韓国の鷹 張正九(韓)① ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/11
ちょっと前に何度か書いた日本ボクシングの暗黒時代。
この時代にお隣の韓国ではボクシング最盛期。
IBF世界タイトルマッチでの替え玉事件があって以降、韓国ボクシングは失墜してしまいましたが、
当時の韓国人ボクサーはとにもかくにも強かった。
コリアンスタイルというファイトスタイルが出来上がるほど…。
頭から突っ込んでいき、連打の渦に巻き込んでいく…
南米のテクニシャンのテクニックを封じる、闘魂ボクシングですね。
傍目には「闇雲ガムシャラ」…とでもいいますか。
相手のパンチが当たるなら、自分のパンチも当たる!
顎にさえもらわなければ大丈夫!
真下を向いて突っ込んでいき、足の位置で相手の場所を確認して手数でバババババ…。
現代ではフィリピン人ボクサーがメキシカンを倒して米国に進出する流れが出来上がり、
それに続いて日本人ボクサーもガンガンメキシカンを倒している。
しかしこの時代、メキシカンキラーと言えば韓国人ファイターだった。
そう、昔も今も軽量級は東洋VS南米の構図なんですね。
韓国人選手の中でも抜群の強さを誇った選手の一人。
チャン・ジョングをピックアップ。
WBA世界ライトフライ級を17度防衛したユ・ミョンウ(韓)とどっちにしようか迷ったんですが、
どっちがカッコいいかって言ったら僕はジョングだと思うんで…。
以前ピックアップした大橋 秀行(ヨネクラ)外伝…と思ってもらえれば。
大橋 秀行のピックアップはこちら
ちょっと長くなりそうなんで王座獲得まではサクッと…。
17歳でプロのリングに立ったジョング。
わずか20日の間に6戦をこなし全勝…。
…出だしからとんでもない。
しかもこの中にはのちの韓国王者ピョン・チョルホ、創生初期のIBF王座とは言え…
のちのフライ級世界王者シン・ヒスプが混ざってます。
その後試合のペースは落ち着きますがそれでも月1ペース。
デビューから10連勝を飾ると、海外ボクサーたちを呼び寄せます。
様々な国の様々なタイプの選手と拳を交え、経験を蓄積。
15戦目で世界トップレベルの強豪を迎えます。
キム・ファンジン(韓)の持っていたWBA世界ライトフライ級王座に挑戦したばかりの
アルフォンソ・ロペス(パナマ)。
元WBA世界フライ級王者です。
この頃のジョングは往年の頃からは信じられないストレートヘア。
ジョングと言えばチリチリヘアっていうイメージを持たれる方も多いはず。
相手が黒人のロペスだから、もう片方がジョングだって解りますが…
東洋人同士とかだったらわからなくなりそう…。
それは置いといて…
大橋との撃ち合いのイメージが強いジョングですが、
この試合、リングでサークリングするのはジョングの方。
ロペスを中心にした円を描きながらジャブを放り込んでいきます。
時折ブンっと振り回す右を見せながら…。
明確な動きがないまま迎えた2R。
時折振り回していた右がカウンターで炸裂。
拳に手ごたえを感じるや否や、今までの綺麗なスタイルから
コリアンファイターらしい詰め。
ぶんぶん振り回す連打でロペスをマットに這わせます。
立ちあがった後も連打で詰め、時折の反撃も綺麗に外す。
ロペスは重なる被弾の中、左のフックをもらったところでたまらず2度目のダウン。
立ちあがったところで2R終了のゴング。
3R、回復の時間を与えないよう勢い良くコーナーを飛び出したジョング。
仕留め切る為にスタイルチェンジ。
Theコリアンファイター…多少の被弾をモノともせず…。
撃ち合いの中で、左右左とフックの3連打が決まり、テンカウント。
この時期から既に会場はファンたちの盛り上がりが凄い。
勝った瞬間は地鳴りのような歓声に包まれます。
期待の若手ホープ、一気に世界への機運を高まります。
次の試合ではのちにIBF世界フライ級のベルトを巻く国内の強豪チョン・ジョンクワン(韓)を
6R棄権で破った後、一戦挟んでまたも元世界王者。
相手は第8代WBC世界ライトフライ級王者のアマド・ウルスア(メキシコ)。
日本の友利 正(三迫)にポイントアウトされて王座を手放した直後でした。
強打で鳴らしたウルスアですが、この試合ではウルスアがジョングの周りをサークリングします。
しかし、本来のウルスアの土俵とは違うアウトボクシング。
距離がつかめていないのか、離れすぎてしまい…。
ジョングに捕まえられることはないですが、自分もパンチを当てられない。
ほとんど手が出せずに、時折ブンっと振られるジョングのパンチをたまにもらう。
そんな展開が続きます。
同じ展開が長引きすぎて緊張が切れたか…。
不意を突かれた単発の大きなフックをもらい、ウルスアがダウン。
その後もウルスアは距離を取り続け、結局ジョングの判定勝利。
実はこの試合、1週間延期されたんですが、その理由がウルスアの逮捕。
何をやったのかはわかりませんが、大事な調整の最後の仕上げの時期を潰してしまったウルスア。
結局、元世界王者は何もできずにジョングへ金星を献上します。
アルフォンソ・ロペス、アマド・ウルスアの元世界王者を倒したジョング。
これ、ただ元世界王者…というわけではなくて、どちらも世界戦直後なんですね。
つまり、バリッバリの全盛期。
再起してさあもう一度世界を…って所を討ち砕いているわけです。
両者とも、世界再挑戦の順番を少しでも繰り上げたい選手。
彼らの夢を食い破るわけです。
「俺が先に行くからお前らもっと遠回りしろ」…と。
この時代のジョングは3つのスタイルを使い分けています。
一つは足を使うアウトボクシングのスタイル。
綺麗なボクシングができる技術も持ち合わせていた。
もうひとつが、THEコリアンスタイル。
頭から突進して距離を潰し、近距離で撃ちつ撃たれつ手数で上回るって奴ですね。
最後に、二つを混ぜ合わせたスタイル。
これがジョングの真骨頂。
強烈なプレスと連打で勝負するコリアンスタイルに合わせて、
近距離でのステップワークとボディワークを複合させたスタイル。
カウンターも巧いし、被弾も少ない。
時折スイッチするなど、引出しも多彩でした。
コリアンスタイルってボクシングスタイルの1つのジャンルになるほどとっても有効なスタイルで、
思い浮かぶキーワードは熱血、根性。
撃ちつ撃たれつの展開を手数で制する。
「両手でつかんでタコ殴り」なんて言われたりもします。
このコリアンスタイルの弱点は、被弾が多いこと。
撃たれずに撃つ…というよりは撃たれたら倍にして撃ち返す…ってイメージなので、
撃たれ強さとスタミナが必要。
ジョングのスタイルは…ここにハイクオリティのディフェンス技術を織り交ぜた形。
本来全く間逆のスタイルのはずが、それを融合させてしまった訳です。
カウンターボクサーの弱点は、相手が撃つまで待ちになることが多く、手数が出ないこと。
コリアンファイターの弱点は被弾が多い。
アウトボクサーの弱点はダメージを与えづらい。
それぞれのスタイルの弱点を、近距離でのステップワークとボディーワークで消し去ってしまった訳です。
相手からすれば、パンチが届くか届かないかの距離ではなく、目の前にいるのにあたらない。
猛烈に撃ってきているのに撃ち返しても当たらない。
簡単に言えば距離を詰めて滅多撃ちってことで。
崩しようのないボクサー…弱点が無いですからね。
そりゃ強いよってお話で…
更に…彼のKOシーンはとっても残酷。
対戦相手にとって地獄なのが、ジョングに一撃で倒すようなパンチ力が無かったこと。
固い鈍器で何度も何度も殴りつけて倒す…。
スプラッター映画のようなKOを演出するわけです。
ライトフライという軽い階級で…。
そんな前情報を元に…次回からはジョングの戦った世界戦を紹介していきます。
というわけで、また明後日!
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