2017/3/26 刈谷あいおいホール-6試合目~8試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
さてさて、中日本新人王戦の5試合が終わり、塚原 信一(HEIWA)の引退式が挟まったあと
通常の公式戦としての試合が開始される。
【48.2kg契約 4回戦】
井上 夕雅(尼崎亀谷) vs 太田 アレックス(西遠)
・井上 夕雅 2戦2勝
・太田 アレックス 1戦1勝
兵庫からデビュー以来2連勝の井上と、前戦でブル 弘師(トコナメ)との激戦を制した太田。
井上は初見だったのだが…強い!
自分の距離がはっきりと体に刻まれている井上。
アレックスのパンチをかわしながら、自分のパンチを撃ち込んでいく。
右ストレートをかわして、左アッパーでアレックスの顔面を跳ね上げるシーンは鳥肌モノ。
ラウンド前半から中盤にかけて、単発ながら井上のクリーンヒットが目立つが
中盤以降、若干二人の距離が縮まると、アレックスのコンビネーションも冴えて、展開は拮抗。
撃ち合いになったラスト10秒は互角の攻防。
2Rもリードの刺し合いで始まるが、1Rより距離がわずかに近く、ここではアレックスが上回る。
井上は気持ちが攻撃に偏ったか、足が止まり気味に…。
1分過ぎ、またも井上の強烈なアッパーでアレックスの顔面がはじけ飛ぶ。
さらに井上のボディがアレックスを襲い、ここから撃ち合いに突入。
ショートパンチの回転でアレックスが上回るが、合間合間に撃ち込むボディで井上がペースを奪い返す。
さらに、一旦距離が空いたタイミングで、井上が強烈な一撃を撃ち込み、優勢を印象付ける。
3R、体重を乗せてスピードのあるパンチを撃ち込む井上。
アレックスも怯むことなく、一旦間が空くと先に撃ち込む。
井上の撃ち出しに合わせた、アレックスの右ストレートもかなり強烈。
井上はもらいっぱなしでは終わらず、必ずやり返す。
試合は拮抗するが、効かされたアレックスが下がると、一気に井上が攻めて出る。
レフリーの動きはストップのタイミングを探っているよう。
ここでアレックスはなんと反撃、弾幕をガードで弾きながら
わずかなタイミングの隙間にパンチを撃ち出して井上の顔面を弾く。
ここまでビッグパンチの応酬となった試合。
どちらかがインターバル中に棄権を申し出てもおかしくないほど、お互いにダメージ濃厚に見える。
最終ラウンド、撃ち合いに出た二人。
ここを制したのはアレックス。
近距離でパンチを外しながらショートパンチを差し込んでいく。
しかしラウンド終盤、井上のストレートが炸裂し、若干ペースの落ちたアレックス。
一気に井上が盛り返す。
ふらふらになりながら応戦するアレックス。
上体を振りながら、鋭いパンチを撃ち込んで、逆に井上を追い込む。
そのまま最終のゴングが鳴り…
39-37
40-37
39-38
3-0で井上。
判定としては妥当、しかし…最後に追い込んだのはアレックス。
4Rで終わってしまうのが惜しい試合…続きが見たかった。
才能に恵まれても、力を磨いても、追い込まれた時の抵抗ができない選手はいる。
アレックスの負け試合に、その強さを見た気がする。
勝利者インタビューでは呂律がたどたどしい井上。
足元も若干おぼつかずにリングを降りた。
距離が離れた場面では確実に優勢だっただけに…もしかしたら気の強さから撃ち合いに出たのか。
持ち合わせているものは、4回戦の域を超えているように思える。
このステージでは安全運転でもいいように思う。
井上が激戦を演じるべきステージは、まだまだ上にあるはずだと…そんなふうに思ってしまう。
【ライトフライ級4回戦】
中山 和則(薬師寺) vs 村若 宏祐(広拳)
・中山 和則 1戦1勝(1KO)
・村若 宏祐 2戦1敗1分
試合が開始されると「オイ!!ゴルァ!!」「イケ!!ゴルァ!!」と怒号が響く。
ガラの悪いファンでもいるのかと思いきや…声の主はコーナーの薬師寺 保栄(松田)。
ちょっとした悪ふざけに興じる薬師寺会長に目を取られていると…
お互いのフックが交錯した瞬間、村若の腰が落ちる。
一気に攻め立てた中山…村若はここを一旦凌いだが、
バックステップで距離を作った中山は、完璧な右ストレートを村若の顔面に撃ち込む。
後ろ倒しに失神した村若。
レフリーは即座に試合をストップ。
…薬師寺さん、この力量があるなら、安心してられますわ。
なかなか起き上がれない村若を、心配そうに覗き込む中山。
担架が持ち出されたものの、しばらく時間を置いてなんとか起き上がった村若。
試合が早く終わりすぎて、彼の力を知ることができなかったのが残念。
中山は2戦連続の速攻劇。
この選手も、そのうち中日本の注目選手として様々な場所に露出してくるだろうと思われる。
さて…この超のつくKO劇の直後に行われたのが…近年見た試合では最高の泥試合。
【65.5kg契約 6回戦】
山口 鉄也(蟹江) vs トミナガ シンペイ(中日)
・山口 鉄也 10戦3勝(2KO)5敗
・トミナガ シンペイ 9戦4勝(4KO)5敗
リングアナのコールに、雄たけびを上げるトミナガ。
トミナガ…僕が知る限り、現役日本人ボクサーの中で、もっともブサイクな男。
興味があれば…ジムのHPを…。
試合は重量級らしい頭を着けた撃ち合い。
オープニングヒットはトミナガの左フック。
山口のテンプルに、拳を豪快に叩きつける。
体の力で山口を下がらせながら、右ボディから左フックを何度も何度も繰り返すトミナガ。
しかし中盤、逆に山口の左フックがトミナガを襲う。
これをきっかけに、山口が押し返し、撃ち合いが拮抗し始める。
2R、手数ではトミナガ、クリーンヒットは同等の撃ち合い。
密着したファイトが続く中、山口は左目上をカット。
再開後、体の力に勝るトミナガが、山口を押し込んで撃ち合いを有利に進める。
3R、ロープまで下がらされたところで、体を入れ替えた山口。
バランスが崩れたトミナガを逆にロープまで押し込んでいく。
この試合、初めて山口がラウンドを獲ったように思える。
4R、疲弊し始めたトミナガは開始から山口に押し込まれていく。
しかし、起死回生のトミナガの撃ち降ろしが山口を捉える。
一気に形勢が逆転しトミナガが押し込むが、逆に山口が同じような撃ち降ろしで反撃。
そこから展開は互角に…2度目のドクターチェックが入るも、無事試合は再開。
マブタに爆弾を抱えた山口は一気に攻めていくが…お互いにタフさが光る二人。
試合はそのまま消耗戦に雪崩れ込む。
5R,6Rの後半戦、こらえながら反撃の一撃を撃ち込む山口。
相手を押し込みながら、いくつもの強打を撃ち込むトミナガ。
ズルズルに疲弊し、ドロドロの展開へとなっていき…最後の最後までお互いに手を止めず。
全身で相手を押し合いながら、意地と意地がぶつかりあいながら最終のゴング。
判定は…3-0
59-55、59-57、59-56。
勝者、トミナガ シンペイ。
膝をついて雄叫びをあげて喜ぶトミナガ。
頑張った…本当に頑張った。
これほどまでに泥試合が似合う男がいるだろうか。
顔もブサイク、試合もブサイク…だけどそれがカッコイイ。
メチャクチャかっこいい!
わかるかな…「もしもピアノが弾けたなら」を歌う、西田敏行カッコイイみたいな。
全然カッコつけてないんですよ。
若手ボクサーなんてイケメン、凄く多いでしょ?
女の子にモテそうじゃないですか…それもちょっとワルめの。
んで、カッコ良く相手を倒しちゃったりするでしょ?
それとは対極にいて…トミナガ、カッコ悪いんですよ!
でもね、同じブサイク側の人間としたらね、トミナガがイケメンに勝つところ、見たいですよ!
この男…本当に最高でした。
敬意と愛情を込めて、こう呼ばせていただきたい。
トミナガ”男前”シンペイ…と。
一部聞き取れなかったですが、トミナガの勝利者インタビューをざっくり。
「えーと…先週初めに…じゃないです、今月初めに結婚しまして
あの~、もうちょっとしたら赤ちゃんが産まれます。
あ~、まぁ全部友達の話なんですけどね、はい。
僕はまぁ、その辺全然からっきしなんですけど…ありがとうございました!!」
…トミナガさん、男前です。
ファンもメディアも、こういう男、ほったらかしちゃダメだと思う。
人気ボクサーになれる男だと思いますよ。
ただ強いだけがボクサーの魅力じゃないんですから。
これで戦績イーブン…勝ったり負けたりだけど、ボクサーとして異質な魅力を持っている選手。
彼のこと…ファンなら誰もが知る…みたいな感じになってほしいなぁ…。
ブサイク、ブサイクって書いて…本人読んで傷ついたらどうするんだって思って恐る恐るですが…
身内の方…ごめんなさいって思うんですが…
彼のこと、大好きになってしまったので…どうかご理解を…。
そして、最後まで粘りに粘った山口 鉄也。
彼のタフさと頑張りが、僕をこれほどまでに熱くさせる熱戦を作り出したことをお忘れなく。
さて…次回は昨年の全日本新人王。
戸谷 彰宏(蟹江)の凱旋から。
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