「アイアンマイクと戦え。」 ラリー・ホームズ(米)⑰ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/06/19

「アイアンマイクと戦え。」 ラリー・ホームズ(米)⑰ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/06/19
 
 

 

世界ヘビー級を19度の防衛、デビュー以来48連勝の記録を残し、
ラリー・ホームズ(米)はリングを降りました。
 

その後、オフィスを構え、不動産事業に手をつけ始めたホームズ。
リングを降りた生活も板につき始めたころ…。
彼のオフィスを悪魔が訪れます。
 

黒い肌に白い髪を逆立たせる。
過去には何度も殺人の容疑者になり、実際に服役も…。
詐欺まがいの提訴を受けるのは日常茶飯事…。
バックに巨大な組織を抱え、世界ヘビー級王者でさえ震え上がる…まさに業界のドン。
 

訪れたのはドン・キング…。
 

彼の要件はたった一つ。
 
 

 

「アイアンマイクと戦え。」
 
 
 

ホームズ陥落後、世界ヘビー級はしばしの混乱期を置いて、マイク・タイソン(米)の時代へと突入。
ホームズとは違い、超絶人気を獲得したタイソン。
スーパーヒーローとしての地位を築きあげます。
 
 

圧倒的な強さゆえ、挑戦者選びの難しいタイソン。
既にこの頃、死別していた最愛の師、カス・ダマトから絶対に関わるなと言われた相手…
ドン・キングにプロモートを頼り始めます。

ドン・キングが着目したのはホームズの名声。

「ドンが私のオフィスを訪ねてきたんだ。300万ドル出すからマイクとやれ!って。
 私自身の衰えや2年近いブランクのことも忘れて、つい話に乗ってしまったんだ。」

引退から1年半後、ホームズの姿は次世代のヒーロー、タイソンの対角コーナーにありました。
 
 

実は世界王座を20度も防衛したホームズ…。
彼は貧しかった時代を乗り越え栄光を手に入れ…しかし金銭面では苦しいままでした。
この理由もまた…ドン・キング。

彼はホームズから大金の搾取を続け、ホームズが契約を破棄しようとすると、
命の危険まで感じることもあったそうで…。

「キングには怖い友人が沢山いるんだ。
 トップクラスの犯罪組織がバックに付いてるから、逆らったら家族が危ない」

「俺がボクシングで犯した唯一のミスはキングと契約したことだ。
 俺はあいつの中に悪魔を見た、あいつがあんな変な髪型をしてるのは、角を隠すためだ。
 あいつから離れようとすると足をヘシ折ってやるとか言って脅されたよ。」

引退後、ドン・キングの話題になると、泣き出しそうになることもあったそう。

生活のため、家族のため、勝ちに徹しレジェンドへと昇華したホームズ。
しかしさらなる金銭を手に入れる必要があったわけです。
 
 
 

WBA、WBC、IBF…当時の主要3団体の王者に君臨するタイソン。
方や伝説の世界王座20度防衛王者。
ついたキャッチフレーズは…「タイソンか?ホームズか?」

しかし…この頃のタイソンは全盛期真っ只中。
興行規模は拡大し続け、“泣く子も黙る”タイソンに世界中が熱狂…。
そんなタイソンから見れば、ロートルのかつての不人気王者ホームズの存在も霞んでしまい…

世間は圧倒的タイソン優位評価。
キャッチフレーズもタイソンの名が先に来てしまっています。
 

1Rのゴングが鳴るや否や、タイソンは代名詞とも言える抜群の踏み込みスピードでホームズに襲いかかる。
右のボディフックから左フックを顔面へ痛烈にヒット。
一旦距離を置いても、ジャブを出そうものなら一発で潜り込まれる。
クリンチで逃れるのが精いっぱいのホームズ。
それでもラウンド終了間際に、タイソンの入り際に右アッパーを入れて意地を見せるホームズ。
 

2R、身長差、リーチ差では圧倒的に優位なホームズ。
なんとか距離を作りたくても、圧倒的なスピードを誇るタイソン。
手を出した瞬間に飛び込んでくる。
嵐のような連打が出る前にクリンチで抑え込み…致命傷を回避するばかり。
 

3R、入ろうとするタイソンに右ストレートを浴びせるホームズ。
しかし、飛び込まれて強打をふるわれる。
考えてみれば、「飛び込んでのフック」…ホームズが最も苦手としてきたパンチです。
このラウンド終盤にもらった左ボディはかなり効いたよう。
 

4R、このラウンド、まるで全盛期のようなフットワークを見せるホームズ。
ジャブを突き刺して旋回するホームズに強烈な右フックを入れるタイソン。
この瞬間だけは二人が拮抗して見えます。
しかしとうに全盛期を過ぎ去ったホームズはアウトボクシングが続かない。

飛び込まれての左右フックを叩き込まれ、仰向けにダウン。
再開後、一気に攻めたてられ、すぐに2度目のダウン。
立ち上がったホームズ、ずるずると下がりながら強打にさらされる。

最後は滅多撃ちにされながら、アッパーを返そうとするも腕がロープに引っ掛かる…
ダメージで自分の位置さえ把握できなくなっていたホームズ。
そこに強烈な右フックで失神KO。
 

大衆の予見通りの結果とはなりますが…

新時代のスーパースターへ衝撃的な敗北。

思い起こせば、かつて衰えきったモハメド・アリ(米)がホームズに為すすべなく敗れ、
はっきりと新たな時代のバトンを渡したように…
次の時代の主役タイソンへ、はっきりとそのバトンを渡したのがこの試合。
僕にはそんな風に見えます。
 

アリがホームズに負けた翌日、幼きタイソンがアリに伝えた言葉…
「僕が大人になったら、ホームズを倒してあなたの仇を討つ」
幾年もの時を経て、幼きタイソンの言葉が現実となるわけです。
 
 

実はこの試合は、タイソンにとってかなり重要な試合でした。
これはタイソン引退後のコメント。
「ホームズ戦は、俺のマイル・ストーンだった。オールタイムグレートと初めて戦うチャンスを得たんだ。」

また、こんなことも…
「俺は冷静だった。俺が戦ったのは、アリを破ったホームズではなかった。
 ドンはホームズに十分な準備を与えなかった」
「全盛期のホームズと戦っていれば、きっと苦戦していただろう…」
 

タイソンはホームズの全盛期をかなりリスペクトしています。
ただ…僕はホームズが全盛期だったとして、タイソンが勝つんじゃないかと考えてしまう。
何故なら全盛期の時代から、ホームズを思わぬダウンを喫するのは、飛び込んでのフック…。

この苦手なパンチがタイソンのサンデーパンチ。
時代のズレた選手同士の実力の比較は、本当に難しいモノではありますが…。
僕は二人の相性は、タイソンに傾く…と感じます。
 

そして、ちょっとここで余談。

この試合後、ホームズはタイソンのパンチについて…
「強打者と言われるアーニー・シェーバース(米)よりも、ケン・ノートンよりもずっとパンチが強烈だ。」

…と称えつつ、試合前にはタイソン時代の早期終焉を予見しています。
「どっちが正義か思い知らせてやる!仮にタイソンが俺に勝ったとしても、
 奴は将来を塀の中で過ごすだろうさ。 結局勝つのはオレさ!」

また、リング下で解説に加わっていたシュガー・レイ・レナード(米)がタイソンに関して受けた質問…
「今のタイソンに勝てる相手はいるのか?」
レナードが答えた内容…
「まず居ない。自己管理を怠らず、トレーナーへの尊敬を失うことさえ無ければ。」
 

この試合の数ヵ月後、タイソンはダマトの後継トレーナーだったルーニーを解雇…。
堕落の道へ突き進んでいきます。

ホームズは自身がドン・キングに踊らされた経験から、
同じくキングに傾倒していくタイソンの未来を見据えていたのでしょう。
また、レナードも何らかしらの情報をキャッチしていたのかもしれません。
ヘビー級の時代はタイソンが衰えるとともに混戦の時代へ突入します。
 
 

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