2018/6/17 -刈谷あいおいホール- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2018/6/17 -刈谷あいおいホール- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 
 

決戦前夜。
裸足の足の裏が痛む。
普段歩きもしない体の緩んだ中年男が、鳥居と社殿の間を何度も往復する。

夜の神社は半端なく怖い。
ちょっとでも粗相をしでかして神様を怒らせてしまえば、とたんに祟りに襲われそうな気もする。
参道脇の木の裏から白装束の髪の長い女が今にもゆらりと現れそう。
なるべく余計なものを見て、恐ろしい空想を膨らませないよう…。

誰かに見られると効果が薄くなるらしい。
だからこその日が暮れてからのお百度参り。

勝負ごとに運はつきもの。
明日、勝負の試合に挑む、矢吹 政道(緑)の勝利を願ってのもの。
 

三つ巴のホープ大戦争。
近い年代の新人王戦に、三人の世界を狙える逸材が近い階級に集結した。

2016年の全日本フライ級新人王決勝。
東のMVPは米-ロサンゼルスでその拳を磨いたホープ、中谷 潤人(M.T)
西のMVPはデビュー以来の1RKOで勝ち上がり続けた中日本新人王、矢吹 政道(緑)。

1Rの攻防で中谷を圧倒した矢吹だったが…、2R以降にまさかのガス欠を起こして敗北する。
 
 

その一年前、全日本ライトフライ級新人王を制し、
既に後楽園ホールでもその名前を轟かしていた地方ボクサーがユーリ阿久井 政悟(倉敷守安)

岡山の老舗、倉敷守安がまだできたばかりの頃、プロ第一号となった阿久井 一彦(倉敷守安)と、
倉敷守安から日本王座に挑んだ赤沢 貴之(倉敷守安)の妹の間に授かった天才ボクサー。

「己の肉体を限界まで練り込め」

その強さをオールドタイマー達の記憶に残す、負け越し日本王者。
守安 竜也(岡山平沼)の教えを色濃く受け継ぐ男。
 
 

2017年、新設された初代日本フライ級ユース王座決定戦。
中谷の前にユーリが立ちはだかったカードは
ホープ達が潰し合う好カードが並ぶその日の興行の中でも、注目の目玉カードとなった。
 

この試合では、中谷がこれまでに見せたことのない接近戦を見せ、阿久井を一方的に撃ち破った。
この三つ巴の戦争の頂点に、中谷が君臨した瞬間だ。
 

試合後、「もう一度中谷と戦いたい」と発言した阿久井。
ハイペースで試合をこなす中谷に対し、生半可な追い上げではそれが成就しないことは明らかだった。
阿久井からこの言葉が出た瞬間…「阿久井vs矢吹」の実現は決定事項のように感じた。

それは、自分が思っている以上に早く訪れた。
中谷に敗れた二人の敗者復活戦。
お互いに相手が見つからない中で、やるしかない状況にもあった。

負ければ、国内の…しかも同世代という狭いくくりの中でさえ三番手…。
そんな現実が突き付けられる…しかし、世界を狙えると言われるホープ同士の対決…
勝って得るモノも大きい試合。

倉敷の地で、試合はわずか1R。
ユーリの右ストレートに矢吹が沈んだ。

倉敷まで飛んでそれを見届けた自分。
あの日から…ずっと景色が暗かったように感じる。
さらに同月、弟の力石 政法(緑)坂 晃典(仲里)に沈み…

この兄弟の悲壮感はさらに増していった。
力石が敗れた日、同じリングで矢吹の次戦が発表される。

相手は世界挑戦からわずか半年の世界ランカー…ヒルベルト・ペドロサ(パナマ)
後塵を排した矢吹にとって挽回するには…生半可な相手では不可能。
充分理解できるカードだったが…。

あの鮮烈な負けのあとにこのカードを組むのか…期待の気持ちに反して
より自分の中の悲壮感が膨らんでしまう。

試合が決まってしまえば、ファンにできることは限られている。
勝負に運は付き物。

自分にできることは、神頼みくらいしか思い当たらなかった。
 
 

ここでいつもの言い訳前置き

自分はファンではあるが、熱狂的なマニア程の肥えた目を持ってはいない。
自分より凄いと思えるファンはそこらじゅうに転がっている。

そして、TVで観戦するのとは違い、1つの角度しか見れず、スロー再生もない。
レフリーで隠れたタイミングでパンチが入っても気付けないし、かなり離れた自由席での観戦。
ここに書く内容に誤りが多分に含まれることもある。

先に言い訳をしておきたいわけではなく、そういうものだと言っておきたい。
同じ試合を見ていても、違う感想を持つファンもいるわけで…。
ここに書いたことが正解ではないと…。
それだけは認識したうえで、読み進めていただきたい。
 
 

さて、この日は矢吹の世界ランカー挑戦以外はオール4回戦。
中日本新人王準決勝のカードが立ち並ぶ。

この日で中日本新人王決勝戦のカードが決まることとなる。
たかだか中日本新人王と言われるかもしれないが、
地方で戦っていく選手達にとって、その肩書がボクサー人生を分けることもある。

運が良ければ不戦で獲れるタイトル…しかし、その運があるなしで
他地方の興行に呼ばれる呼ばれないが決まってしまうケースもあるという。

これからを考えたとき、地方のこのトーナメントは重要な意味を持つ。
この日…様々な選手の運命が交錯した。
 
 

 
 

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