2019/06/30 -パールガーデン TopStar興行Ⅲ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2019/06/30 -パールガーデン TopStar興行Ⅲ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

■WBKアジアスーパーバンタム級王座決定戦
【スーパーバンタム級8回戦】
中村 優也(TOP STAR) vs 勝田 邦裕(フリー)

中村 優也 23戦17勝(13KO)4敗2分
勝田 邦裕 5戦3勝(1KO)2敗
 

Box Fightで腕を磨き、40歳目前にしてタイのリングでデビュー。
今年45歳となった勝田がWBKアジアスーパーバンタム級王座に挑戦する。
対するは今年、WBA暫定王者と対戦したばかりの中村。

知名度も実力も、圧倒的な開きが予想されるような試合、いきなり勝田がドラマを巻き起こす。
手数少なく見合う時間帯、中村のガードを割るように勝田のワンツー、アッパーが突き刺さる。
さらに、渾身の右ストレートが中村の顔面を捉え、中村は膝を揺らしながらクリンチ。

中村はダーティーには足を賭けて勝田を押し倒そうとする。
ここは踏ん張って耐えた勝田。
絶体絶命のピンチに、敵地を生き抜いてきた綺麗ごと抜きの姿を見せる。

レフリーが二人を引きはがし、ファイトを促した瞬間…
中村の膝がスコーンと落ちる…明らか過ぎるほどに効いている状況。
攻め込む勝田だが…アマチュア経験も深く、高い技術も持ち合わせるのも中村。

勝田の攻撃をいなして、大きな左右フックを叩きつけていく。
1R終了間際には勝田がフリーズする場面も。
 

その後立て直した中村は、ノーガードで勝田を攻めさせ、
勝田のパンチを外しながら自身のビッグパンチを叩きつける試合展開を作る。
しかし、勝田はそのビッグパンチを幾度も幾度も浴びながら恐れることなく、
余裕の戦いぶりを見せる中村の顔面を強烈に跳ね上げる場面を何度も見せる。
 

マイジャッジ 77-75 中村
 

公式ジャッジは思った以上に開く。

80-72
79-73
79-73

3-0で中村。
ビッグパンチを浴び続けた勝田。
ダメージで見れば納得の範囲だと感じた。
 
 

魅せるボクシングを貫いた中村。
ノーガードでパンチを外していこうとする中村の顔面を毎ラウンド跳ね上げた勝田。

力の差はあったように思うが、1Rにはビッグドラマを巻き起こすストレートを叩き込み、
撃ち終わりにぶち込まれる中村の強烈なフックに耐えながら
最後の最後まで、逆転KOのスリルを抱かせ続けた。

「日本一諦めの悪い男」

そのあだ名に相応しい試合だったように感じる。
 

アジア4冠目のベルトを手に入れた中村。
ノーガードの挑発的な試合ぶり、いざというときに見せるダーティーなテクニック
試合中に相手セコンドの声に反応して、セコンドに向かって歩き始めるなど…。
頭の固いファンを鼻で笑うような戦いぶりは、良くも悪くも格闘家の自己顕示欲を感じさせる。
そして、面白いものを提供したいという純粋な欲求も。

この試合を最後にしばらく休養に入るそうだ。
たった半年の間に一気に名を知らしめたフリーボクサー。

リングの外で何を巻き起こすのか…また、リングの中に戻って来ることはあるのだろうか。
彼の休養に対して悲観的な思いはない。
きっとどこにいても中村 優也は中村 優也だ。
 

初代WBKアジアスーパーバンタム級王者…このベルトが、この王者がどこへ向かうのか。
きっと誰にも予想はできない。

ベルトを獲れば防衛戦…そんなある程度決まってしまった未来予想図など、
新たな時代のベルトには存在しないのだ。
 
 

 

■WBKアジアフライ級王座決定戦
【フライ級8回戦】
恵良 敏彦(TOP STAR) vs ジャック・アミサ(インドネシア)

恵良 敏彦 14戦11勝(7KO)3敗
ジャック・アミサ 70戦21勝(14KO)47敗2分
 

昨年11月に対戦した際には、アミサが勝っていてもおかしくなかった試合で勝利した恵良。
もう一度アミサを呼び、完全決着をつける試合となった。

格下として呼び寄せられることの多いインドネシア人。
アミサもそうして呼び寄せられた海外の試合で多くの試合をこなしている。
そして時には勝っていた試合を、地元優位の判定で奪われるなどしながら、70戦の戦歴を残している。
決して無気力外国人ではないのは、恵良との1戦目が示している。

格下としてではなく、接戦を演じたライバルとして日本人の前に立ちはだかるインドネシア人。
この構図は滅多にお目にかかれるものではない。

アジア人を名もなき噛ませ犬として扱う価値観とは、全く相違する世界観のリングだ。
 

手の内を知る者同士、フェイントの掛け合いで始まった1R。
アミサの強烈な左右フックが恵良の顔面を捉えるシーンが訪れる中、
恵良のボディがアミサのみぞおちに刺さり、一瞬アミサの動きが止まる。

しかし、アミサも恵良のボディに連打を撃ち込みながら、恵良をコーナーまで押し込むシーンを作る。
 

2R開始早々、アミサのボディに狙いを定めた恵良が、
鋭利にアミサのボディをえぐると、アミサは膝をつくダウン。
立ち上がったアミサ…ここで体ごとぶつけるような渾身の右フックを振るい出す。
1戦目、これを食った恵良はアミサの内側に入ることができなくなり、試合は拮抗した。

しかし…この試合にしっかりと対策したか、その渾身の一撃をしっかりとガードで受け止め続けた恵良は、
アミサのボディを強烈に叩いて2度目のダウンを演出。
しぶとく立ち上がったアミサだが、3ノックダウン制で行われたこの試合、あと一度のダウンでTKO…。

再開後、一気にロープ際まで詰めた恵良。
しっかり上もフックで襲いながらまたも下へ…。
3度目のダウンもボディを襲ってアミサを沈めた。
 
 

恵良vsアミサのライバル対決、ここに完結。
恵良はこれでアジア二冠となった。

アジア人ボクサーを使い捨てのように扱ってしまうこともある国内ボクシング。
それとはまったく違う世界観を描き出す恵良。
他のボクサーたちが水墨画を描いている横で、平然と油絵を描いてしまう。

「インドネシア人と対戦」と聞くだけで「噛ませと戦ったと思われる。」
そういった感覚で、インドネシア人との対戦を嫌がる選手もいる。
単純に見合った選手と戦えばいいだけなのだが、見合ったか見合ってないかを判断される前に
相手の国籍でどういった試合か判断されてしまう現状もある。

恵良はそんなことをお構いなしに、過去接戦を演じたインドネシア人を対戦相手としてリングに呼んだ。
ここに国内で戦う選手たちと恵良の感覚がまったく違うことを現わしているようにも思う。
リスクある相手に勝ったとしても、見ていない人からは相手の国籍だけで認めてもらえない…
そんな可能性も充分にある。

恵良はそんなボクシング界の内側に向けられる見栄なんかお構いなしに自らこの戦いを望んだ。
この試合、僕はアミサのKO勝利を予想した。
恵良にとってアミサはリスクのある相手だったと思っている。

普通ならやりたがらない試合を、自ら望み、自らの物語としてしまう。
とんだ変わり者が新風を吹き込む。
この世界観を楽しまないなんて選択肢は僕の中にはない。
 

そして、試合後、恵良と笑顔で抱き合うアミサ。
恵良vsアミサⅠのときにも感じたが、なんていい奴なんだろうか。
人懐っこさがにじみ出る、その笑顔に、ボクサーとしての悔しさを少しだけ滲ませる。

ジャック・アミサというボクサーをこれほどまでに魅力的に描き出す。
それもまた、恵良 敏彦の世界観のように感じた。
 
 

 
 

【カテゴリ別】
2019年中日本ボクシング観戦記一覧に戻る

中日本ボクシング観戦記一覧一覧に戻る

カテゴリ別記事一覧に戻る
 
 

【日付別】
【記事一覧】2019年7月に戻る

【記事一覧】2019年に戻る

【記事一覧】に戻る
 
 

各選手の戦績はこちら。
ボクシング選手名鑑
 
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました