2017/4/23 刈谷あいおいホール-セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
■日本フェザー級タイトルマッチ
【フェザー級 10回戦】
林 翔太(畑中) vs 坂 晃典(仲里)
・林 翔太 35戦29勝(17KO)5敗1分
・坂 晃典 18戦15勝(12KO)3敗 日本フェザー級1位
試合開始前、タイトルマッチの空気に刈谷あいおいホールが染まる。
大きな試合は名古屋国際会議場などで行われることが多く、
また、スケジュールの都合もあって刈谷あいおいホールでのタイトルマッチは初体験となった。
いつもノンタイトルを見ている刈谷…一変する空気に、見る側としても緊張してしまう。
国歌斉唱や挑戦者、坂が引き連れてきた大応援団が、
タイトルマッチであることを意識付け、その空気に飲まれそうになる。
ジャブの刺し合いで始まった試合。
静かな立ち上がり。
1Rは手数の多かった坂が制したか…。
2R、足を使いながら撃ち合いを仕掛けた坂。
林はボディを中心に攻めるが、坂の攻撃力がそうさせるのか重心が後ろに下がる。
林が左から右に繋げたシーンではスリッピングアウェイを見せた坂。
しっかりと林の攻撃に反応している。
バリエーション豊かな強烈な坂の左が林を上回る。
3R、坂のパンチによって林のマブタが切れドクターチェック。
さらに同ラウンド中に2度目のチェック。
負傷TKOも考えられる展開に、林が仕掛けて出る。
強烈な右ストレートを撃ち込み、坂がグラつく…しかし…
さらに攻めて出た林を待っていたのは、嵐のような坂の連打。
潰されるようにリングに沈む林。
王者の意地か…顔面を血まみれにして立ち上がった坂。
試合が再開されるも、防戦一方になり、またも沈みこんだ林。
3R 2:50…
坂のTKO勝利が宣言される。
林が…我らがチャンピオンが…
ほとんど何もできずに敗れてしまった…
ショックすぎて言葉が出なかった。
勝利者インタビューで喜びを爆発させる坂。
「姉ちゃん!母ちゃん!俺、チャンピオンやで!!!」
思えば、昨年の今頃、林が日本王者になるなんて思いもしなかった。
日本王者になっただけで感動モノだったが…元世界王者を初防衛戦で撃破。
気がつけば…日本王座のその先を期待するようになっていた。
だからこそ…林は圧倒的に強い挑戦者に負けたと思いたい。
坂 晃典
どうか…負けないで欲しい。
林が簡単な相手に負けてしまったなんて絶対に思いたくない。
世界王者になって、そして林が強かったことを証明してほしい。
だから、今後の坂を僕は精いっぱい応援する。
凄く、悔しいけど…。
【56Kg契約 8回戦】
水野 拓哉(松田) vs 大里 登(大鵬)
・水野 拓哉 12戦10勝(10KO)1敗1分
・大里 登 15戦7勝(1KO)4敗4分
林がベルトを失い…意気消沈しそうな刈谷あいおいホール…。
しかし…僕らにはこの男がいる。
中京のホープ、水野がメインのリングに登場。
相手は、水野が敗北した2015年の新人王で
西日本新人王を獲得した金井 隆明(ロマンサ雅)を大差判定で破っている大里。
登り調子の決してヤワじゃない相手。
入場局が鳴り響く中、リング下で咆哮一括してのリングイン。
メインイベンターが板について来た…我らがヒーローの登場。
1R、様子見に徹したかプレスをかけてじっくり見ていく水野。
ほとんど手を出さない水野に対し、手数を出した大里が獲ったように見える。
KOを積み重ねていはいるが、技巧派と思える水野。
反応よくジャブを外していき、お互いに明確なクリーンヒットはなし。
2R、このラウンドもほとんど手が出ない水野。
これまで、ボディで崩しながら、一瞬の隙を突いて一撃KOを演出してきた水野。
ここまでボディはほぼなし。
このラウンドも、お互い明確なヒットはなく、手数で大里か。
3R、狙いすぎているのか…このラウンドも前のラウンドと同じ展開。
プレスで追い込んでもクリンチで逃れられる。
ここまで全てのラウンドでポイントを獲られているように見える。
8回戦のリング…判定を考えると後が無くなった。
ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)の敗北が連鎖するように
ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)が苦戦するなど
ボクシングにおいてもその日の流れと言うのはあるように思う。
林の敗北から、そういった流れになってしまったのか…そんな風にも勘繰ってしまいそうな展開。
水野…こんなところでランクを奪われるワケにはいかないハズ。
水野まで負けたら…そんな不安が首をもたげる。
4R、この試合初めて水野が撃ち合いに出る。
水野が前に出たことで、お互いに頭の衝突が増える。
若干身長で下回る水野のほうが、バッティングのダメージは小さそう。
コーナーに追い込んだところで、強烈な右のボディストレートが大里に突き刺さる。
いつもの水野が戻って来たか…。
5R、狙っていた水野の右ストレートが炸裂する。
しかしその後、水野の手数が減ったことで、
ダメージを残しながらなんとかこのラウンドを逃れた大里。
6R、水野がペースを上げて一気に襲いかかる。
プレスでコーナーに追い込むと強烈な連打を見舞う。
最後は多少強引にねじ込むような左フック。
ヒットした瞬間、大里の顎が10cm近くズレたようにも見えた一撃。
ゆっくりとリングに膝から崩れた大里。
レフリーはカウントを途中でストップし、TKOを宣言。
6R 2:07
前半、どうなることかとヒヤヒヤさせられたが、この試合の課題は本人もしっかり自覚。
勝った上で反省できることは、幸運なこと。
思えば、水野を初めて見たのは、市村 蓮司(RK蒲田)との試合。
直前のセミファイナルでは先輩である元日本ランカーの清水 裕司(松田)が長井 一(ワタナベ)に敗北。
そんな落胆の空気を、痛快なKO劇で一掃した。
目の前の観客が皆両手を天に向かって突きあげたあの瞬間は、脳裏にこびりついて離れない。
この男は、重要なところで痛快なKO劇を見せつける。
そういった意味でも…持っている男だと感じる。
8/23には後楽園ホールで日本ユース王座への挑戦が決定。
初代王座を石田 凌太(宮田)と争うこととなっている。
実力を備えながら獲り逃した新人王…そして後楽園の舞台。
今後、日本ユース王座がどれほどの価値を持つかは、獲得した選手のその後次第とはなるだろうが…
水野にとっては初のタイトル戦となるとともに、後楽園でその実力を見せつける場となる。
後楽園の拳キチ達よ…
どうかその実力を、肥えた目で見定めていただきたい。
俺たちの水野はすこぶる強いぞ。
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試合が終わると、顔中を傷だらけにした酒井 孝之(中日本ボクシング協会)が
子供たちを連れて岐路につくのが目に入る。
絆創膏だらけ、マブタを真っ黒にしたその顔面は、カッコいい父親の勲章にも見える。
アウェイに乗り込んでその強さを見せつけた定常 育郎(T&T)は観客に取り囲まれることもなく帰路へ。
あれだけの男が、注目を浴びないなんて…
定常が知名度を得た後、後悔することになればいい…。
そして毎回恒例の水野の記念撮影。
刈谷あいおいホールの入口を出たところで、大勢のファンと記念撮影を行う。
濃厚なファンサービスに気さくな人柄も、大きな人気を得ている一つの理由だろう。
日本中のボクヲタが注目し始めた存在になっても、雰囲気は近所のお兄ちゃんだ。
帰り道、原付を遠回りさせて緑ジムへ…
翌週のチケットを求めてだったが、誰もいない。
時計を見ると17:15。
そりゃそうか…思ったより早く終わった興行。
もう少し遅い時間なら、誰かいたかもな…なんて思う。
普段は必ず当日券を買っている自分が、ジムで買おうとした理由…。
多分、林が負けたってことを翌週の試合を考えることで、考えないようにしたかったんだと思う。
そんなことに気付いて、帰り道、涙と鼻水で顔がグシャグシャになる。
原付で風を浴びれば簡単に乾いてくれるので助かった。
願わくば…またランカーから出直していく林を見たい。
無敗で来たチャンピオンではない。
負けてもくじけずに戦い続けてチャンピオンになった選手なんだから…。
また、立ち上がる姿を見たい。
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