2024/3/31 -愛知・名古屋国際会議場- 第5試合~ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2024/3/31 -愛知・名古屋国際会議場- 第5試合~ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

 

■IBF世界ミニマム級タイトルマッチ
【ミニマム級12回戦】
重岡 銀次朗(ワタナベ) vs ジェイク・アンパロ(比)

重岡が入ろうとするところ、撃ち終わりを狙うアンパロ。
完全にカウンター狙いの構えに対し、超速の踏み込みをみせる重岡だが
アンパロはしっかり反応し、ヒットを奪わせずに拳を返す。
斬り合いのような緊張感…、最初の3分ではっきりと強さを示すピノイ。
重岡はまだ遠いか…。

しかし2Rに入り、勝負は一瞬で決する。
重岡の素早い踏み込みに上をカバーしたアンパロだったが
飛んできたのは左ボディ。

完璧に入った一撃で膝を着き、立ち上がることはできず。

アルアル・アンダレス(比)の代役としてリングに上がった挑戦者。
急ピッチの試合でも、急遽巡って来た世界挑戦のチャンスに、
しっかりと挑戦者としての能力の高さを示した。

いくら待ちに入ったところで、簡単に反応できるものではない重岡のスピード。
ダウンの一撃をもらった場面も反応はしっかりとしていた。
ただ、それを見越して拳を下に入れた重岡…。
圧倒的な強さを見せつけた。

ここからどれだけ防衛を続けていくだろうか。
153cmの身長はミニマム級で戦う上で、恵まれた骨格と言っていい。
ミニマム級の絶対王者として神に選ばれたような男。

他団体の対抗王者にも、世界ランカーにも強者は潜んでいる。
さらに世代交代の速度も超速のミニマム級。
新陳代謝激しく、強敵はいくらでも出て来るだろう。

僕は重岡が高校生の頃からリカルド・ロペス(メキシコ)を越えるなら
重岡 銀次郎しかいないと言って来た。
あの当時、戯言だと思われた僕の言葉が、少しずつ現実味を帯びてきている。

重岡 銀次朗 12戦11勝(9KO)1無効試合
アルアル・アンダレス 20戦14勝(6KO)3敗3分

 

【フェザー級10回戦】
亀田 和毅(TMK) vs ケビン・ビジャヌエバ(メキシコ)

ガードを固めてプレスをかけていく亀田。
重たそうなジャブを繰り出しながら強烈なボディを撃ち込んで行く。
下がりながら左フックを引っ掛けて、鋭利なアッパーで迎え撃つビジャヌエバ。
ほとんど手が出ない中、左フックの撃ち合いで強烈に亀田が捉えて1R終了。

2Rもずいずい前に出ながらジャブをつく亀田。
ビジャヌエバが反応できない場面も多く、ズバズバと突き刺さる。
接近戦になると、ビジャヌエバの攻撃をガッチリとガードし、上下に撃ち分けて行く。

3R、もうボディが効いて来たか、ビジャヌエバの反撃には力感がない。
雑にKOを狙いたくなる場面でも、強烈なジャブを中心に、ボディで削る亀田。
強烈な右フックで相手がグラついても、攻め急ぐことはない。

4R、接近して上下のコンビネーションを増やす亀田。
右で相手の顔面を弾き飛ばす場面も多くなる。
反撃の手数も減って来たビジャヌエバ。
パンチを纏める場面が増えて行く。

5R、反撃の手数が復活してきたビジャヌエバだが、
亀田はガードでしっかりと受け止め、上半身も柔らかくもらわない。
逆に亀田の重厚な攻撃は変わらず、ビジャヌエバを痛めつけて行く。

ここでビジャヌエバがギブアップ。
5R終了TKO

ボディを削りに削られ、反撃のパンチの威力もなくなったところ。
八方ふさがりの中、これ以上の戦いをビジャヌエバが断念。
ダメージを積み重ねるだけの戦いであれば、英断だと感じる。
選手としての未来も、人間としての未来もある。

早々にボディを削られて、反撃の芽さえ与えてもらえなかった。
ビジャヌエバからすれば、世界トップ戦線の力を思い知らされた形。
相手が強すぎれば、もう一方は弱く見えてしまうもの。
やりたいことは何一つできなかっただろうが、5Rまで耐え続けたビジャヌエバ。
世界で戦う男の強さを知ってのこれからを気にしていたい。

完璧な内容で実力を示した亀田。
危ないシーンを一切産まない強さを見せた。
トップ戦線でこの戦いを見せることができれば、三階級制覇にも届くだろうと感じる。

逆に迎え撃つ立場で見れば世界ランカーの中でトップクラスにリスキーな選手だとも感じる。
一撃で倒されるようなギャンブル的なリスキーさではない。
攻撃力を増したことにより、崩しづらさを増した亀田。
勝負の白黒をつけるにおいて、これほど怖い相手がいるだろうか。

亀田を挑戦者として迎える勇敢な世界王者が見たいと思わされた。

亀田 和毅 45戦41勝(23KO)4敗
ケビン・ビジャヌエバ 30戦22勝(15KO)5敗3分

 

■WBC世界ミニマム級タイトルマッチ
【ミニマム級12回戦】
重岡 優大(ワタナベ) vs メルビン・ジェルサレム(比)

向き合って飛び込むタイミングを探る二人。
ピンと張り詰めた緊張感が続く中、先に重岡が仕掛けてヒットを奪う。
まだまだ静かな展開の中、ジェルサレムが飛び込んでボディ。
これを皮切りにジェルサレムが一気にボディを攻め立てる。
クリンチも許さず徹底的にボディへラッシュ。
慌てたように見えた重岡だったが、なんとか立て直して1R終了。

2R、1Rと同じく静かに向き合う駆け引き合戦。
重岡の方が先に飛び込み逆にボディを中心に襲う。
ジェルサレムは撃ち終わりにボディ。
時折上に飛ぶパンチは鋭利そのもの…。

3R、重岡が飛び込んだ瞬間、ジェルサレムのカウンターが重岡を襲う。
右ストレートで重岡が尻餅をつくダウン。
ダメージはそれほどないか、改めて向き合うとまた駆け引き合戦へ。
ジェルサレムも強引に攻めることはせず。

4R、見合う中で、自ら拳を出していく重岡。
待って撃ち終わりを狙うジェルサレム。
タイミングの奪い合い…ここは重岡がより多くヒットを奪って上回る。

ここで公開採点、三者とも38-37でジェルサレム。

5R、このラウンドも見合った状態から、お互いにスリリングなパンチの交換。
序盤、重岡の強烈な右ボディが頻繁に当たるが…
繰り返すと、重岡の入り際に強烈な右を合わせるジェルサレム。
ジェルサレムが強烈な左フックを撃ち込んでラウンドが終了。
このラウンドもより多く捉えたのは重岡。

6R、僅かに間合いが遠くなったか…。
ジェルサレムがカウンターで捉える場面が一気に増えると、
ラウンド後半に、右ストレートのカウンターを突き刺して重岡がダウン。
この日2度目のダウンもダメージは感じられず。
どちらもタイミングで斬られたダウン。

7R、これまで単発での斬り合いだった展開。
ジェルサレムが入ったところを重岡がコンビネーションで捉え始める。
合間に強打を差し込まれるリスクを背負って連打に転じる。

8R、右ストレートで重岡が捉える頻度を増やすが、
後半に入るとジェルサレムが強烈に捉える頻度が増える。
出たところにコンビネーションを叩き込むが、
前後の動きで続けては食ってくれないジェルサレム。

公開採点は77-73×2、75-75

9R、残り全ラウンドとってドローの重岡。
余裕が出たか、逆に積極的になったジェルサレム。
これまでより頻繁に出てヒットを奪い、重岡の攻撃も単発に抑えて行く。

10R、重岡の強打を受けても、ジェルサレムは止まらず。
積極性を増したジェルサレムと倒すほかない重岡。
接近した場面で撃ち合う局面が増えて行く。
重岡がボディを強烈にえぐる反面、
ジェルサレムの強打に重岡の動きが止まる場面も増える。

11R、中盤から一気に圧力を増した重岡。
相撃ち上等で撃ち込み、連打で捉える場面が増え、逆にジェルサレムの手数は減る。
それでも、一撃で決まりそうなジェルサレムの強打は健在。

12R、これまで以上に距離を取るジェルサレム。
しかし、出て来た場面では激しく撃ち合う勇敢なピノイ。
翻弄されながらも逆転の一撃を最後まで狙った重岡だったが、
無情にもタイムアップのゴングが鳴った。

マイジャッジ 114-112 ジェルサレム

公式ジャッジ 
114-113 重岡
114-112×2 ジェルサレム

2-1 勝者:ジェルサレム

「階級最強は重岡優大」
そう信じていた。それが、目の前で覆された。

谷口 将隆(ワタナベ)から世界王座を奪い、その強さは示していたが初防衛戦で陥落…
ここまでの選手でさえ、敗北を経験する世界戦線。
ボクシングは相対的なもの、相手が弱ければ強く見え、強ければ弱く見える。
その力の見定めはいつも難しく不安定なものとなる。

重岡というはっきりと強さを持った世界王者と対峙したジェルサレムは
その強さをまた改めて日本のリングに叩き付けた。

世界中に猛者たちが存在し、その頂点に君臨する。
そしてその王座を守り続けることの偉大さ。
それを改めて思い知らされた。

強い強い重岡に勝利して得た名誉ある世界王座。
ジェルサレムの勝利と共に喜びを爆発させた青コーナー。
彼を応援していた全ての人に「おめでとう」と言いたくなった。

そして、この敗北がきっと重岡優大をでかくすると思っている。
まだ9戦目…ここからまだ強さを増せるはずだ。
より強く、より大きく…負けてからがボクシング。
それは4回戦だろうが世界王者だろうが同じこと。
次に挑んだ選手だけが、続きの物語を紡いで行ける。

重岡 優大 9戦8勝(5KO)1敗
メルビン・ジェルサレム 25戦22勝(13KO)3敗

 

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