2019/08/24 -愛知・刈谷あいおいホール(一部)- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2019/09/15 -愛知・刈谷あいおいホール(一部)- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

この日は中日本では数年ぶりの二部興行。
日中と夜に一つずつ、二つの興行が同じ場所で行われる。
 

一部は中日本・西部日本新人王対抗戦と、熊本でWBOアジア太平洋王座の防衛を果たした
森 武蔵(薬師寺)の凱旋試合となるノンタイトル8回戦。

名匠 イスマエル・サラスの元でトレーニングを積んでいる武蔵が、
その途中経過をリングの上でお披露目する。
 

前々日の夜、知人に誘っていただいた店でサラスを紹介される。
サプライズな演出だった。

サラスの母国はキューバ、母国語はスペイン語。
現在はカリフォルニアにジムを持っており、英語もしっかりとできる。

しかしこちらはカナダに滞在したこともあるが、ほぼボディランゲージで乗り切った3か月。
妹が国際結婚し、義弟がペルー人なので、スペイン語には馴染みはあるが…
逆に頼り切りになってしまい、書いてある文字を発音できても意味は理解できない。

サラスも奥さんは日本人だが、自由に日本語を操れるわけではない。

「マイイングリッシュイズノットベリーグッド」

そう伝えると、
「ダイジョーブ、カラダデハナシマショウ。」と答えるサラス。
少しほっとして、英語と日本語が交じり合う片言で会話する。
 

カラシ蓮根を「ベリーナイス」と言いながら頬張るサラス。
日本もアジアも大好きだそうだ。

日本だけでなく、タイでもトレーナーを務め、6人の世界王者と2人の金メダリストを創った。
さらには北朝鮮でもアマチュア選手を育成したことがあり、そのころの写真も見せてもらった。
古い写真には若かりしサラスと、ヘッドギアをつけた北朝鮮人ボクサー。

今年62歳、筋骨隆々の肉体に驚いていると。
「ミットを受けないといけないから」とニコリ。
 
 

ふざけた話もしつつ、話の中心はやはり武蔵。
こちらでも有名な武蔵の練習量についてはサラスも認めるところ。
「マウンテンウォーキング、ムサシ、No1」
 

武蔵がこれから強くなっていくことをボディランゲージで一生懸命説明するサラス。
武蔵はあちらでの生活もうまくやれているようだ。
WBA世界スーパーウェルター級王者のエリスランディ・ララ(キューバ)が特に武蔵を気に入っているそう。
「ムサシ、ファミリー」
そう笑顔で話すサラスに心底安堵する。
 

少し意地悪な質問をしてみた。
片言の英語と日本語、ボディランゲージ込みなので双方の言葉はあくまで意訳。

「フェザー級やスーパーフェザー級では日本国内ではチャンスが少ない。
 アメリカでやるとしても、アメリカにコミュニティを持っていない日本人にとって
 アメリカのリングでチャンスをつかむのはかなり難しいのでは?」
 

サラスの答えは…
「ノープロブレム」
 

「私は23人の世界王者を作った。世界中のプロモーターが私を認めている。
 ノープロブレム。安心して。」
 
 

このときの会話の、僕の立ち位置は森 武蔵のイチファン。
世界的名トレーナーは、自分の教え子のファンに対して、諭すように安心を与えた。
 
 

世界を獲れるかどうか…そんなことは誰にもわからない。
ボクシングの世界に100%など存在しない。
そんなことは、僕もサラスも分かっている。
 

そのうえで、ノープロブレムと力強く言い切るサラス。
まるで心を読むように、僕が欲しかった言葉をくれた。
彼が世界に名前を響かせる名トレーナーである理由の一つが、少し見えたようにも感じる。
 
 

武蔵の今回のキャンプは単独でのものだ。
19歳の少年が、一人で海外に行き、飛び抜けた才能に囲まれる中でのトレーニング…。
打ちのめされる場面もあるだろう、言葉の通じない孤独感もあるだろう。

しかし…僕が武蔵のカリフォルニア修行に感じていた、
すべての心配事をサラスの言葉が魔法のように取り払っていく。

「きっと、武蔵はサラスに出会えてよかった。」

会食が終わるころには、強くそう感じていた。
 
 

当日、二部興行の為、試合は午前中の11:00開始。
10:30には会場がオープンするが、時計を読み間違えて11:00ギリギリに到着。

いつもの刈谷とはどことなく違う空気を感じる。
多分、それは会場自体がどうということではなく、こちらの気の持ち方。

中日本新人王と、西部日本新人王がぶつかり合うこの日。
いつもは、見続けてきた中日本の選手同士の対決が多く、「どっちも頑張れ」の思いばかり…。
この日は、「中日本新人王たち…どうか勝ってくれ」の思い。
 

自分の気持ちのコンディションで、見える景色は変わる。
 

さて、ここでいつもの言い訳前置き

自分はファンではあるが、熱狂的なマニア程の肥えた目を持ってはいない。
自分より凄いと思えるファンはそこらじゅうに転がっている。

そして、TVで観戦するのとは違い、1つの角度しか見れず、スロー再生もない。
レフリーで隠れたタイミングでパンチが入っても気付けないし、かなり離れた自由席での観戦。
ここに書く内容に誤りが多分に含まれることもある。

先に言い訳をしておきたいわけではなく、そういうものだと言っておきたい。
同じ試合を見ていても、違う感想を持つファンもいるわけで…。
ここに書いたことが正解ではないと…。
それだけは認識した上で、読み進めていただきたい。
 

会場のいつもの場所に立ち、観戦の準備は万端。

この日、中日本新人王達が最初の壁に挑む。
そして、それに勝った中日本新人王は、次なる壁に挑むため、敵地に挑んで行く。
勝敗を見守り、そしてよりシビアな戦いへ送り出す…そんな日。

リングに眞野リングアナの声が響き、第一試合の選手二名が入場する。
どうか勝って欲しい…そんな思いが行き過ぎて、若干の吐き気を催す中、試合開始のゴングが鳴った。
 
 

 

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