ボクシングは大変だよ 篤 弘將(三津山)④ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/08/25

ボクシングは大変だよ 篤 弘將(三津山)④ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2017/08/25
 

篤 弘將(三津山)のピックアップ4日目。
前回は篤が鈴木 大介(駿河)に2連勝を飾り、松本 一也(松田)がデビュー戦に勝利したところまで…。
 
 

2005年の新人王戦に備えて、デビュー戦勝利から一旦試合間隔を空けた松本とは対照的に、
篤の方はコンスタントに試合をこなしている。
 

篤の3戦目は前戦から2ヶ月後。
相手は、浅野 英樹(高砂)
 

当時の浅野は3戦3勝(2KO)。
デビューから連勝を重ね、B級昇格まであと1勝。
前評判も高い。

また当時、名城 信男(六島)田中 聖二(金沢)で争われた日本タイトルマッチで事故が発生。
リング禍によって田中が命を失った衝撃もあり、篤に襲い掛かる恐怖はさらに増していく。

「強くなりたい…」
そんな当初の思いは恐怖に覆い隠され、ただひたすらにその恐怖が篤をトレーニングに駆り立てる。
 
 

ボクサーは誰もが勝ちたい。
1試合はわずかな時間で終わるが、その試合を迎えるまでに
膨大な距離を走り、膨大な練習を重ねる。

[過酷]と言う二文字をどれ程、重く捉えられるか…
ボクシングを色濃く見ているファンほど、その言葉の重さを知っていたりするものだが…
それでも実際にリングを経験した人間でなければ到達できない実感がある。

そこには、ただのファンと経験者を別つ絶対的な壁がある。
想像の中でのとてつもない過酷さ…実際に経験するとそれを更に更に更に上回る…。
僕のような未経験のファンは、その一端に触れては上方修正を繰り返すものの、
その上方修正が止まることはない。

ボクシングを見始めてから今まで…浅はかだったと思うことの繰り返しだったりする。
 

K-1の魔娑斗のコメント。

「試合なんて楽なんです 大変なのは試合まで。練習だったり減量だったり…
 でも練習なんて1日のたった数時間。
 一番大変なのは、オフの時でも、常に、頭のどこかで考えてしまっているんですよ。」

同じような台詞を篤からも、他のボクサーからも、何度も聞いたことがある。
 

三津山会長がよく記者に言う言葉…「ボクシングは大変だよ。」
この「大変」の意味を真に理解するファンは、少数派だと感じる。
自分自身がその一員になれているかどうかは自信がない。
 
 

試合が決まった瞬間から、ゴングは鳴らされたも同然だったりする。
負けるようなことがあれば、その瞬間、重ねた努力は吹っ飛んでしまう。
全てのボクサーが勝ちに向かって突き進む。

それは恐怖に苛まれた篤にとっても同じこと。

試合に挑むまでの間、ジムの強い面々と幾度もスパーリングを重ね。
食べ物にも気を使い…結果、稼いだ金の多くは食事に消えていく。
牛刺を毎日買ったり、プロテインや牛乳、高タンパクの食材や、ミネラルのある食材、
アミノ酸飲料や、栄養剤やサプリメント。

同級生が女の子と遊んでいる中、ひたすら道を走り込み、
自分がプロだということだけを自慢に、誇りに、生活を送っていく。
篤の勝ちに対する執念は…そうやって蓄積されていった。
 

命のやり取りの中に放り出されるリング。
恐怖にさいなまれても…それでも勝ちたい。
 
 

1R、ゴングが鳴り響くとともに篤の集中は極限まで深まる。
命を奪われかねないリング…自己防衛本能とでも言うべきか。

しかし…ファイターと聞いていた浅野が出てこない。
明らかにアウトボクシングを展開する浅野。
篤は戸惑いの中で最初の3分間を消費する。
 

2Rに入ると、その戸惑いの中で浅野のカウンターがタイミング良く篤を捉える。
混乱の中から立て直す前の痛恨のダウン。
立ちあがった篤の中にもう疑問はなかった。

「浅野はファイターじゃない」
 

たった12分間しかない4回戦。
1度のダウンは致命的…そして残された時間はわずか。
恐怖を忘れて、逆転を狙って攻めて出る浅野…。

勝つために…

ずっと篤を包み込んでいた悪魔のような恐怖は
戦うことに夢中になることで薄れていく…

しかし…圧倒的なスピードで目の前から消えていく浅野。
無情にも最終ラウンド終了のゴングが鳴り響く。
 

初の敗北…最終のゴングが鳴った瞬間、ボクサーから”普通の人”に戻った篤。
努力がフイになった悔しさよりも「生きていた…」
そんな安堵が篤を包む。
 

勝ちへの思いと、命を奪われかねない恐怖…
戦う男の精神は、その時々で振り幅大きく揺れ動く。
 
 

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