2019/06/30 -パールガーデン TopStar興行Ⅳ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2019/06/30 -パールガーデン TopStar興行Ⅳ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

■WBKアジアウェルター級王座決定戦
【ウェルター級8回戦】
井手 健太(フリー) vs 森定 哲也(天勝)

井手 健太 12戦6勝(2KO)4敗2分
森定 哲也 13戦6勝(6KO)7敗 サウスポー
 

かつてJBC管轄で戦った二人の対戦。
フィリピンへ飛び出し、そちらを主戦場とした井手。
全日本新人王となりながらそのリングを奪われた森定。
 

これまでダウン経験なし、スーパータフガイと異名される井手が詰めてのファイトを見せる中、
位置をサイドへ前後へ変えながら撃ち合いに応じる森定。

井手の旺盛な手数を全弾防ぎきることは不可能。
顔面を跳ね上げられながら、近い距離を動きながら的確に強打を撃ちつける森定。

両者の顔面が跳ね上がりまくる中、森定がサイドへ飛んで右ストレートをテンプルに撃ち込む。
「しまった…」そんな表情をしながら、膝から崩れ落ちる井手。
1R、井手が生涯初のダウンを喫する。

立ち上がった井手に対し、一気に攻めていく森定。
時折顔面を跳ね上げられる被弾にもお構いなしに仕留めにかかる。
猛烈にパンチを浴びた井手だったが、ここを生き残りラウンド終了のゴングを聞く。

するとここから、スーパータフガイの本領を発揮。
的確に捉えていくのは森定の方だが、詰めてショートの連打を繰り返していく井手。
お互いのパンチが顔面をしっかりと捉え合う撃ち合いが延々と続いていく。

会場は熱狂の大声援となり、ひたすら手を出し続ける井手も
そして近距離で撃ち合いの状況から逃げることなく、
細かく位置を変えながら応戦していく森定も一切その勢いを落とすことなく、8Rを走り抜ける。
 

大熱戦の結末は判定へ…。

マイジャッジ、79-72 森定
 

判定は…
76-75、77-74、77-74
 
 

3-0 森定
 

思った以上に寄った点差だったが、手数とアグレッシブ、
そしてその攻め続けた姿に井手にポイントが流れるのも納得できた。
 

76-75の判定が出た瞬間、会場には一瞬どよめきが…。
そして、二人目の採点が森定に出て勝利が確定した瞬間、大きな歓声が沸き上がった。
猛烈過ぎる二人の殴り合いに、会場の熱は高騰しまくっていた。
 

負けはしたが、井手のファイトはどんな相手を前にしても胸を熱くさせるものだろうと思う。
彼もまた、フリーのリングを彩る主要キャストのように感じた。
リングに上がるとき、降りるとき…どちらもニンマリとした笑顔を見せていた井手。
かわいらしい熊のぬいぐるみのような印象から、ゴングが鳴ると獰猛な肉食獣のように襲い掛かる。
試合中とその時以外の対照的なコントラストもまた最高だ。
 

森定はこれが4年ぶりの勝利。
全日本新人王獲得後、ランカーとして登りつつある時期に連敗を喫し、
以降、プロボクサーとしてリングに立つ道が失われた。

彼は自分でジムを作り、そして戦える場所を探し求めた結果、フリーのリングに辿り着く。
そのリングでも敗北し、海外で行った試合でも敗北した。

「試合がしたい」からそれが叶った後、森定は勝利の味への渇望を抱えていたのだろう。
判定が発表された瞬間、泣き崩れた森定。

常に辞めることと隣り合わせだった4年間…あきらめずにようやく勝ち取った勝利。
自分で探し、自分でそのリングでの生存権をつかみ、そして自分の力で勝利をもぎ取った。

「辞めなくてよかったね。」

そんな思いで目頭が熱くなる。
彼一人のボクサーとしての人生が救われた。
それだけでも、フリーのリングに存在意義がある。

同時に手に入れた肩書
初代WBKアジアウェルター級王者

JBCのリングに未練も残す彼にとっては、
肩書以上に勝ったことの方が大きい意味があるだろう。
 

それでいい、己の価値観を貫けばいい。
 
 

■WBKアジアバンタム級王座決定戦
【バンタム級8回戦】
山口 楽人(TOP STAR) vs 張本 陽介(フリー)

山口 楽人 6戦5勝(3KO)1敗
張本 陽介 14戦4勝(4KO)10敗
 

山口は17歳4ヶ月での王座挑戦。
対して張本は8年ぶりのリング復帰、39歳。
 

ゴングが鳴ると、40歳手前の張本が山口と遜色ないスピードを見せる。
ハイスピードの駆け引き合戦の中、山口が特殊なほどに長いリーチでジャブを撃ち込んでいく。
さらにワンツーへとつなげて張本の顔面を跳ね上げるシーンを作る。

長い上にそこから伸びてくる山口のジャブ。
さらに後続のストレートや、弧を描いてムチのように襲うフックが炸裂する。

ラウンドが進むにつれ、ダメージが蓄積されていく張本。スピード差も出て来た。
しかし…山口はコーナーに詰めても、それ以上に攻め込むことができず。
張本は見ている側にもはっきりと見て取れるほど、狙っている。

一撃で試合を終わらそうとするとき、最も有効なのはカウンターだ。
ポイントが開いたであろう後半…張本のその狙いは顕著になる。
まとめればレフリーがストップをかけてもおかしくない展開。
しかし、その瞬間を狙うようにコーナーにたたずむ張本に山口は攻め込まず。

山口はタイトルを望み続けて来た選手だ。
ここでリスクを侵す理由はない。
ぎゅんっと伸びるジャブで張本の顔面を次々に捉えていく山口。
7Rに入ると、積み重ねたダメージで張本の膝がガクガク震える。
それでも、まだ張本は逆転の一撃を狙い続ける。

最終ラウンド、その瞬間が訪れる前に、両者の頭が衝突。
ドクターは続行不能を判断し、試合は終わりを告げた。

マイジャッジ 70-63 山口
 

公式ジャッジも70-63のフルマークで山口。
 
 

ジャブに翻弄され、鋭利にしなるフック、ストレートを強烈に浴び、
それでも眼光鋭くその瞬間を狙い続けた張本。
圧倒的になり始めた後半もまた、張本の可能性は残り続けた。
その瞬間が訪れることはなかったが…、立派な戦士の佇まいだったように感じる。

フルマークの敗戦…しかしその中身には、可能性を信じ、
自分を信じ続けた男の24分弱の作品が描かれていた。
 

山口 楽人…驚異的な左を持つ選手、その左は前回の試合より格段に輝きを放っていた。
まだ、やりようがないような選手ではないと感じる。
しかし、この先に伸び盛りを迎えるだろう選手。

タイトルを望み続け、そしてベルトを腰に巻いた。
ここからは初代WBKアジア王者としての戦いが始まる。
 

この日、4人のWBKアジア王者が産まれた。
それぞれがそれぞれの道を歩む中で、KBFの物語が紡がれていくのだろう。
しかし、キャリア晩年を迎える二人と、王座の肩書以外のものを求める一人。
真正面からこのベルトを背負い、未来を作っていくのは、山口 楽人を置いて他にいないだろう。

捨て置かれ、自然消滅するのか、それとも、様々な物語を付随させて膨らむのか。
現在はまだ、ただの箱であるKBF。
そこに息吹を注ぐ存在となるか否か…17歳の少年に次の扉が開かれた。
 
 

 
 

 

【カテゴリ別】
2019年中日本ボクシング観戦記一覧に戻る

中日本ボクシング観戦記一覧一覧に戻る

カテゴリ別記事一覧に戻る
 
 

【日付別】
【記事一覧】2019年7月に戻る

【記事一覧】2019年に戻る

【記事一覧】に戻る
 
 

各選手の戦績はこちら。
ボクシング選手名鑑
 
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました