あとがき マンモス 和則(中日)⑥ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2020/01/21
マンモス 和則(中日)の試合がある日、僕がいつも観戦する定位置にはある女性がいる。
日本語の堪能なフィリピン人女性…マンモスの母親だ。
「いつも応援してくれてありがとう」と言いながら、
大事な息子の試合を一番はっきり見れるその場所を譲ろうとする。
自分はマンモスのことが好きで好きで仕方ないけれど、母親のそれに勝てるわけがない。
一番見える場所で見て欲しい…、その申し出は断ることにしている。
何より、マンモスが一番試合を見て欲しいのは家族だろう。
マンモス家は父親、妹…皆が仲良しだ。
何よりマンモスが家族のことを大切にしているし、堂々と「家族が大好き」と公言している。
自分が10代や20代の頃、そんなことが言えただろうか…。
意味もなく、恥ずかしいと思ってしまっただろうと思う。
マンモスは好きなものを大きな声で好きと言える。
試合に勝てば、満面の笑顔で訪れて、負ければ目に涙をためて訪れる。
素直な人間だ。
そして、色んな人間が好きだ。
知り合いの選手が嫌いと言われると、必死に「話してみればいい奴なんですよ」なんて言ったりする。
沢山の人を好きだから、沢山の人に愛される。
見ていて羨ましくなる。
素直でいれること、人を好きでいられること、たくさんの人たちの愛情に包まれていること。
35歳の自分からすれば、一回り以上も歳の離れた青年だが
尊敬してしまうな…と思ってしまうことが多々ある。
毎回減量苦になる癖に、カッコいいからという理由で試合間にビルドアップしてみたり、
計量が終わって真っ先に乳酸菌飲料に手を出し、気持ち悪くなったから飲み物を変える…と
また別の乳酸菌飲料を買ってきてしまうほどの乳酸菌好きだったり…。
ぶっ飛んだエピソードも沢山あるイジられキャラだが、そんなおもしろマンモスも可愛くて仕方ない。
そういえば先日、試合会場でマンモスの親父さんと少し話をした。
「息子がボクシングやるってどんな気持ちですか?」
僕の不躾な質問に…。
「まぁ、好きだからしょうがねーわなぁ。」
と答えたマンモス父ちゃん。
あぁ…そうだ、マンモス、ほんとにボクシングが好きだよな…なんて思う。
マンモスvsアレックスⅡの後、西軍代表戦にコマを進めた太田 アレックス(西遠)は、そこで敗退。
その試合を最後に、ボクシングから遠ざかっている。
それからしばらく経って、偶然、マンモスと一緒にいるときに会場でアレックスと出くわした。
明らかに意識を飛ばされてリングに沈む選手を見て…
「なんであれで倒れるの?」
なんて呟くアレックス…。
アレックスはマンモスの強打をモロに貰いながら撃ち合った選手。
「いや…あなたがタフすぎるんです」
なんて心の中でつぶやく。
すっかり大きくなったアレックスの体…ライトフライの選手だったとは思えない。
現在は70Kg以上あるらしい。
「もう一度やらないの?」
「やるなら階級合わせるよ。」
「もう一回だけでいいから戦いたい。」
「もうボクシングは…」と答えるアレックスに残念そうな顔をしながら、
何度ももう一度できないかを確認するマンモス。
その場からアレックスが去った後…ガックリしたような顔で
「僕と真っ向から撃ち合いしてくれたのはアレックスだけですよ。」
「もう一回だけアレックスとやりたいです。」
そう何度も繰り返す。
リングを降りれば、ただの可愛げのある兄ちゃんだが…。
やっぱりボクサーとしての血は濃い。
血沸き肉躍る殴り合いに対する渇望を吐露する。
愛情にも才能にも恵まれている選手。
あとは…失ってしまったライバルを求めるか。
もしも、マンモスと真っ向から撃ち合うことのできる選手が現れれば、
刈谷あいおいホールはそれだけで強烈な熱が入れられることになるだろうと思う。
マンモスの2敗はいずれも足を使われ、振り回し、スタミナ切れで自滅した2敗。
マンモスをねじ伏せた選手は、未だいない。
この男と殴り合うだけで、刈谷の伝説となれる。
「殴り合いたい」
マンモスの渇望が満たされることを望むとともに…。
マンモスと殴り合える男を見てみたい…そんな自分の渇望も感じる。
それはきっと、マンモスvsアレックスの2戦を知るファンならば、多くの人が感じるものだろうとも思う。
どうあれ、まずは6回戦を切り抜けるのが先決…
しかし、いつか…いつかでいいからマンモスの願いが叶えられることを信じたい。
その時、マンモスに立ち向かう選手は、きっとアレックスのように、
ずっと忘れられない選手になってくれるだろうと思っている。
この観戦記が楽しみだ楽しみだと言ってくれるマンモス。
ある日突然、
「いつも観戦記待ちきれないので、今日の試合に勝てたらすぐに書いてください」
と言ってきた。
「他の試合もあるのでそれはできません、でも、勝ったらマンモス特集書きます。」
僕はそう返答した。
その試合で惨敗してしまったマンモス。
だけど約束は”勝ったら”。
その試合で…とは言っていない。
少しずるいけど、書きたかったものだから。
あの約束から、一年かかってしまったけど、ようやくマンモス特集を書くことができました。
そして、その一年の間に、マンモスはその強さもそのドラマもより色を濃くしていました。
“ブランク(空白)”と言われる期間…
実はその期間こそ、選手のドラマとしては最も濃厚な期間なのかもしれません。
この一年、本当によく頑張った…。
きっと、焦りも、不安もあっただろうと思う。
でも、マンモスにとっても、僕にとっても必要だった一年。
勝ってくれてありがとう。
そして、この先もまだまだ頑張ろう。
一緒に頑張ろう。
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