三津山ジムへ 篤 弘將(三津山)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/08/21
層の厚いライト級において4度の世界挑戦を実現させた男。
畑山 隆則(横浜光)との激戦は記憶に残る試合となり、
この試合がきっかけでボクシングを始めたというトップボクサーも多い。
畑山戦の敗戦のあと、しぶとく再起し、OPBF東洋太平洋スーパーライト級王座に挑んだ坂本。
しかし、畑山 隆則の世界王座陥落以降「日本中量級で一番世界に近い男」と
呼ばれることとなる当時のOPBF王者、佐竹 政一(明石)に敗戦し、
坂本ファンが抱いた5度目の世界挑戦はこの時点で潰える。
その後、2年半のブランクを空けて復帰した坂本。
後楽園狂いを虜にした坂本の復帰に期待は高まった。
そんな坂本ファンに現実を突きつけた地方ボクサーがいる。
柏樹 宗(三津山)。
当時の戦績は22戦12勝8敗2分。
世界のトップで戦ってきた坂本からすれば、格下と言っていい相手である。
そんな柏樹が、復帰してきた坂本を5RTKOで沈めてみせる。
この勝利で初めて、柏樹という選手が練習生時代のスパーリングで、
畑山を開始10秒でダウンさせたという伝説を持っていたことを知ったファンも多いだろう。
重ねた敗戦の中には佐竹に喫したものもあり、
強豪と拳を合わせながら、格上に噛みついてその名を浮上させる…
“強い地方ボクサー”そのもののような彼のボクサーズロード。
坂本戦の勝利から一気にOPBF東洋太平洋スーパーライト級王座への挑戦をつかんだ柏樹。
相手は佐竹からベルトを奪っていたキム・ジョンボム(韓)。
この試合では不運も重なり1RKO負け。
そんな柏樹の再起戦が組まれたのが、2006年4月2日。
アスウィン・カブイ(インドネシア)を迎えて行われたカード。
4Rでダウンを奪いながら、逆転の7RTKO負け。
まさに熱戦となったメインイベント…。
当然、専門誌では内容が取り上げられた試合だっただろうし、
このメインイベントを知っているファンは多いと思う。
しかしこの日、前座の4回戦で繰り広げられた熱戦を知るファンはどれだけいるだろう?
少なくとも、僕はこの試合をつい最近まで知らなかった。
2006年度中日本フライ級新人王トーナメントの1回戦として行われた試合である。
この話の主人公、篤 弘將。
血飛沫の舞う熱戦を演じた4回戦ボクサー。
思春期にTVで見て衝撃を受けたK-1の影響で、キックボクサーに憧れた篤。
しかし、環境が無く、格闘技なら何でも…と、最初に手を着けたのは柔道。
高校生から競技を開始して初段にまで辿り着く。
その後、縁あって出会ったキックボクサー 松永 敦に師事。
環境の整わない中、体を練り上げていく。
しかし、松永が福岡へ移ることとなり、キックの師を失うこととなる篤。
そんな篤に松永が紹介したのが、ボクシングの三津山ジムだった。
初めは乗り気ではなかったという。
キックボクシングに目覚め、キックの世界を夢見た篤にとって、
パンチしかないボクシングはそれほど魅力的には映らなかった。
…ジムの門を叩くまでは。
静岡の三津山ジム。
現役時代からプロモーターを兼任してリングに上がった三津山 立直(串田)が開いたジム。
当時は飯田 大介(三津山)、宮城 ユウヤ(三津山)、村越 裕昭(三津山)、柏木 宗(三津山)ら、
錚々たる顔ぶれ。
中でも飯田 大介と言えば、新井田 豊(横浜光)の世界前哨戦となった日本タイトルマッチで
挑戦者として選ばれ、圧倒的不利予想の中での引分。
あわや新井田の世界挑戦を潰しかけた男である。
あと1R、飯田がポイントを獲っていれば、世界ミニマム級の2000年代は変わっていたかもしれない。
デビュー戦からのちの日本王者と対戦し、敵地での対戦をいくつも乗り越え…
静岡の強者を印象付けるボクサーの一人でもある。
「静岡のボクサーは強敵と戦う」
昔からマニアの間で使われる言葉だったりする。
東京と名古屋に挟まれ、必然的に敵地に乗り込んでの試合も増える。
静岡は数多くではないものの地元興行が打てるだけマシ…とも思えるが
それでも地方ボクサーが抱える不利は小さくない。
後楽園での地方ボクサーの勝率は圧倒的に低く…
実力的に差のあるカードが組まれることも珍しくない。
逆に力があると、ランクというおいしいエサを手に入れるまで
後楽園でランカー達と手を合わせるチャンスから遠のくこともある。
地方から飛び出してランクに名を連ねる…
それは様々な障壁を両手の拳で討ち砕いた証だったりもする。
ボクシングで地方と言えば、ざっくりと東京以外を指すことが多い。
興行の半数以上が後楽園で行われることもあり、
大阪、名古屋、福岡と比較しても、聖地の盛んさは抜きん出ている。
静岡…となると大阪や名古屋よりもさらに地方の色を濃くする。
そんな静岡ではメインに10回戦が行われない時代もあったりする。
しかし、この頃は1興行で3試合も10回戦が行われることもあった時期。
三津山ジムにはプロボクサーが数多く顔を揃え、
会長は何としてもチャンピオンを出したいと情熱を振りまく。
見学に訪れた篤の目の前で繰り広げられたスパーリング。
宮城 ユウヤの姿に度肝を抜かれる。
あまりの凄まじさに恐怖さえ覚えたという。
「ここでボクシングを学ぼう…」
強さに憧れた男は、殴り合いの道を歩み始める。
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