カルバハル外伝② ウンベルト・ゴンサレス(メキシコ) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2015/10/28

カルバハル外伝② ウンベルト・ゴンサレス(メキシコ) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2015/10/28
 
 

さて、今日はウンベルト・ゴンサレス(メキシコ)のピックアップ2日目。
マイケル・カルバハル(米)との第2戦からです。
 
 

 
 

1戦目からちょうど1年、カルバハルは防衛数を重ね、ゴンサレスは順調に再起。
いよいよ時がめぐって来ます。

この試合でゴンサレスはカルバハルと共に、軽量級初のミリオンファイターとなり、
全世界の注目を集める中で試合のゴングが鳴らされます。

ゴンサレスは1戦目とガラッと戦法を変え、アウトボクシングを選択します。
これを逃げたと言う人がいますが、よくよく考えてみてください。
1戦目、インファイトで撃ち勝っていたのはゴンサレスの方です。

たった1発、ショートフックをもらっただけで敗北してしまったゴンサレス。
前回起こってしまった万が一を防ぐために、アウトボクシングを”選択した”というのが
実際のところだと思います。
 

カルバハルはオリンピックで銀メダルを獲得したアマエリート。
アウトボクシングを展開するボクサーには慣れていますし、それをことごとく沈めて来たのがカルバハル。
そんな相手に対し、前回インファイトで有利な試合展開だったにも関わらず、
それを捨ててアウトボクシングに徹しようとしたわけです。

これに、トレーナーのイグナシオ・ベリスタイン(メキシコ)の影を感じます。
マネージメントに関しては評価の低かったベリスタイン。
ただし、その試合をどう勝つか…という戦略に関してはボクシング史上最も評価の高い名伯楽です。
ベリスタインのアウトボクシングで行けるという判断で
ゴンサレスも自信を持って、アウトボクシングを展開できたのでしょう。

しかしそうはうまくことは運ばず、3Rに偶然のバッティングから目の上をカットしてしまうゴンサレス。
4Rにはリングドクターのチェックが入ります。
負傷引分では挑戦者のゴンサレスとしては負けに等しい決着。
そのまま再戦できなければ、世紀の大逆転劇の引き立て役のまま終わってしまいます。

ここで前回撃ち勝っていたインファイトに方針転換するという選択肢もあったはずです。
ドクターに止められる前に倒すと…。
ただゴンサレスは、アウトボクシングで勝ちきることを選びます。
どうしても焦りがちな展開の中で、ベリスタインやセコンドへの信頼を感じる瞬間ですよね。
目の上から大量に出血しながらも、セコンドが12R持たせてくれると…
視界が塞がりかけても、ベリスタインの戦略を貫くと…
 

それでも、やすやすと勝てる相手ではありません。
間違いなく視界に影響があるほどの出血を抱えたゴンサレス。
単純にアウトボックスするのではなく、時にはインファイトも織り交ぜながら、
ヒットアンドアウェイのお手本のようなボクシングを展開。
7Rにはカルバハルがグラつく場面も…。

よくある距離が詰まればポイントを取られ、距離を詰められなければポイントを取れる…
なんて言うインファイターVSアウトボクサーの構図には成らず、
インファイトも充分にこなせるゴンサレス、アウトボクサーを追うことに関しては超一流のカルバハル。
近づいても、離れてもどちらにポイントを振るか難しいジャッジ泣かせの展開が続きます。

そのまま最終12Rのゴングが鳴り、勝負は判定へ…
結果はスプリットデジジョン。
どっちに転んでもおかしくない判定がゴンサレスに転びます。

これで1勝1敗。
1戦目は大逆転、そして2戦目も際どい判定となれば…。

2戦目が終わった瞬間から3戦目への流れは出来上がっていました。
 

3戦目はゴンサレスの地元、メキシコでの開催。
客席には英雄ロベルト・デュラン(パナマ)の姿もありました。
ボクシングの世界的名選手が観戦に訪れるほど、注目を集めてたんですね。

かくして伝説の最終章…ゴンサレスはインファイトで撃ち合うのか、
アウトボクシングでポイントアウトを図るのか…
 

1Rのゴングが鳴った瞬間に答えは出ました。
軽やかなステップを踏むゴンサレス、それはアウトボクサーのスタイルそのものでした。

2戦目では、1戦目のスリリングな展開の再現を期待したファンから、
「ゴンサレスが逃げ回った」と猛烈な批判を浴びたゴンサレス。
それでもアウトボクシングを選択したのは、
勝ちに徹するベリスタインのボクシングで育てられた選手だったことも大きく影響しているでしょう。

試合途中でロベルト・デュランは
「こんな試合はメキシカンの戦い方ではない!」と激怒し帰ってしまいます。
それほどまでにゴンサレスはカルバハルに何もさせずにこの試合をポイントアウトします。
結果は2-0の判定勝ちでしたが、ポイント差以上に差がついて見える試合でした。

アマチュア時代から、試合に負けるといつも「負けた覚えはない!」と言い張る負けず嫌いのカルバハルが
「あの試合は確かにポイントアウトされた。」と言ってしまうほど…
傍目から見るより、向かい合っている二人はそれだけの差を感じていたのかもしれません。
 

この3戦のうち、鮮烈な逆転KOの1戦目のみを伝説の試合として押すファンも多いですが、
僕はこの3戦セットで伝説の試合だと思っています。
自分が技術戦が好きだからとかそういったものではなくて、
確かにKO決着は爽快だし面白いんですが…。
 

カルバハルが逆転KOを演じた相手が、どれほど凄い相手だったのか…
これは3連戦で見ると、もの凄くよくわかる。

ただ単純にKOが見たいのなら、それこそトップレベルの選手の調整試合を見ればいいわけです。
たまに、世界に向けて左を課題に…なんて試合に挑んで、うまくいかずにズルズルポイント取られて…
しょうがないんで全力で戦って逆転KOしました…なんて試合がありますが、
そんな逆転KOとはわけが違いますよね。

適当な相手を倒したわけじゃない…というのが、2戦目、3戦目で見せ付けられるわけですね。
インファイトでも、アウトボクシングでもカルバハルを圧倒したゴンサレスがそこにいるんです。
 

さて、伝説の3試合が終わりこれでおしまいかと思いきや、もう1試合あるんです。
カルバハルが最後の試合を彼らしい衝撃の逆転KOで飾ったように。
ゴンサレスの最後の試合も彼らしい試合になります。
 

相手はタイのサマン・ソーチャトロン
WBCを10度防衛、タイ人初の統一王者になるなど、彼もまたレジェンドの1人。
亀田 興毅(亀田)に敗れるまで現役を続けた、息の長い選手でもありました。

ウンベルト・ゴンサレス戦は2度目の世界挑戦。
試合はお互いダウンの応酬となるものの6Rにはゴンサレスが挑戦者をKO寸前まで追い込みます。
レフリーはインターバル中、挑戦者に次の回で止めると宣言します。

そこで捨て身の猛攻に出たサマン。
ゴンサレスはラッシュの中で強烈な右を浴び、大逆転KO負けでマットに這うことになりました。
結果、この試合はその年の重量級や中量級の大迫力の試合を差し置いて、
ファイトオブザイヤーに選出されることになります。
 

カルバハル戦の再現のようなお話。
サマンとは再戦することなく、ゴンサレスはこの試合を最後に引退しました。
 

マイケル・カルバハルとサマン・ソーチャトロン…
いずれもゴンサレス相手に大逆転劇を演じて、注目を浴びました。

…が、それは痛快なKO劇だったからだけじゃないと思うんです。
相手がゴンサレスだったからこそ。
伝説にまでなったのは、ゴンサレスがとんでもなく優れたボクサーだったからこそなんですよね。
 
 

軽量級史上に残る大激戦が繰り広げられたこの時代、
誰が最も凄いと言われれば、それはきっとゴンサレスなんじゃないかと、僕は思うんです。
 

伝説の3連戦がらみはこれまで!

もしかしたら、いつかサマン・ソーチャトロン書くかもしれないですけど…。
それはまた、いつかのお話。
 
 

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