰り返し、判定まで逃れたモノの、
「スミスは抱きついてタイソンの背骨を砕く気だった…」なんてネタにされてしまうほどの敗戦。

スミスの名は地まで落ち、二度と世界挑戦の舞台に立つことはなく…
そのまま勝ち負けを繰り返し…
それでもリングに立ち続けた…
 

この日のスミスは試合中、コーナーで幸せそうな表情を浮かべています。
あの頃、世界戦18連勝を飾っていた圧倒的なホームズと最後まで戦いきれなかった…
そんな無念を晴らす舞台に立てた…
彼にとってはこの試合、自身のボクシング人生の無念をすべて晴らす為のような試合…だったのかもしれません。

スミスはこの試合を最後に、長い長いボクシング人生を終わらせています。
 

そしてホームズですが…まだあと少しだけ、現役を続けます。
ようやく、彼のキャリアがフィナーレに…
 
 

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