2016/05/08 名古屋国際会議場-6~7試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【スーパーウェルター級8回戦】
パク・チャンヒ(韓) vs 丸木 和也(天熊丸木)
・パク・チャンヒ 12戦5勝6敗1分 27歳
・丸木 和也 22戦19勝(12KO)3敗 28歳
韓国王座にはじき返されての再起戦のチャンヒ。
そもそも昔の韓国ボクシング黄金期から考えると競技人口が激減した韓国。
戦績や、韓国のタイトルを取れなかった…なんてとこから格下扱いしてしまいそうですが…。
1Rが終わる頃にはもう皆あんぐり…。
チャンヒ…本当に強い。
プレスで詰めて左右のフックを振り回す…これが威力満点。
まるで斧をブンブン振り回すような…分厚い胸板からも力強さが見てとれます。
その上、上半身が柔らかいのなんのって、ウィービングがクネックネ。
ランク再獲得を目指す元日本7位の丸木にとって、負けられないこの試合。
中日本の中量級を引っ張る意味でも、重要な選手。
1R、丸木はジャブの刺し合いでは上回るものの、撃ち合いになると分が悪い。
2Rに入ると、丸木のジャブが減ってしまい…プレスで攻めて連打を振るうチャンヒ。
チャンヒの一方的な展開になってしまいます。
3R後半、足を使って出入りし始める丸木。
こうなるとチャンヒが空転、逆に丸木の一方的なペースになります。
しかし、それも束の間の4R後半、ロープ際で捕まった丸木。
チャンヒの棍棒のような腕で振るわれるパンチを幾度も浴びてしまう。
ダメージの影響かスタミナ切れか…スピードが鈍り、手が出せなくなっていく丸木。
6R、丸木の出したパンチはわずか数発。
そのすべてがヒットしているが…しかし手が出せない。
まるで台風のように振るってくるチャンヒですが、防御はそれほど上手くないようにも見えます。
7R終盤、丸木がコンビネーションをヒット。
会場は逆転を期待する空気で熱を帯びます。
思わず「負けにビビるな!出せば当たる!」…。
なんて叫びそうになりましたが…。
寸ででなんとかこらえる。
多分、そんなことは本人が一番わかっていて、出したくても出せないからこういう展開になっている。
その理由は、外野で見ている僕には理解できないかもしれない…。
丸木の今の苦しさの、何が僕に分かるんだろう…なんて、そんな思いから…。
8R、撃ち合いに挑んでいく丸木ですが…
圧倒的に撃たれながら、こらえて自身のパンチをヒットしていく。
みるみるダメージを蓄積させながら最終のゴング。
判定は、3-0でチャンヒ。
消耗しきって勝てなかった丸木に…僕はなんだかボクシングの美学を感じてしまう。
韓国ウェルター級2位のチャンヒ…この勝利でランクを上げ…国内王者に再度アタックするのでしょうか…。
そのうち、もしかするとOPBFランキングに顔を出してくるかもしれません。
【ヘビー級6回戦】
・竹原 虎辰(緑) 26戦12勝(6KO)11敗3分
・上田 龍(石神井S) 5戦5勝(2KO) 23歳 サウスポー
日本ヘビー級1位と6回戦のホープの戦い。
この二人の戦いの意味…これを僕はあれこれ考えてしまう。
竹原は定年で強制引退となったものの、ルール改正で復帰。
(日本のボクサーは37歳を迎えると強制引退だったが、これが40歳まで引き上げられた)
現在、たった一人しかいない日本ヘビー級ランカー。
かたや上田は、あと1勝でA級昇格の権利を手に入れ…
そうすれば日本ランクには自然に入ってくる可能性が高い。
お互い、ここでぶつからなくても、待っていれば自然と日本王座挑戦のチャンスは巡ってきたはず。
それがここでワザワザつぶし合う。
竹原も上田も、ここで勝てば日本王座挑戦にふさわしいアピールとなる。
お互いを避ければ「日本ランカーが一人しかいないから…」「A級になればタイトルマッチ…」
なんてささやかれかねない…。
当然、この試合に勝った方が、そのうち藤本 京太郎(角海老宝石)へ挑戦するのでしょうが…
この試合を知らずに、上であげたようなことを言い出すファンもきっと出てきてしまう。
この試合があることで、僕は「いやいやこんな試合を勝ち抜いて辿り着いたんだよ」って言える。
二人の試合は国内ヘビー級をファンに認めさせる為のモノ。
もの凄く大きな大きな使命の元にぶつかる試合に感じてしまうんです。
試合は序盤、プレッシャーで下がらせる上田。
サウスポー対オーソドックの定石…前の足が外側にある方が有利…。
この外側のポジションを取ったのは竹原の方…しかしスピードのある手数で、上田が攻めていく。
この展開は突然逆になる。
竹原がどしどし歩きながら圧を強めると、上田が下がりながら応戦。
竹原の圧も凄いが上田の手数も凄い。
そんな中での3R後半、上田が撃ち疲れを見せたところで竹原は右フックを効かせる。
ラッシュをかける竹原…。上田はこのラウンドはゴングに救われる。
4Rが開始され、ダメージを残す石井を一方的に攻め立てた竹原。
ついに崩れ落ちる上田に無情のテンカウント。
リングの向こう側に目をやると、僕の青春時代、国内ヘビー級を盛り上げたオケロ・ピーター(緑)の姿。
あぁ…あの時代にこの二人がいたら、どれだけ面白かっただろう。
僕の記憶に色濃いのは…
ピーターの他、市川 次郎(ヨネクラ)、高橋 良輔(金子)、。
選手数の少ないヘビー級でわずかなトップ選手だった3人は何度も拳を交え…
もしここに上田や、竹原がいたら…。
上田もきっといい線、行ってただろうな…。
なんだか、そんな思いがぶわぁぁ…っと湧き出てきて
セコンドに抱えられながら、フラフラとリングを降りて引き上げる上田に…。
「強かったよ!」…と叫んでしまった。
何考えてんだか…今負けたばっかのボクサーに…なんて自己嫌悪。
傷をえぐるような真似だったかな…と。
本当にごめんなさい。
でも、再起して、ヘビー級をしっかり盛り上げて欲しい。
何年後かに日本ヘビー級の主役の一人に名前を連ねる選手…だと僕は思うので。
竹原はシビアなこの試合をしっかり勝って…サウスポーには初めて勝ったって言ってたけど、
そんなことより、上田って相手に勝ったことが僕は大きいと思う。
いつか竹原に巡って来るだろう日本ヘビー級タイトルマッチ…楽しみです。
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