ホームズ時代の幕開け ラリー・ホームズ(米)③ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/05/23

ホームズ時代の幕開け ラリー・ホームズ(米)③ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/05/23
 
 
 

前回は、世界挑戦のチャンスさえないと思い込んでいたラリー・ホームズ(米)が、
アーニー・シェーバース(米)を相手に、千載一遇の世界挑戦者決定戦を勝ち抜いたところまで。
 
 

世界戦の相手となったのは、ケン・ノートン(米)
ジミー・ヤング(米)との挑戦者決定戦を制したところで、正規王者だったコーリー・スピンクス(米)
モハメド・アリ(米)との試合を優先し、スピンクスは王座剥奪…。
挑戦権を獲得していたノートンが認定により王座を手に入れていた形。

ここまで世界挑戦はジョージ・フォアマン(米)とアリに敗北しており2戦2敗。
しかしアリと戦った世界戦は議論を巻き起こすほどの接戦。
それ以前にはNABF北米ヘビー級タイトルマッチで
アリの顎を叩き割った上で勝利したこともあるこの時代のメインキャストの一人。
 
 

ホームズの世界初挑戦が幕を開けます。

1R、クロスアームブロックで顎を守り、下からジャブを突き上げるノートン。
ノートンの周りをサークリングしながらジャブを突き刺すホームズ。
ハイスピードの応酬で中盤までお互いにクリーンヒットはなく…
ラウンド終盤にはホームズが足を止めていくつか軽いヒットを奪います。
 

先に距離をつかんだのはホームズ。
2Rには右から入るなど、攻撃のバリエーションを増やし、左右ともホームズがヒットを増やします。
中には、ノートンの体が泳ぐほどの強烈なヒットも。
 

しかし3Rに入るとノートンも距離をつかみ、左がヒットし始めます。
ノートンはブロックも強固で、お互いのヒット数が少ない中、左の刺し合いが続く…。
時折、不意を突いたように繰り出されるノートンの右に、ホームズはしっかり反応し、
カウンターを合わせに行くも、お互いに頭を外す…。
紙一重の大砲同士のカウンター合戦、ハイスピードのジャブの応酬、
クリーンヒットをなかなか許さないディフェンス。
技術戦の旨みが濃厚に詰め込まれた、ピリピリする展開。
 

4R、このラウンドのオープニングヒットはノートンの強烈な左フック。
ホームズが気を抜いたタイミングで振りぬいた一撃。
まさに一瞬たりとも気を抜けない試合…。

このラウンド、わずかにノートンが優勢に進めるものの。
ラスト30秒で足を止めたホームズが連打をまとめて攻勢をアピール。
 

5R、お互いにはっきりとしたヒットが少ない展開の中…
ノートンの目が覚めるような右のロングフックがホームズを捉える。
事前にボディをいくつか撃って伏線を貼り、一瞬ダッキングしてフェイントを挟んだノートン。
ホームズの意識が下へ向いた直後に振りぬいた右。
これで倒れないかというほどの強烈な一撃。

流れがノートンへ傾きかける。
ホームズのジャブをしっかり外しつつ、自らのジャブをしっかり当てる。
そんなノートンのボクシングに、はっきりとしたアウトボクシングに切り替えたホームズ。
入り際に強烈なワンツーでお返し。
 

15R制のこの試合、前半5Rはわずかにホームズ優勢か…
 

6R中盤にも5Rと同じような右を撃ち抜いたノートン。
お互いにヒット数が少ない分、このクリティカルヒットがより引き立ちます。
 

7Rは延々とジャブの刺し合いが続いた3分間。
ノートンがヒット数でも手数でも上回る…

「アリのコピー」であるホームズにとってリードブローは生命線。
キャリアの中で初めて、リードブローで上回られる展開。
 

8R開始早々、いきなりホームズの右の4連打から一気に撃ち合いへ突入。
足を止めたホームズの強さは格別…しかし、なんとノートンはこの撃ち合いも互角に展開。

ノートンは正確で丁寧なジャブから角度のある左フック、多彩な左でインファイトをコントロール。
何重にも貼りめぐらせたフェイントからパンチを繰り出しホームズを捉える。

勢いに乗るノートン、溜まらず足を使ったホームズを追いかけて叩きつけるような左フックを叩き込み…
しかしホームズも、ジャブを差しながら右ストレートを交えて反撃。
 

9R、ホームズはノートンのジャブを丁寧にブロック。
相手のジャブを封じてフットワークに乗りながらジャブを突き刺す。

前半の優位に進めた形に引き戻そうとするものの…
突然振り抜かれる右を強烈にくらってしまう。
また仕切り直して、アウトボクシングをするものの、このランド2度目の痛烈な右。
流れを引き戻したくとも、この右で分断されてしまうホームズ。
 

10R、ホームズは徹底して足を使う。
ラウンド序盤にいくつか左をもらうものの、ようやくこのラウンドで、ノートンをコントロールすることに成功。
ノートンは少し疲労が見え始める。
 

ここまで…中盤を優位に進めたノートンが前半のマイナスをわずかに逆転したようにも見えます。
…が、流れはホームズにあるようにも。
 

11R、ここでノートンがまた盛り返す。
足を使って捌かれながらも、ホームズがロープに詰まったタイミングで左右のフックを叩き込む。
軽いジャブで捌ききろうとするホームズにブーイングが向けられる場面も。
 

12R、ホームズ自身もポイントをリードされていることを感じていたか、
打って変わって足を止めての撃ち合いに出ます。
ラウンド前半は互角だった撃ち合いが、ノートンが疲弊したことでホームズが撃ち勝つ展開に…。
 

13R、中盤を不利に立たされ、ここから1Pでも獲られてしまえば王座に及ばない可能性もあるホームズ。
このラウンド、起死回生の一撃が決まります。

下がりながら放ったワンツー。
それほど強烈に見えなくてもヘビー級の威力。
タイミングが重なれば、大きなダメージを残すこともよくある光景。
効かされたノートンは膝が伸び、これ以降、上半身と下半身の連動がチグハグに。

こうなるとホームズの独壇場。
ホームズのパンチがノートンを捉え続け、グロッギー寸前。
現在ならストップされてもおかしくないほど効かされたノートン。
なんとかラウンド終了まで耐え抜きます。
 

14Rのゴングが鳴っても、ノートンは背負ったダメージを引きずり…。
ホームズがKOするか…という展開かと思いきや、ホームズも撃ち疲れを見せ…。
ラウンド終盤にはノートンがホームズをコーナーに追い込んで連打を浴びせる。
採点がどう転んだか…そんなことがどうでもよくなりそうなほどの死闘。
 

試合は最終15Rへ…。

このラウンド、前半を優位に進めたのはノートン。
しかし左右のフックをカウンターで決めたホームズが盛り返し…
そのままホームズが押し切るかと思いきや、ノートンも盛り返しホームズが棒立ちに…
ノートンが倒すか…といったところから、今度はホームズが盛り返しノートンがダウン寸前…

この試合を通じてずっと一進一退だった両者の主導権争いを、ギュッと1Rに濃縮したような最終15R。
観客は総立ちになり、ハイボルテージの熱戦に終了のゴングが響きます。
お互いに耐え抜き、結果は判定へ…。
 
 

何をどう取ってもおかしくないだろう判定。
ひとつだけ言えるのは…際どい結果になるということ。
誰もがそれを感じ、判定が読み上げられる間静まり返る観衆。
 
 
 

判定は…2-1(143-142、143-142、142-143)
ラリー・ホームズ…。
 

歓喜、悲鳴、怒号が入り混じる地鳴りのような歓声…それはわずかな時間。
歓声はすぐにざわめきに変わる。

かつてアリとの死闘で、疑惑を呼ぶ判定の末に散ったノートン。
対するはまだ無名のホープであり、アリによく似たスタイル。

人気からしてもファン感情からしても、ノートンに勝たせてやりたかった…。
そんな思いが渦巻いているように見える試合後のざわつき。

この試合で王座から陥落したノートン。
実は世界戦で1勝もしていない元世界王者はボクシングの長い歴史でもノートンただ一人。
珍記録とも言えますが…その実、元世界王者として全く違和感のない実力の持ち主であることは…
アリやホームズと繰り広げた死闘が証明しています。

もし…ボクシングが12R制だったらなら…そんなタラレバを言いたくなるほど、拮抗した試合。
この試合がノートンの最後の世界戦となるわけですが…

僕のマイジャッジは…143-142で、ノートン。
どちらが勝ってもおかしくないと思えば思うほど、この試合で世界戦線から脱落したノートンへの哀愁が深まります。
 

しかしながら、この熱戦は以降のホームズをより強くし、ホームズ時代を築くきっかけとなる試合。
ここから語るホームズ時代は、ある意味、ノートンが作ったと言えるのかもしれません。
 
 

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