刈谷伝説の4回戦第二章 マンモス 和則(中日)③ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2020/01/15
年が明け、2018年の1月末。
新人王トーナメントの組み合わせが発表される。
この年、マンモス 和則(薬師寺)は一階級上げて、ライトフライ級でのエントリー。
4人がエントリーし、綺麗な山が描かれたトーナメント表。
マンモスの初戦、準決勝の相手は十河 正人(MSG平石)。
強い選手ではない…ただ、いつでも愚直に前進するしつこいファイター。
ハマればこの上なく厄介なタイプだ。
そして…対抗の山には、前年に大激戦を繰り広げた太田 アレックス(西遠)の名前も…。
同じ階級でエントリーしたマンモスとアレックスに周囲は沸き立つ。
「あの戦いをもう一度見たい」
2018/03/31、浜松で田中 蓮志(トコナメ)との試合を制して決勝進出を決めたアレックス。
田中は翌年の新人王戦で西軍代表決定戦まで勝ち上がる選手。
現在の中日本で最も血の気の多い戦いを見せる選手であり…決して軽い相手ではない。
それを3-0の判定で制して…マンモスの結果を待つ。
翌日、刈谷のリングでマンモスの試合が始まる。
スピードも、技術も、パンチ力も…明らかにマンモスが上。
確固たる優勝候補のマンモス相手に十河が獲った戦法は…。
ガードを固めてひたすら前へ。
マンモスの破格のパンチが突き刺さる。
これに、ただひたすら耐える十河。
倒そうとひたすらに拳を叩きつけるマンモス。
逃げられないことは判っているとでも言いたげな十河の戦いぶり。
ガードの脇から叩きつけられるパンチを、ひたすらに浴び続ける中…
渾身のパンチを振るうマンモスがスタミナを消耗していく…。
このまま進んで行けば…確かに十河にチャンスはある。
しかし…あまりにも危険すぎる。
ひたすらに拳を叩き続け続けるマンモス…耐え続ける十河…。
ラウンド終了直前、これでもかとテンプルに叩き付けられたマンモスのフックに、
十河がつまづいたようにダウン。
その瞬間、レフリーが二人の間に飛び込む。
十河とレフリー、二人がリングの上に転がり込むようになって試合がストップ。
圧倒的なKO勝利とは裏腹に、ゾッとした表情のマンモス。
「あの時、十河選手…笑ってたんですよね」
あれから2年が経った今でも、この試合の話になると、青ざめるマンモス。
覚悟を決めた”足りない者”の怖さを思い知らされた一戦となった。
ともあれ、決勝進出を決めたマンモス。
昨秋、大激闘を演じたカードがトーナメントという運命の巡り合わせで成立。
勝利者インタビューで声を張り上げる。
「もう一度、アレックスと戦いたい!」
4か月後の2018/08/05。
中日本新人王決勝戦。
この試合に勝った者が、各地区の新人王達との対戦へ挑んで行く。
西部日本新人王、西日本新人王、東日本新人王…。
全ての地区の新人王を倒して、ようやく全日本新人王の称号を手に入れることができる。
肩書は、その後のキャリアを大きく左右する。
ただでさえ、運命を賭けた一戦と言える試合。
マンモスとアレックスの試合には、お互いの強い強いプライドが掛かる。
そして…滅多に見れない大激戦をもう一度この目で見れる…。
そんな期待感にも包まれた一戦。
ただし、マイケル・カルバハル(米)vsウンベルト・ゴンサレス(メキシコ)然り…
激戦の後のリマッチが、先の試合と同じく激戦となるとは限らない。
期待値が高い分、消化不良の試合になることも考えられる…。
そんな一抹の不安はゴングと共に一気に吹き飛ぶ。
ピリピリとした緊張感の中、お互いに思い切り大砲から入る。
お互いに待ち望んだ戦いであることを確かめ合うような初弾の交換。
直後、お互いの右フックが交錯…大きく振りすぎたマンモスがバランスを崩してキャンバスに手を突く。
その瞬間、レフリーはダウンを宣告。
戸惑うマンモス…スリップとされてもおかしくないタイミングだが、
アレックスの拳が当たっているようにも見える。
ダウンを獲られても仕方がない状況。
思わぬ形のオープニングとなった試合。
仕切り直しての攻防…お互いに少し離れたところからタイミングを測っていたかと思いきや、
マンモスが距離を詰めたところで、お互いに大砲を振り合い、マンモスの左が炸裂する。
今度は尻餅をつくようにアレックスがダウン。
まだ試合は1R中盤、再開後はマンモスが一気に攻め立て、
アレックスの顔面に大きな右フック、左ストレートが容赦なく突き刺さる。
お互いにダウンを奪い合った1Rだが、まずはマンモスが制する。
2Rに入ると、試合はいったん落ち着く。
安全圏からの踏み込み勝負…ピリピリとした緊張感に包まれる。
ラウンド終了直前に、アレックスが強烈に左フックを突き刺す。
3Rも高い緊張感が張り詰める中…またも試合が大きく動く。
踏み込んだアレックスにマンモスの左アッパーが炸裂。
ガクっと膝を折ったアレックス、なんとか耐えるが追撃の右フックでダウン。
立ち上がったアレックスに対し、一気に攻め込んだマンモス。
ビッグチャンスに振りが大きくなる中、アレックスのカウンターを浴びる場面が目立ち始め
強烈なアッパーに足元をふら付かせる。
クリンチに逃げるも、アレックスの強烈なボディがマンモスを突き刺す。
大きく振りすぎた消耗もあるか…マンモスがスタミナ切れをはっきりと見せる。
足の死んだマンモスは頭を着けての接近戦に身を投じるが…。
マンモスの強打はミドルレンジで生きるもの…接近戦なら、分があるのはアレックス。
右アッパーを炸裂させて一気に攻め立てると、マンモスが潰れるようにダウン。
この試合、両者合計4度目のダウン。
マンモスが立ち上がったところでこのラウンドが終了。
4R、両者ダメージと疲弊で勢いは落ちるが…手が出るのはアレックスの方。
強烈にボディも顔面も叩いていく…しかし、マンモスの一撃はまだ生きている。
強烈に右フックを突き刺しアレックスを後退させる。
大量の鼻血を吹き出すアレックス…明らかに折れている。
頭をくっつける展開が増え、マンモスの金髪が返り血で真っ赤に染まっていく。
こうなるとアレックスは鼻で呼吸ができないはず…苦しい展開になるかと思いきや。
ラスト2分…手を止めることなく、疲弊して手が少なくなったマンモスを攻め立てていく。
破格の強打を振るうマンモスだが…その数はアレックスの1/3ほどだろうか。
アレックスがパンチをまとめる中で、試合終了のゴング。
マイジャッジ 39-39 優勢点はアレックス
一者は39-38でマンモスを支持。
残り二者 38-38、39-39。
大激戦の結果はドロー。
しかし、この試合は中日本新人王決勝戦…
この先の戦いに進むものを決めなければならない。
ドローを付けた二者のうち、片方でもマンモスを支持すれば、マンモスの勝ち抜け。
結果は…
両者ともアレックスを支持。
中日本新人王は太田アレックスが獲得することとなった。
両者ともに刈谷にその名を刻み付けたような大激戦。
この年、同じ愛知で年間最高試合となる田中 恒成(畑中)vs木村 翔(青木)の激闘が演じられた。
中日本の歴史に残る名勝負であったことは間違いないが…。
TV中継に載らないローカルな舞台で、それに匹敵する激戦が行われた。
現地に通うファンだけがそれを知る、宝物のような試合だった。
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