イーストンの暗殺者 ラリー・ホームズ(米)① ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/05/19

イーストンの暗殺者 ラリー・ホームズ(米)① ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/05/19
 
 
 

「あんた黒人だった事あるかい?俺ぁあるぜ、貧乏だった時にな。」
 
 

ラリー・ホームズ(米)の幼少時代。

ホームズの家庭は貧しかった。
父は庭師で、ホームズは11人兄弟の4男。
幼いころに両親は離婚し、実質母親一人で兄弟は育てられた。

家族は生活保護を受け、ホームズは中学校を中退して洗車場で働いた。
スポーツ万能で、フットボールやバスケットボールが大の得意だったが、
働くしかない状況で、次第にスポーツからは離れてしまった。
 
 

性格は驚くほど素朴だったという。

ボクシングを始めたのは意外と遅く、18歳の時。
何かに打ち込んでみたいと、トレーナーのアニー・バトラー訪ねて師事。

米国ではボクサーがいきなりプロになる文化はない。
どの選手もある程度のアマチュアを積んでプロになる。

ホームズも例外ではなくアマチュアでキャリアを消費。
アマチュア戦績で19勝3敗という記録が残っている。
 

自身のトレーナーのアニー・バトラーと、モハメド・アリ(米)のトレーナー、アンジェロ・ダンディ。
両者には交流があり、たまたま見に行ったアリのエキシビジョンでホームズとアリは対面する。
ダンディの計らいでこのエキシビジョンに飛び入りしたことがきっかけで、
ホームズはアリのスパーリングパートナーに抜擢。

この頃のアリは懲役拒否から3年のブランクから復帰し、ジョー・フーレジャー(米)に初の敗北を喫した直後。
既に元金メダリスト、元世界王者の肩書を携えていた…。
出会いから3年の間、アリをついて回り、フィリピンやザイールにも同行し、
「スリラーインマニラ」や「キンシャサの軌跡」など、アリが作った数々の歴史的場面をその場で目撃した。

格上のスーパースターと手を合わせる日々の中、当然見本はアリとなり、
ホームズのボクシングはアリのスタイルと重なっていくこととなる…。

その後、体に刻み込んだアリスタイルを根底に、
さまざまな世界のトップ選手のスパーリングパートナーとして腕を磨く。

ジョー・フーレジャー(米)、ジミー・ヤング(米)、アーニー・シェーバース(米)
アリ時代後期を彩る面々である。
 

ボクシングを始めて4年。
ミュンヘンオリンピックを目指していたが、デュアン・ボービック(米)に敗れてその座を逃す。

このボービックものちにプロ転向。
52戦48勝(42KO)4敗という記録を残し、米-ミネソタ州王座を獲得。
ケン・ノートン(米)などと対戦した強者の一人。
 

オリンピックへの道が閉ざされたホームズはこの時点でプロ転向。
デビューは24歳である。
 
 

デビューするや否や2年半で16連勝。

17戦目となったロドニー・ボービック(米)戦。
このあたりでは既に注目を集める存在になっていておかしくないのだが、実は全くの無名。

「アリのコピー」と呼ばれるスタイルが人気を博さない。
既にそう見抜いていたのが、稀代のプロモーター、ドン・キング。

アリをリスペクトしていたホームズは自分がアリから学んだ事を否定せず、
そんな素朴なホームズを、過激なアリに対して、退屈と感じたファンも多かったようだった。
 

キングはホームズを人気選手に育てる気はなく、名のある選手と当てることもなく…。

ホームズ自身もそれを察しており、世界チャンピオンになれるとは思っておらず。
ただただ家族の為にリングに上がっていたそうな…。
 
 

そんな状況のボービック戦。
自身の状況を冷静に見つめられる性格は、リングの上でも発揮された。
 
 
 

1Rから左で相手をコントロール…
フットワークとスピードのあるジャブでコツコツと当てながらほとんど被弾せず。
 

2Rにコンビネーションを交え始めるとボービックは成す術なくもらうばかり。
ボービックが手を出しても出しても、ホームズは届く距離にいない。
 

3Rに入ってわずかに押し込んだ時間が10秒程。
ボービックの見せ場はわずかにここだけか…

既にスタミナが切れたように休みながらになるボービック。
するとホームズ…まるでボービックを休ませるかのように手数を減らしてしまう。

ホームズが警戒したのは、撃ち疲れだったようにも見えます。
生涯にわたって、ホームズはこの撃ち疲れを嫌い、無理に攻め込むことはありませんでした。
それはもしかすると…アリがジョージ・フォアマン(米)の撃ち疲れを誘い、
伝説の大逆転勝利を飾ったキンシャサの奇跡…それを目の前で見ていたからなのかもしれません。

コンビネーションで攻めればすぐにでも倒せそうな相手でも、
ホームズはクレバーに、極力ラッシュを控えてコントロールする。
 

6R開始直後からいくつかコンビネーションを撃ち込むホームズ。
やはり、少しでも連打されると見事なほどに全てもらってしまうボービック。
しかしそれ以上攻めていくことはなく、左をコツコツ刺していく…。
まるでいたぶっているかのよう…その姿はやはり、アリの模倣にも見えてしまう。
 

このラウンド、タイミングのいいワンツーでボービックが吹っ飛ぶ。
後ろにあったロープに救われるが確実に意識が飛んだだろう一撃。
完全なKOチャンスでも…ホームズはそれ以上攻め込まず。

しかし、その後の流れの中でホームズが放った撃ち下ろしの右がテンプルを捉えると…。
一瞬間をおいて、ボービックの体がグニャリ…。
倒れずに意識を戻したボービックでしたが、たまらずレフリーが割って入り、試合終了。
 
 

この試合からさらに5連続KOで連勝を伸ばし、迎えた相手が元州王者のロイ・ウィリアムス(米)。
このあたりから対戦相手の質がグッと上がる。
 

ゴングとともに飛び出していくホームズが、スピードのあるジャブで一方的に支配する展開。
しかしながらコンビネーションをほとんど使わず左を刺すばかりのホームズ。
それで試合を支配してしまうのも凄いですが、3Rあたりからはウィリアムスも流石に慣れてきたか、
ホームズのジャブを外していく。

中盤、丁寧にジャブを外したウィリアムスが攻め込む場面が時折出始めると
ホームズは機を見て狙いをボディに切り替え…腹へ左右を叩き込んでいく…。
ウィリアムスの意識が下に行くと、またジャブをコツコツ撃ち込んでいく。

後半に入ると、ジワジワボディが効いてきたか、
ウィリアムスはボディを撃たれるのを嫌がって、後ろへ下がり始める。
最終ラウンドには撃って出るものの、振りが大きくなるとホームズがカウンターで捉える。

結局最後まで主導権を握り続け、10R判定でホームズが完勝。
この試合の採点は解らないけれど、僕のマイジャッジではホームズのフルマーク。

これでデビューから22連勝。
このレベルでも付け入る隙が全く見当たらないように見えます。
 

さて、これでも世界は遠いと思われたホームズ…。
当時の二大プロモーターと言われたドン・キングとボブ・アラムの争いが、彼の運命を変えていきます。
 

そんなこんなで今日はここまで。
では!!
 
 

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