オリジナルvsコピー ラリー・ホームズ(米)⑦ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/05/31
さて、前回7度目の防衛を飾ったラリー・ホームズ(米)。
次戦の挑戦者に、解説席に座っていたかつてのスパーリングパートナー、
モハメド・アリ(米)が名乗りをあげたところ。
実に4度目のカムバックで、ラリー・ホームズに挑んできます。
3ヶ月後に行われたホームズの8度目の防衛戦で、対角コーナーに陣取った「ザ・グレイテスト」
「アリのコピー」と揶揄され、不人気王者となっていたホームズが、オリジナルのアリとぶつかります。
リングアナのコールのときからアリには声援、ホームズにはブーイング…。
開始ゴング前から興奮状態のアリ。
レフリーチェックの際はセコンドが必死にアリの体を抑えつけながら…。
しかし、ゴングが鳴ると勢い良く向かっていったのはホームズ。
そして最初の3分間、全くと言っていいほど手が出ないアリをホームズが支配。
2Rも一方的にホームズが拳を突き刺していく…アリは挑発するのが精いっぱい。
バランスは完全に崩れ、体重が後ろに乗ってしまい手撃ちに終始。
フットワークは一切使わず、ただじりじりと前に進むだけ…
かつてのアリの姿はそこにはなく…
3R、この試合が2年ぶりの試合となるアリ。
少しずつ感覚が戻り始めたか、ハンドスピードは戻ってくるものの…
やはりホームズに支配される展開は変わらず。
4Rにはこの試合初めてのアリのクリーンヒット。
沸き立つ会場…しかし12分間でわずか1発のクリーンヒットしか奪えていないわけで…
そこはヘビー級…一撃での大逆転の可能性が最も高い階級ではあるものの、
歴戦の強者たちと戦い続けたホームズの撃たれ強さは証明済み。
5R、コーナーを背に一方的にパンチをもらうアリ。
その姿はまさに「キンシャサの奇跡」を起こしたアリ。
しかし、シャープに振るホームズにカウンターを叩き込む隙は訪れず…
6R、ホームズのボディへ左ジャブを刺すアリ。
しかし当然それではホームズを止めることはできず…ロープに詰められ一方的に攻められる。
アリ全盛期のスパーリングパートナーを務めたホームズ…。
誰よりもアリの全盛期を知っていたはずです。
「これがあのアリか?早く倒してやりたい…しかし気がつけば力を抜いている自分がいた。」
引退後、この試合について語ったホームズのセリフです。
7R、フットワークを使って左を出すアリ。
その姿は往年のアリを彷彿とさせ、会場は沸き立ちアリコール。
しかしジャブは届かず…ホームズに軽く外されてしまう。
意地の一撃とも言える左フックを叩き込みますが…
結局はホームズを捌ききれずに追いつかれ、またも滅多撃ちに…
8R、9Rと進むごとに一方的な展開はさらに色濃くなっていく…。
意識があるのかないのか…棒立ちのままのアリ。
10Rが終了すると…セコンドからストップの叫び声…。
11R開始のゴングが鳴らされることはなく、「ザ・グレイテスト」が初のストップ負け。
ヘビー級最強のバトンを、ホームズがはっきり受け継いだ瞬間でもあります。
ホームズがアリに勝った直後のドン・キングの暗い表情…。
内心ではアリに勝ってほしかったのでしょうか…。
試合後のホームズのコメント。
「今晩戦ったアリは、我々の記憶に残る偉大なアリとは別人だった。
リングの上でこれほど悲しく切ない思いをしたことはない。」
実はこの頃…既にパーキンソン病の初期症状が出ていたとも言われるアリ…。
彼を滅多撃ちにするホームズに対し憎悪を抱くTVの前の14歳の少年…。
それが、のちにホームズを圧倒的に下すことになるマイク・タイソン(米)。
アリと親交のあった、タイソンのトレーナー、カス・ダマトはこの試合翌日、
アリへ電話をかけ、アリとタイソンを会話させています。
その時にタイソンが言ったとされる台詞。
「僕が大人になったら、必ずホームズと戦ってあなたの仇を討つ」
何年も先の未来、この台詞が真実となる日…
それが、この日、アリからホームズが受け取ったバトンを、ホームズがタイソンに受け渡す日となるのです。
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